リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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 昨日の騒ぎが嘘のように、ジュリエットのいない食卓で静かに朝は始まっていた。

「まま、実家だってー。帰っちゃったって」

朝から姪は無邪気だった。なにか話があったのだろうとリリゼットは判断したが、口には出さなかった。兄が説明したければ子供がいないところで聞こうとリリゼットは思ったが兄は新聞を読みつつ珈琲を飲んでいるだけだった。もうすぐ11歳になる甥のルイは黙々と朝ごはんを食べている。ルイは学園のチャラチャラした雰囲気を嫌い、ほぼ同等の学力レベルだが、もっと厳しい騎士団付属学校の初等部に通っている。

 騎士団付属学校は比較的新しい学校だが学園を嫌った侯爵の鶴の一声で設立された新設校だった。十年前の幼稚舎から設立され、今は最高学年が中等部、という状態だった。学園よりも質実剛健、騎士団付属ということで剣術や実践魔術などを重点的に教えている。他に貴族の行く学校としては教会に勤める修道士や修道女を目指す学部がある教会付属学校やいくつかの私学がある。王立学園が学力も一番高くはあるが近年はかなり騎士団付属学校に追い上げられてもいる。


 学園は一部の貴族子女のやらかしが目につくので堅い親には嫌われているのも現実だ。今回のコゼット嬢のような騒動も何度か起きているらしい。望んで高位貴族の令息の子供を年若いうちに妊娠し、『奥様』の座を狙う下位貴族の娘、逆に妊娠させて令嬢を手にれようとする貴族令息など枚挙にいとまがないし親の頭痛の種でもあった。
 上位貴族令嬢はそのあたりの教育がしっかりしているのと『損得』を知識として幼いうちから叩き込まれることが殆どで、令嬢は婚約者の為に貞操を守るべきと教育される。そうやって『婚約者』と貞操を確かめあったのち…、という事例に発展する。
 リーゼと王太子がそうならなかったのはリーゼが身持ちが堅い事と王太子としても下手にリーゼに手を付けて、結婚前に妊娠などという事になれば己の『王太子』という地位はアッという間にはく奪されるのはわかっていた。殿下は意外と計算できる男なのであった。本人的にコゼット嬢との事に対する反省もあるようだ。

 コゼット嬢と最後の別れは意外とあっさりしたものだった。

『あの人と子供育てて平民として生きていくわ。もう王都から出るの。西の方に農園をいただいたの、感謝します。………殿下を好きだったのは本当よ?あの人を切れなかったのが私の敗因ね』

コゼット嬢はそういって、あっさりと学園の寮を出て行った。農園はリーゼからの進言で王家として、王太子の世話に対する報酬として渡されたものだった。廃嫡寸前ではあったがダンテス公爵家という後ろ盾で首の皮一枚でつながったのも王太子は理解していた。



 リリゼットが馬車に乗ろうとした時、後ろからルイが近づいてきた。
「リリゼットちゃん、今日は一緒に行く」
ルイの学校も学園もほど近いのでそれは可能だった。
「いいですよ。一緒の馬車で行きましょう」
ルイはリリゼットの横に座ってリリゼットと手をつなぐ。リリゼットはなんとなくくすぐっく感じだ。
「リリゼットちゃん、元気出して」
先に騎士付属学校に着き、ルイはリリゼットにそういって降りて行った。子供なりに気にしているんだ、と配慮してあげられなかった自分にリリゼットは自己嫌悪を感じた。

ルイ10歳の子ができることが私にはできない』

と。自分の情緒の幼さをリリゼットは痛感した。



 「どうされました?」

相変わらずイネスは目ざとい。教室にはいるなりそういわれた。

「いえ、朝から己の未熟さを痛感しまして」

イネスはしたり顔で返す。

「仕方ありません。我々はまだ成長中です。完成するまでまだまだです」

リーゼが突っ込んでくる。

「イネスは十分なにか悟ってそう」

リーゼの言葉に三人はわっと笑う。花が咲いたような華やかさがあるのは17歳の乙女三人の威力だろうか、と菫姫は離れた席でそれを見て考えていた。
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