リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの

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閑話  ジュリエット 1

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 ニコルは領地へ着くとジュスティーヌに子供たちを預け、領地の面倒を見ているレース編みの叔父の所へ行った。この叔父についている執事が実質的に領地の管理をしてくれている。

「来たか」

「来ました」

この叔父を中心としたドルバック8家の連名でジュリエットに対する正式な抗議が入っていたのだ。次代の長の妻が領地の人員の事を全く把握しておらず、ドルバックの長の妻であることの意味を理解していないのか、と。ジュリエットの態度のせいでユーグからニコルへ正式な家督の譲渡が行われていないのだ。『あの妻には任せられない』と。そしてドルバック8家の妻たちの連絡会にも一度も出たことがないことやドルバック婦人会の代表であるのに仕事をしていない事なども抗議の対象だった。

 「すまんな、ドルバックの『顔』を呼びつけて」

「いえ、今回の事は私の不徳の致すところです」

ジュリエットあのこの実家はだめだ。使用人が、というよりジュリエットの乳母がジュリエットにも周りにも苦労がないように動く。あれじゃジュリエットはあのままだ」

叔父、ロドリクがじっとニコルを見る。

「これは叔父とし言うが、今のままのジュリエットの姿勢を子供に見せるのは辞めた方がいい。我々は『使用人』の手を借りて暮らしている事を、彼女が頭にない領地の皆の力で我々が成り立っている事を自覚してもらわないと」

ロドリクはゆっくり息を吐いた。

「8家代表としては、ミレーの家ジュリエットの実家もお前もいる所で『離婚』を要求するがな。俺以外の7人と婦人会を納得させれば離婚はとどまるだろうけど」

ニコルはさっくりと答えた。

「考えてましたが、離婚はしません。あの子は12で俺のところに来てくれた。社交界でも幼いというところで容赦されてきて育ち切れなかった」

「ならばどうする?」

叔父の問いかけにニコルは

「まずは貴族の基礎知識をこれから2年、マナーと貴族史の教師をつける。娘達はそれを学園で叩き込まれるけどジュリエットはそういうところが通り一遍で嫁いできてるからまずはそこからやり直してもらう」

叔父は難しい顔で頷いた。

「だとよ、8家としてはどう扱う?」

8家の面々が出てきた。ニコルの本音を聞き出す為にニコルの到着時に叔父から問いかけた、ということだ。

「婦人会の承認しだいかな」

「そうだな」

口々に話し出す。

「あとは領地の事を勉強してもらわないといけない。それは」

「うちのセドリック執事長に任せる」

ニコルが言う。ロドリクも

「それなら良い。婦人会は明日だ。子供たちは?」

と言う。ロドリクはやっと子供が傍にいない事に気が付いた。一つの事を考えたら他の事が見えないというドルバックの悪癖の見本のようなことをしでかしたな、とニコルは思った。

「子供はジュスティーヌの所にいます。今日は皆でジュスティーヌのところに泊まって、婦人会との話が終わったらミレーの義父上と一緒にジュリエットに会いに行こうかと」

叔父が言う。

「なら婦人会の間はうちで預かろう」



 ジュスティーヌの家はこじんまりしてるものの清潔でジュスティーヌは大量の薄いローンのハンカチの縁かがりをしている。横でニコルの娘たちは小さな手でジュスティーヌの真似をしてハンカチをかがっている。

「そう、上手ね。そこは丁寧にね。そうすると綺麗なハンカチになるわ」

ジュスティーヌは加護はつけない、「ドルバック領製」のハンカチをつくっているのだった。これは上質なローンにプリントが施されたものでシンプルな生地で大判なので男性向けなのだろう。こういうものはマダムフルールの店で売る事が多い。

 ジュスティーヌの様子を見ていると『母性』とはこういうものだな、と思う。甘やかすだけではなく、ただすところはただし、ほめる所はほめる。そう思いながら娘達を見ているとアランが声をかける。

「きりのいいところでお茶にしましょう。焼きたてのマフィンもありますよ」
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