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DAY6
4
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「身体、大丈夫だった?」
水元が握っていないほうの手で頭にふれてくる。
「痛いところとか」
平気だ、と答えると、相手はこちらの前髪をかき上げた。顔の前の空気が動いて水元が近づいてくる。互いの鼻のあたまがふれたところで、少し顔をずらしてキスをした。
やわらかな唇の奥にある歯はなめらかで、歯並びもきれいなほうだ。
チチア・デンティスが実在の人物でも、小さな子供の空想上の人間だったとしても、幼い頃に刷り込まれた歯磨きの習慣を水元がずっと守り続けてきたことは事実なのだろう。
義理の祖母。職場の先輩。コミュニティの隣人。水元の話には、よく年上の女性が登場する。
だが、母親だけは悲しいほどイメージが希薄だった。何度話を聞いても、どのような女性だったのかがわからない。
彼女は自分の息子に言わなかったのだろうか。“歯を磨きなさい”とは。
相手の整った歯列に舌を這わせるうちに、握り合っていた手がほどけて、水元の腕が背中に回る。舌を絡ませながら、彼は体重をかけて響野の身体を押し倒した。
* * * * *
水元が握っていないほうの手で頭にふれてくる。
「痛いところとか」
平気だ、と答えると、相手はこちらの前髪をかき上げた。顔の前の空気が動いて水元が近づいてくる。互いの鼻のあたまがふれたところで、少し顔をずらしてキスをした。
やわらかな唇の奥にある歯はなめらかで、歯並びもきれいなほうだ。
チチア・デンティスが実在の人物でも、小さな子供の空想上の人間だったとしても、幼い頃に刷り込まれた歯磨きの習慣を水元がずっと守り続けてきたことは事実なのだろう。
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相手の整った歯列に舌を這わせるうちに、握り合っていた手がほどけて、水元の腕が背中に回る。舌を絡ませながら、彼は体重をかけて響野の身体を押し倒した。
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