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4.運動
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病室のベッドで過ごしていた私は、テッドに抱き抱えられて、治療院の中庭のベンチに座る。
これが、最近の日課となっていた。
最初は病室から出たいと思わなかったけれど、数十日でその気持ちにも限界が来た。
いくらまだ右足が動かすと痛くても、病室の中でテッドと二人きりで閉じこもるのに退屈してしまったのだ。
そこで、カミーユ先生に許可をもらい、テッドに抱き上げてもらって、中庭に出ている。
テッドもただ私のそばに控えるだけでは辛そうだから、彼の仕事を作ると言う意味もある。
最初の頃、テッドは私を抱き上げるたびに、恥ずかしそうに顔を赤らめて、目を逸らしたが、今ではすっかり堂々としている。
テッドは私が読書をしている間に毎日運動しているから、以前よりもずいぶんと逞しい身体つきになっている。
特に上半身の筋肉は見違えるほどである。
私を抱き上げてくれるその力強さに、本当に感謝している。
「いいお天気ね。」
「はい、シャノン様。」
走り回ったり、運動をしたり何かしらしているテッドを眺めながら、しばらくここでぼうっと過ごす。
やはり外の空気は気持ちがいい。
優しい日差しと柔らかい風がそよそよと吹き、鳥の鳴き声や遠くで走る馬車の音なども微かに聞こえる。
王都のはずれにあるこの治療院は、診察棟の方は忙しいらしいが、私がいる治療棟の方はとても静かで落ち着いている。
しばらくするとカミーユ先生がやって来た。
「シャノン、こちらでしたか?
今日から少しずつ歩く練習を始めますよ。
まずは、ずっと使っていなかった左足に体重を乗せる練習から始めます。
僕とテッドが少し屈みますから、間に入って肩を掴んで、左足をゆっくりと地面につけて、片足で立ってみてください。
反対の右足の方は絶対に使ってはいけません。
治りかかっているのが、台無しになりますし、何よりとても痛いはずです。
つきそうになったら、僕でもテッドでもいいですから、つかまって右足がつくのを回避してください。」
「わかりました。」
カミーユ先生が説明し、テッドと共に私の横に屈む。
私は恐る恐る二人の肩に腕を回すと、二人が顔を見合わせてから、ゆっくり立ち上がる。
私は腕を二人の肩に乗せているから、足がつかずに浮かんだ状態だ。
「さあ、僕達が屈むので、左足だけゆっくりと立ってください。
体重は僕達にかけたままで大丈夫です。」
そうカミーユ先生が告げると、彼らはゆっくりと屈み、私が左足だけで立てるようにした。
「立ってるわ。
片足で。」
「その調子です。
足が疲れると思うので、十数えたら、シャノンを浮かせて休ませます。
これを今日は五回繰り返しましょう。」
カミーユ先生達は声をかけながら、十数えて、私を立たせて、また、浮かすを繰り返す。
そして、そおっとベンチに再び私を座らせた。
「これだけですか?
とても楽しかったわ。
もっといっぱいできるのに。」
「最初は無理せずに少しずつですよ。
これだけでも、明日は筋肉痛になるはずです。」
「そうなんですね。
これを繰り返していけば、歩けるようになるのね。
嬉しいわ。」
「そうです。
ただし、右足には決して体重をかけないように。
僕達がいる時に運動しますから、それだけは絶対に守ってください。
もし、僕が忙しくて来れなかったら、運動をお休みしてください。」
「わかったわ。
約束します。」
私はカミーユ先生を見つめて、返事をした。
いつもシャノンを抱き上げて移動させるのは、テッドの役目だから、今日のように彼女に肩を貸して密着するのは、カミーユにとって初めてだった。
肩を貸した時に、触れられる感触とシャノンから漂う甘い香りに、カミーユは再び心臓がドキドキするのを感じた。
運動のためとはいえ、まるでダンスのように触れ合って、シャノンを持ち上げたり、下ろしたりすることは、とても楽しい。
これを毎日していいなんて、医師だから許される今だけの特権のようだ。
テッドは毎日シャノンを抱えて運んでいるいるから、従者でありながら何故か、私もされたいと、ファンになる助手達もいる。
「そう言えば、テッド、この前、私にも抱っこしてとせがまれていたね。」
僕がそう言うと、テッドは見る間に顔を赤らめた。
「ええ、まあ…。」
「あれ?
言ったらダメだった?」
「いいえ、そんなことはないんですが…。」
「えっ、テッド、そんなことを言われているの?
若い女の子に?」
「はい、まあ…。」
「えー、いいじゃないの。
抱っこしてあげたの?」
「はい、言われたので。」
「えー、それでどうなったの?」
「特に何もありませんよ
時々会ったら話す程度です。」
「えー、その中で気にいった女の子いた?」
「それは…。
もういいじゃないですか。」
テッドは恥ずかしそうに顔を背ける。
「えー、教えてくれてもいいじゃない?
私最近、お茶会にも行ってないし、恋の話に飢えているの。」
「僕、だからシャノン様に知られたくなかったんです。」
「ふふ、言いたくないなら、ごめんね。
何か、楽しくて。
私も治療院の中を自由に動けたら、助手さん達のお話を聞けるのに。」
「シャノン様、自由に歩けたら、治療院にいる意味がなくなりますよ。」
「それも、そうね。
カミーユ先生、ありがとう。
とっても楽しいお話を聞けたわ。」
「テッド、そんなに睨まないでくれ。」
「じゃあ、僕からもお返しです。
カミーユ先生も、患者さんに告白されていました。」
「えー、カミーユ先生、モテるんですね。」
「いや、それはシャノンの前で言わないで欲しかった。」
「カミーユ先生まで、私には内緒なの?」
「いや、まあ、あんまり。」
カミーユとテッドはお互いに頷きあった。
だって僕達は叶わないとわかっているけれど、シャノンに憧れている二人だからこそ、知られたくないよね。
ごめん、テッド、今度からは気をつけるよ。
これが、最近の日課となっていた。
最初は病室から出たいと思わなかったけれど、数十日でその気持ちにも限界が来た。
いくらまだ右足が動かすと痛くても、病室の中でテッドと二人きりで閉じこもるのに退屈してしまったのだ。
そこで、カミーユ先生に許可をもらい、テッドに抱き上げてもらって、中庭に出ている。
テッドもただ私のそばに控えるだけでは辛そうだから、彼の仕事を作ると言う意味もある。
最初の頃、テッドは私を抱き上げるたびに、恥ずかしそうに顔を赤らめて、目を逸らしたが、今ではすっかり堂々としている。
テッドは私が読書をしている間に毎日運動しているから、以前よりもずいぶんと逞しい身体つきになっている。
特に上半身の筋肉は見違えるほどである。
私を抱き上げてくれるその力強さに、本当に感謝している。
「いいお天気ね。」
「はい、シャノン様。」
走り回ったり、運動をしたり何かしらしているテッドを眺めながら、しばらくここでぼうっと過ごす。
やはり外の空気は気持ちがいい。
優しい日差しと柔らかい風がそよそよと吹き、鳥の鳴き声や遠くで走る馬車の音なども微かに聞こえる。
王都のはずれにあるこの治療院は、診察棟の方は忙しいらしいが、私がいる治療棟の方はとても静かで落ち着いている。
しばらくするとカミーユ先生がやって来た。
「シャノン、こちらでしたか?
今日から少しずつ歩く練習を始めますよ。
まずは、ずっと使っていなかった左足に体重を乗せる練習から始めます。
僕とテッドが少し屈みますから、間に入って肩を掴んで、左足をゆっくりと地面につけて、片足で立ってみてください。
反対の右足の方は絶対に使ってはいけません。
治りかかっているのが、台無しになりますし、何よりとても痛いはずです。
つきそうになったら、僕でもテッドでもいいですから、つかまって右足がつくのを回避してください。」
「わかりました。」
カミーユ先生が説明し、テッドと共に私の横に屈む。
私は恐る恐る二人の肩に腕を回すと、二人が顔を見合わせてから、ゆっくり立ち上がる。
私は腕を二人の肩に乗せているから、足がつかずに浮かんだ状態だ。
「さあ、僕達が屈むので、左足だけゆっくりと立ってください。
体重は僕達にかけたままで大丈夫です。」
そうカミーユ先生が告げると、彼らはゆっくりと屈み、私が左足だけで立てるようにした。
「立ってるわ。
片足で。」
「その調子です。
足が疲れると思うので、十数えたら、シャノンを浮かせて休ませます。
これを今日は五回繰り返しましょう。」
カミーユ先生達は声をかけながら、十数えて、私を立たせて、また、浮かすを繰り返す。
そして、そおっとベンチに再び私を座らせた。
「これだけですか?
とても楽しかったわ。
もっといっぱいできるのに。」
「最初は無理せずに少しずつですよ。
これだけでも、明日は筋肉痛になるはずです。」
「そうなんですね。
これを繰り返していけば、歩けるようになるのね。
嬉しいわ。」
「そうです。
ただし、右足には決して体重をかけないように。
僕達がいる時に運動しますから、それだけは絶対に守ってください。
もし、僕が忙しくて来れなかったら、運動をお休みしてください。」
「わかったわ。
約束します。」
私はカミーユ先生を見つめて、返事をした。
いつもシャノンを抱き上げて移動させるのは、テッドの役目だから、今日のように彼女に肩を貸して密着するのは、カミーユにとって初めてだった。
肩を貸した時に、触れられる感触とシャノンから漂う甘い香りに、カミーユは再び心臓がドキドキするのを感じた。
運動のためとはいえ、まるでダンスのように触れ合って、シャノンを持ち上げたり、下ろしたりすることは、とても楽しい。
これを毎日していいなんて、医師だから許される今だけの特権のようだ。
テッドは毎日シャノンを抱えて運んでいるいるから、従者でありながら何故か、私もされたいと、ファンになる助手達もいる。
「そう言えば、テッド、この前、私にも抱っこしてとせがまれていたね。」
僕がそう言うと、テッドは見る間に顔を赤らめた。
「ええ、まあ…。」
「あれ?
言ったらダメだった?」
「いいえ、そんなことはないんですが…。」
「えっ、テッド、そんなことを言われているの?
若い女の子に?」
「はい、まあ…。」
「えー、いいじゃないの。
抱っこしてあげたの?」
「はい、言われたので。」
「えー、それでどうなったの?」
「特に何もありませんよ
時々会ったら話す程度です。」
「えー、その中で気にいった女の子いた?」
「それは…。
もういいじゃないですか。」
テッドは恥ずかしそうに顔を背ける。
「えー、教えてくれてもいいじゃない?
私最近、お茶会にも行ってないし、恋の話に飢えているの。」
「僕、だからシャノン様に知られたくなかったんです。」
「ふふ、言いたくないなら、ごめんね。
何か、楽しくて。
私も治療院の中を自由に動けたら、助手さん達のお話を聞けるのに。」
「シャノン様、自由に歩けたら、治療院にいる意味がなくなりますよ。」
「それも、そうね。
カミーユ先生、ありがとう。
とっても楽しいお話を聞けたわ。」
「テッド、そんなに睨まないでくれ。」
「じゃあ、僕からもお返しです。
カミーユ先生も、患者さんに告白されていました。」
「えー、カミーユ先生、モテるんですね。」
「いや、それはシャノンの前で言わないで欲しかった。」
「カミーユ先生まで、私には内緒なの?」
「いや、まあ、あんまり。」
カミーユとテッドはお互いに頷きあった。
だって僕達は叶わないとわかっているけれど、シャノンに憧れている二人だからこそ、知られたくないよね。
ごめん、テッド、今度からは気をつけるよ。
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