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魔導騎士団の専属薬師
第40話 怒涛の一日 やっと夕方 ①
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(もうすぐ夕鐘が鳴るな……)
店の時計を見遣って、光太朗はいつもの上着を羽織った。カウンターから銅貨を取り出し、いつものようにポケットに入れる。
そしていつものように店の出口へ足を向け、光太朗ははたと止まった。店の真ん中に開いた大きな穴を見て、苦笑いを零す。
あの後、騎士たちが店内を綺麗に片づけてくれた。掃除をする騎士たちの姿は新鮮で、愛嬌たっぷりだった。彼らは皆親切で、気がいい。
ウルフェイルまで片付けに参加し、おまけに彼は店中の寸法を測っていった。業者に提出する資料のためだと言っていたが、カウンターの寸法まで測っていたのは疑問が残る。
店の修理費用は全額騎士団が負担すると聞いて、光太朗はますます首を捻るしかない。せめて見積書だけでも見せてくれと光太朗が言うと、ウルフェイルは笑ってそれを流した。
(あれだけの補修は、かなり金がかかる。その決定を上に報告すること無く自分で決めていた。ウルフはやっぱり、大物だ)
彼の立ち振る舞いや、他の騎士たちの態度をとってみても、ウルフェイルが大物だと分かる。
(じゃあ、リュウは? ウルフがあんなに気にしてたリュウは……)
出口のドアノブに手を掛けて、光太朗はため息を吐く。
3年前の話をはぐらかすために出た話題だったが、『王族が嫌い』と言ってしまったのはまずかったかもしれない。
思えば騎士は、多くが貴族の出身だ。その中には王族もいるだろう。
(リュウが王族だとしたら、物凄く失礼な事言ったよな……。まぁ、言っちまったもんは取り消せないからなぁ)
ふぅと諦めの息をついて、光太朗はドアを開ける。
開けた瞬間、夕鐘が鳴り響いた。鐘の音が降り注ぐ中、店の前に佇む人がいる。
リーリュイだ、と思った瞬間、光太朗の頬が緩んだ。
緩やかな夕日に照らされて、彼の薄い褐色の肌がオレンジ色に染まっている。
今日は制服を着ておらず、シャツに細身のパンツ姿だ。それだけでも絵になるのは、彼が持つ天性の魅力なのだろう。
そしてリーリュイは光太朗を見ると、緩やかに微笑んだ。
「光太朗」
「リュウ」
お互いに名前を呼んで、距離を詰める。光太朗は眉を下げて、リーリュイの顔を見上げた。
「ごめんな。もしかして、待ってたか?」
「いや。先ほど到着したばかりだ。……光太朗」
「うん?」
「昨日よりも、顔色が良い」
リーリュイに優しく微笑まれ、光太朗も応えるように笑顔を返した。
確かに光太朗の体調は昨日よりも良い。薬の副作用も、色々検証している所だ。
万全とは言えないが、光太朗は普段通りの生活が出来るまで回復していた。
「今日は昨日お礼も兼ねて、この辺を余すことなく案内してやるよ」
「いや、今日は食材を買ったら引き上げよう。君の体調が気になる」
「え? 俺は大丈夫だけど……。あんたがそう言うなら、分かったよ。じゃあ、今日行けなかった分は、また後日だな」
「……ああ、それでいい」
リーリュイはそう言いながら、自身の頭にターバンを巻き始めた。プラチナブロンドの髪の殆どを隠すように巻くと、今度は鼻から下を布で覆うように巻く。
目しか出ていない状況のリーリュイを見て、光太朗は眉を顰めた。ぐいっと背伸びをして、リーリュイの顔を覗き込む。
「あ」と光太朗が声を漏らすと、目の前のリーリュイが少しだけ目を眇めた。
「あ、甘党だ! リュウだったのか!」
「……言っておくが、私は甘党ではない。あの晩、鞄に入っていた菓子は……その特別な事情があってのことで……」
「あっはは! そうだったんだな! それなら何であの晩、声を掛けてくれなかったんだ?」
「君があっという間に居なくなるからだ。……行こう、光太朗」
光太朗は素直に頷くと、リーリュイの横に並んだ。そして、随分大きくなってしまった彼を見上げる。
乾いた土地であるランパルは、砂煙が舞うことが多い。目以外を布で覆うというスタイルも、ここランパルでは見慣れたスタイルだ。
しかしリーリュイが顔を隠すのは、砂煙予防では無い気がする。明らかに自分の特徴を消している。
(顔を隠すのは……身分を隠したいからか? 隠そうとするのは、俺のせいか?)
光太朗が見上げているのに気づき、リーリュイが視線を合わせてきた。その目元は穏やかで、光太朗は何も聞けなくなってしまった。
店の時計を見遣って、光太朗はいつもの上着を羽織った。カウンターから銅貨を取り出し、いつものようにポケットに入れる。
そしていつものように店の出口へ足を向け、光太朗ははたと止まった。店の真ん中に開いた大きな穴を見て、苦笑いを零す。
あの後、騎士たちが店内を綺麗に片づけてくれた。掃除をする騎士たちの姿は新鮮で、愛嬌たっぷりだった。彼らは皆親切で、気がいい。
ウルフェイルまで片付けに参加し、おまけに彼は店中の寸法を測っていった。業者に提出する資料のためだと言っていたが、カウンターの寸法まで測っていたのは疑問が残る。
店の修理費用は全額騎士団が負担すると聞いて、光太朗はますます首を捻るしかない。せめて見積書だけでも見せてくれと光太朗が言うと、ウルフェイルは笑ってそれを流した。
(あれだけの補修は、かなり金がかかる。その決定を上に報告すること無く自分で決めていた。ウルフはやっぱり、大物だ)
彼の立ち振る舞いや、他の騎士たちの態度をとってみても、ウルフェイルが大物だと分かる。
(じゃあ、リュウは? ウルフがあんなに気にしてたリュウは……)
出口のドアノブに手を掛けて、光太朗はため息を吐く。
3年前の話をはぐらかすために出た話題だったが、『王族が嫌い』と言ってしまったのはまずかったかもしれない。
思えば騎士は、多くが貴族の出身だ。その中には王族もいるだろう。
(リュウが王族だとしたら、物凄く失礼な事言ったよな……。まぁ、言っちまったもんは取り消せないからなぁ)
ふぅと諦めの息をついて、光太朗はドアを開ける。
開けた瞬間、夕鐘が鳴り響いた。鐘の音が降り注ぐ中、店の前に佇む人がいる。
リーリュイだ、と思った瞬間、光太朗の頬が緩んだ。
緩やかな夕日に照らされて、彼の薄い褐色の肌がオレンジ色に染まっている。
今日は制服を着ておらず、シャツに細身のパンツ姿だ。それだけでも絵になるのは、彼が持つ天性の魅力なのだろう。
そしてリーリュイは光太朗を見ると、緩やかに微笑んだ。
「光太朗」
「リュウ」
お互いに名前を呼んで、距離を詰める。光太朗は眉を下げて、リーリュイの顔を見上げた。
「ごめんな。もしかして、待ってたか?」
「いや。先ほど到着したばかりだ。……光太朗」
「うん?」
「昨日よりも、顔色が良い」
リーリュイに優しく微笑まれ、光太朗も応えるように笑顔を返した。
確かに光太朗の体調は昨日よりも良い。薬の副作用も、色々検証している所だ。
万全とは言えないが、光太朗は普段通りの生活が出来るまで回復していた。
「今日は昨日お礼も兼ねて、この辺を余すことなく案内してやるよ」
「いや、今日は食材を買ったら引き上げよう。君の体調が気になる」
「え? 俺は大丈夫だけど……。あんたがそう言うなら、分かったよ。じゃあ、今日行けなかった分は、また後日だな」
「……ああ、それでいい」
リーリュイはそう言いながら、自身の頭にターバンを巻き始めた。プラチナブロンドの髪の殆どを隠すように巻くと、今度は鼻から下を布で覆うように巻く。
目しか出ていない状況のリーリュイを見て、光太朗は眉を顰めた。ぐいっと背伸びをして、リーリュイの顔を覗き込む。
「あ」と光太朗が声を漏らすと、目の前のリーリュイが少しだけ目を眇めた。
「あ、甘党だ! リュウだったのか!」
「……言っておくが、私は甘党ではない。あの晩、鞄に入っていた菓子は……その特別な事情があってのことで……」
「あっはは! そうだったんだな! それなら何であの晩、声を掛けてくれなかったんだ?」
「君があっという間に居なくなるからだ。……行こう、光太朗」
光太朗は素直に頷くと、リーリュイの横に並んだ。そして、随分大きくなってしまった彼を見上げる。
乾いた土地であるランパルは、砂煙が舞うことが多い。目以外を布で覆うというスタイルも、ここランパルでは見慣れたスタイルだ。
しかしリーリュイが顔を隠すのは、砂煙予防では無い気がする。明らかに自分の特徴を消している。
(顔を隠すのは……身分を隠したいからか? 隠そうとするのは、俺のせいか?)
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