【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜

マロン株式

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魔法使いはサブヒロインの死を予言する

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 ーーパタン


 勇者達の居る部屋を後にして、自室に戻ったユウフェは掌を開いて、握り込んでいた指輪をじっと見つめた。

 引き出しから小箱を取りだして、そっと指輪を仕舞い込んでから、再び部屋から出る。

 すると、向かいから紫色に金縁のローブを身に纏い揺らしながら、対面するように立つ人影に、ユウフェは足を止めた。

「貴方は… 魔法使いロイド様」

(つい先程皆さんといらっしゃったのに…)

「えっと…」  

 先程紹介した名前を忘れてしまったのか、目を泳がせている。

「私はユウフェ・ヴィクレシアと申します」

「ぁあそうだ、そんな名前だった。
勇者の……」
「現在は、婚約者をさせて頂いております、以後お見知り置きください」

 スカートを摘んで、ペコリと頭を下げたユウフェを、魔法使いロイドは寝起きのボンヤリとした目で見ている。

 ユウフェはニコニコしながら、「?」と首を傾げた。

「…、今日。泊まって良いって聞いた。
帰るのが面倒なくらいに眠たかったから……トイレに行くついでにお礼を言いに来たんだけど」

「そんな事お気になさらず!このお屋敷には沢山お部屋がありますので、お好きな所を使ってください」

「……月が、良く見える所が良いんだけど」

「それでしたら、屋根裏部屋の天井の窓から、お月様が良く見えるようになっておりますので、そちらへ寝具のご用意を致しますね!」

「…助かる」

 魔法使いロイドは少年のような外見で天然と言われているけれど、いざと言う時、頼りになる存在なのだ。

 何かを要求する時には、後々意味を持つ要求をする。それが、ファンタジー小説に出てくる魔法使いロイドと言うキャラクターなのでユウフェは何の疑問も持たずに頷いた。


「それでは、私はメイドさん達と、色々準備して参ります!
お手洗いの場所は、わかりますか?」

 コクリと頷く魔法使いロイドに、ユウフェは満面の笑みを浮かべてから、頭を下げてこの場を後にしようと身を翻したその時ー…

「これは、今晩のお礼なんだけど」

 その声に、ユウフェは足を止めて振り向いた。

「??」


「君に、まだ薄く…だけど、死相が出てる」

「死相ですか?」

ーー死相とは、やはり、人相に死の近づいた様子が現れると言うあれでしょうか。

魔法使いロイド様が言うのであれば、信憑性は高いですが…心当たりがありません。

ユウフェは、この物語で死ぬキャラでは無かった筈ですし…


「まだ…薄いけど、君は、本来此処で死ぬべき人なのか、考えて行動しなくちゃいけない」






♢♢♢







『君は、本来此処で死ぬべき人なのか、考えて行動しなくちゃいけない』


ーーこのままでは、私が命を落とす事になるから気を付けてと言う事ですよね。

 けれどーー

 今まで、この物語に出てくる救える命は救おうと、迷わず行動してきた。それによって自分の命に危険が及ぶなど微塵も考えた事が無いだけにユウフェは途方に暮れていた。

 放っておいたら、間違いなく王都を囲う結界がダークに壊され、沢山の人が死んでしまう。私のお父様や、その臣下たちも含めて数千人の犠牲者がでる。

 でも、それを防ごうと行動してしまったら私は此処で死ぬかもしれないとなると…。

ーーどうしたら、私は死なずに、王都やお父様を救えるのでしょう。

 私はサブヒロインとしての役割を終えたら、最後は北の魔王に嫁がなければなりませんから、死ぬのは困ります…。
 それに、単純に、死にたくはありません。

 ユウフェは勇者の姿を思い浮かべて、不安な心を落ち着けようと両手を膝の上で握りしめた。

 まだ、勇者様のお役に立てたとは言えない。これから待ち受ける勇者様の過酷な運命に比べたら。私が今までしてきた事なんてちっぽけなもの。
 
 魔法使いロイドから死相が浮かんでいると告げられてから、自分の部屋に戻ったユウフェはベッドの上に腰をかけて両手で顔を覆った。
 
(誰かに相談…けれど……)

 勇者様に相談をしたら、間違いなく勇者様は暫く王都に留まる。けれど、それでは後で勇者様の後悔が大きくなってしまう。

 お父様に告げたら、私が無茶な事をしないように行動を制限されるかも知れない。

 かと言って、不用意に力の無い人は巻き込めない。
 
 途方に暮れていたその時、窓の外から赤い光が入ってきたので、ユウフェはふらりと立ち上がって窓辺に手をついた。

 外を見ると、巫女マユラが天に手をかざして次々と赤い光を打ち上げている。

 まるで、前世日本で見た花火のように大輪の赤い花を咲かせる光は、綺麗で美しい。光の下には巫女マユラと、隣に勇者の姿。

 巫女マユラ と勇者はその後、その場に暫く留まり、勇者は照れ笑いを浮かべていた。

 ユウフェと居る時とは少し違うように見える勇者の横顔が、急に勇者を遠い存在に思わせた。
 
 2人の後ろ姿を眺めながら、切なく軋む胸を誤魔化すように、ユウフェは胸に手を当て、口元にゆっくりと弧を描いた。

「流石に、お似合い過ぎです。勇者様」
 
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