リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

文字の大きさ
26 / 61

26

しおりを挟む
 「うちなぁ、これやから学園であんまりしゃべらへんの」

菫姫、ヴィオレットは領地なまりで話す。ヴィオレットは王都から遠い西方の国境を守る王弟の家に生まれた令嬢であった。
 おっとりしたそのしゃべり方は彼女には似合っていた。が、このしゃべり方を王太子から変だ、変だ、とからかわれて外に出られなくなって幼稚舎から中等部までは王宮で家庭教師を付けていた事などを話した。

 「王太子あのボンクラ殿下にはたんとお話させてもろうて、昨日和解したわぁ」

と菫姫はのんびりいう。リーゼはちょっとあきれ顔だ。

「このお茶なぁ、うちの領地実家あたりでとれるんよ。ちょっと製法ちがうからお茶の色、緑で綺麗やろ」

菫姫手ずから注がれた茶は茶器から違っていて不思議な雰囲気であった。

「このお茶は普段飲んでる紅茶よりぬるい温度で煎れるのん」

 リリゼットは少々風変わりな菫姫にめんくらっていたが、この風変わりな姫の言葉にもなれてゆっくりとしたテンポでお茶会は進んでいる。今日はジュリエットはこの席に同席していなかった。ジュリエットの婚約者、26歳の隣国の王妃弟の公爵殿下が急遽お忍びでこちらにいらして秘密のデート、らしい。その流れで菫姫の相手は、幼馴染で隣国の領地と菫姫の実家の領地が隣同士で仲良くしていて知り合ったこと、巷で言われている外交問題はほとんど関係ないというより、それを利用して婚約を推し進めた事なとを教えてくれる。

 「こういう話はリーゼには子供の時にしたっきりやったっけ」

「ほんのりうかがった気がしますけど。それこそ子供の時だからお互い詳細は、ね」

「そやね。リーゼはボンクラ殿下とはどないしはるの?」

菫姫の言葉にリーゼは眉を顰めた。

「うーん、どちらにしてもこの騒動終わってからですわ」

リーゼは深くため息をついた。

「ちょっと今は殿下も他の事考える余裕もないでしょう。学園祭の準備は私とクレマン様でなんとかするにしても。あの事は彼が対峙すべき事でしょう。………彼女とおつきあいしていた事は事実なのだし」

菫姫も溜息をつく。

「ボンクラぼっちゃん、反省してはるんかなぁ」

 菫姫は口を開かなければお人形のように見えるのに、しゃべりだすと風変わりな少女に見える。おしとやかにしてるのは苦手なので早く結婚して田舎に引っ込んで婚約者と美味しいお茶を作って暮らしたいのだ、というそんな少女だった。

「お土産のお茶は最高級の手もみのお煎茶なん。煎れ方もお手紙書いてあるから、それの通り入れたらええよ」

 菫姫は三人に自分の名刺を渡す。薄い紫に左上に菫の花が一輪、名前は流麗な書体で菫姫の名前が描いてある。色はきらきらと銀のラメが混じった濃い菫の色だった。

「綺麗」

リリゼットが思わずつぶやく。

「ありがとう。ほめてもらって嬉しい。そうや、三人とも名刺もってはるんやったら欲しいわぁ」

リリゼットもリーゼもイネスも小さなかわいらしい鞄から名刺を出して渡す。名刺とハンカチ、扇子と口紅とおしろいくらいしか入らない小さな鞄はそれぞれ流行の型であったが、リリゼットの鞄の留め具をみて他の三人が少し驚いている。マダムフルールの店の留め具だったからだ。

「リリはマダムの顧客なの?」

リリゼットは思い切り首を横に振る。こういう時にいつも使う言い訳を言った。

「父があそこに革をおろすので、そのついでで作っていただいたので。………父が作ると武骨さが出ちゃうから」

「そこが男性に受けるんでしょうねぇ」

リーゼは言った。王太子の皮鎧も加護の期待もあるけどデザイン的にリーゼの父の鎧が好き、という方が比重が高いらしい。普通なら金属の鎧を作る事が多いのだが加護付きの皮鎧、それも魔獣の皮で、となると下手な金属鎧プレートアーマーよりも防御力は高い。なので王太子は成人の儀でもそれを着用することを希望している、と。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

冤罪で家が滅んだ公爵令嬢リースは婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!

山田 バルス
恋愛
婚約破棄された上に、学院の下働きにされた後、追放されて野垂れ死からの前世の記憶を取り戻して復讐する!

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

処理中です...