俺様αアイドルと歌で発情しちゃったΩ

弓葉

文字の大きさ
14 / 17

勘違いの好意でも

しおりを挟む
 血は苦手だ。僕の両親は幼い頃、交通事故で亡くなった。事故当時、両親の血でできた水溜まりに僕はいた。僕を守るようにして両親が覆い被さったらしく、僕はほぼ無傷だった。痛いという感情はなくて、ただ目に映るものが全て赤かったことだけは覚えている。目に赤い血が入って、ゴシゴシと手で拭いても赤かった。小さい頃の記憶はほぼうろ覚えなのに、僕を苦しめるかのように交通事故の思い出は鮮明だった。

「うっ……」

 僕は頭を抱えながら起きた。ズキズキと輪っかに締め付けられているような感覚。ぼんやりとした視界の中、黒い人影が見えた。

「おい、大丈夫か」

 黒い人影が近づくと、少しずつピントが合ってくる。僕の視界いっぱいに美しいネオ様が映った。

「あ、ひぃ……!」

 僕は情けない声を出してまた寝転がる。ボフン、と背中が跳ねたからベッドだろう。

「おいおい、人の顔を見て悲鳴上げるとか……さすがに傷つく、いや違うな。バイト先にまで押しかけて、ケガさせて、ごめん」

 ネオ様は堂々としていたが、だんだん声が小さくなっていく。膨らんだ風船がしぼんだかのようだった。

「ケガ……」

 ケガと聞いて、僕は太ももを見る。

「イッ……!」

 足を少し動かしただけで激痛が走った。ズキズキと鋭い痛みが広がっていく。

「3針縫ったからあまり動かさない方がいい」

 ネオ様は僕を落ち着かせるために抱きしめてきた。ただ、そんなことをされたらネオ様ファンの僕は全身が沸騰するぐらいに血の巡りがよくなってしまう。痛みが熱へと変わり、緊張からか変な汗が噴き出してきた。じんわりとネオ様の身体を僕の汗で濡らしている気がして、僕は離れようとする。

「苦しかったか……?」

 心配そうにネオ様は僕を見た。僕の行動で一喜一憂するネオ様を見て、嬉しくて笑ってしまう。勘違いでも好意を向けられていれば悪い気はしない。

「いいえ、ただ僕の汗でネオ様を汚してしまいそうな気がして」

 僕は俯きながらくねくねと手遊びをする。既読無視していた僕はまだネオ様の顔を見ることができなかった。
 
       
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕

めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、 その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。 「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。 最初から、選ばされてなどいなかったことを。 αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、 彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。 「愛してるよ」 「君は、僕たちのもの」 ※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)

βな俺は王太子に愛されてΩとなる

ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。 けれど彼は、Ωではなくβだった。 それを知るのは、ユリウスただ一人。 真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。 だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。 偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは―― 愛か、執着か。 ※性描写あり ※独自オメガバース設定あり ※ビッチングあり

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

αの共喰いを高みの見物してきた男子校の姫だった俺(α)がイケメン番(Ω)を得るまで。

Q矢(Q.➽)
BL
αしか入学を許可されないその学園の中は、常に弱肉強食マウントの取り合いだった。 そんな 微王道学園出身者達の、卒業してからの話。 笠井 忠相 (かさい ただすけ) 25 Ω × 弓月 斗和 (ゆづき とわ) 20 α 派生CPも出ます。 ※ 1月8日完結しました。 後日談はその内書くと思います。 ご閲覧ありがとうございました!

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

俺が番う話

あちゃーた
BL
喧嘩に明け暮れていた俺の前にある日現れた謎のα。 そいつはとんでもない男で……。

処理中です...