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「うちなぁ、これやから学園であんまりしゃべらへんの」
菫姫、ヴィオレットは領地なまりで話す。ヴィオレットは王都から遠い西方の国境を守る王弟の家に生まれた令嬢であった。
おっとりしたそのしゃべり方は彼女には似合っていた。が、このしゃべり方を王太子から変だ、変だ、とからかわれて外に出られなくなって幼稚舎から中等部までは王宮で家庭教師を付けていた事などを話した。
「王太子殿下にはたんとお話させてもろうて、昨日和解したわぁ」
と菫姫はのんびりいう。リーゼはちょっとあきれ顔だ。
「このお茶なぁ、うちの領地あたりでとれるんよ。ちょっと製法ちがうからお茶の色、緑で綺麗やろ」
菫姫手ずから注がれた茶は茶器から違っていて不思議な雰囲気であった。
「このお茶は普段飲んでる紅茶よりぬるい温度で煎れるのん」
リリゼットは少々風変わりな菫姫にめんくらっていたが、この風変わりな姫の言葉にもなれてゆっくりとしたテンポでお茶会は進んでいる。今日はジュリエットはこの席に同席していなかった。ジュリエットの婚約者、26歳の隣国の王妃弟の公爵殿下が急遽お忍びでこちらにいらして秘密のデート、らしい。その流れで菫姫の相手は、幼馴染で隣国の領地と菫姫の実家の領地が隣同士で仲良くしていて知り合ったこと、巷で言われている外交問題はほとんど関係ないというより、それを利用して婚約を推し進めた事なとを教えてくれる。
「こういう話はリーゼには子供の時にしたっきりやったっけ」
「ほんのりうかがった気がしますけど。それこそ子供の時だからお互い詳細は、ね」
「そやね。リーゼはボンクラ殿下とはどないしはるの?」
菫姫の言葉にリーゼは眉を顰めた。
「うーん、どちらにしてもこの騒動終わってからですわ」
リーゼは深くため息をついた。
「ちょっと今は殿下も他の事考える余裕もないでしょう。学園祭の準備は私とクレマン様でなんとかするにしても。あの事は彼が対峙すべき事でしょう。………彼女とおつきあいしていた事は事実なのだし」
菫姫も溜息をつく。
「ボンクラぼっちゃん、反省してはるんかなぁ」
菫姫は口を開かなければお人形のように見えるのに、しゃべりだすと風変わりな少女に見える。おしとやかにしてるのは苦手なので早く結婚して田舎に引っ込んで婚約者と美味しいお茶を作って暮らしたいのだ、というそんな少女だった。
「お土産のお茶は最高級の手もみのお煎茶なん。煎れ方もお手紙書いてあるから、それの通り入れたらええよ」
菫姫は三人に自分の名刺を渡す。薄い紫に左上に菫の花が一輪、名前は流麗な書体で菫姫の名前が描いてある。色はきらきらと銀のラメが混じった濃い菫の色だった。
「綺麗」
リリゼットが思わずつぶやく。
「ありがとう。ほめてもらって嬉しい。そうや、三人とも名刺もってはるんやったら欲しいわぁ」
リリゼットもリーゼもイネスも小さなかわいらしい鞄から名刺を出して渡す。名刺とハンカチ、扇子と口紅とおしろいくらいしか入らない小さな鞄はそれぞれ流行の型であったが、リリゼットの鞄の留め具をみて他の三人が少し驚いている。マダムフルールの店の留め具だったからだ。
「リリはマダムの顧客なの?」
リリゼットは思い切り首を横に振る。こういう時にいつも使う言い訳を言った。
「父があそこに革をおろすので、そのついでで作っていただいたので。………父が作ると武骨さが出ちゃうから」
「そこが男性に受けるんでしょうねぇ」
リーゼは言った。王太子の皮鎧も加護の期待もあるけどデザイン的にリーゼの父の鎧が好き、という方が比重が高いらしい。普通なら金属の鎧を作る事が多いのだが加護付きの皮鎧、それも魔獣の皮で、となると下手な金属鎧よりも防御力は高い。なので王太子は成人の儀でもそれを着用することを希望している、と。
菫姫、ヴィオレットは領地なまりで話す。ヴィオレットは王都から遠い西方の国境を守る王弟の家に生まれた令嬢であった。
おっとりしたそのしゃべり方は彼女には似合っていた。が、このしゃべり方を王太子から変だ、変だ、とからかわれて外に出られなくなって幼稚舎から中等部までは王宮で家庭教師を付けていた事などを話した。
「王太子殿下にはたんとお話させてもろうて、昨日和解したわぁ」
と菫姫はのんびりいう。リーゼはちょっとあきれ顔だ。
「このお茶なぁ、うちの領地あたりでとれるんよ。ちょっと製法ちがうからお茶の色、緑で綺麗やろ」
菫姫手ずから注がれた茶は茶器から違っていて不思議な雰囲気であった。
「このお茶は普段飲んでる紅茶よりぬるい温度で煎れるのん」
リリゼットは少々風変わりな菫姫にめんくらっていたが、この風変わりな姫の言葉にもなれてゆっくりとしたテンポでお茶会は進んでいる。今日はジュリエットはこの席に同席していなかった。ジュリエットの婚約者、26歳の隣国の王妃弟の公爵殿下が急遽お忍びでこちらにいらして秘密のデート、らしい。その流れで菫姫の相手は、幼馴染で隣国の領地と菫姫の実家の領地が隣同士で仲良くしていて知り合ったこと、巷で言われている外交問題はほとんど関係ないというより、それを利用して婚約を推し進めた事なとを教えてくれる。
「こういう話はリーゼには子供の時にしたっきりやったっけ」
「ほんのりうかがった気がしますけど。それこそ子供の時だからお互い詳細は、ね」
「そやね。リーゼはボンクラ殿下とはどないしはるの?」
菫姫の言葉にリーゼは眉を顰めた。
「うーん、どちらにしてもこの騒動終わってからですわ」
リーゼは深くため息をついた。
「ちょっと今は殿下も他の事考える余裕もないでしょう。学園祭の準備は私とクレマン様でなんとかするにしても。あの事は彼が対峙すべき事でしょう。………彼女とおつきあいしていた事は事実なのだし」
菫姫も溜息をつく。
「ボンクラぼっちゃん、反省してはるんかなぁ」
菫姫は口を開かなければお人形のように見えるのに、しゃべりだすと風変わりな少女に見える。おしとやかにしてるのは苦手なので早く結婚して田舎に引っ込んで婚約者と美味しいお茶を作って暮らしたいのだ、というそんな少女だった。
「お土産のお茶は最高級の手もみのお煎茶なん。煎れ方もお手紙書いてあるから、それの通り入れたらええよ」
菫姫は三人に自分の名刺を渡す。薄い紫に左上に菫の花が一輪、名前は流麗な書体で菫姫の名前が描いてある。色はきらきらと銀のラメが混じった濃い菫の色だった。
「綺麗」
リリゼットが思わずつぶやく。
「ありがとう。ほめてもらって嬉しい。そうや、三人とも名刺もってはるんやったら欲しいわぁ」
リリゼットもリーゼもイネスも小さなかわいらしい鞄から名刺を出して渡す。名刺とハンカチ、扇子と口紅とおしろいくらいしか入らない小さな鞄はそれぞれ流行の型であったが、リリゼットの鞄の留め具をみて他の三人が少し驚いている。マダムフルールの店の留め具だったからだ。
「リリはマダムの顧客なの?」
リリゼットは思い切り首を横に振る。こういう時にいつも使う言い訳を言った。
「父があそこに革をおろすので、そのついでで作っていただいたので。………父が作ると武骨さが出ちゃうから」
「そこが男性に受けるんでしょうねぇ」
リーゼは言った。王太子の皮鎧も加護の期待もあるけどデザイン的にリーゼの父の鎧が好き、という方が比重が高いらしい。普通なら金属の鎧を作る事が多いのだが加護付きの皮鎧、それも魔獣の皮で、となると下手な金属鎧よりも防御力は高い。なので王太子は成人の儀でもそれを着用することを希望している、と。
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