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魔導騎士団の専属薬師
第43話 怒涛の一日 やっと夕方 ④
しおりを挟む光太朗はリーリュイの顔を見つめて、ゆっくりと微笑んだ。
「道を歩きながら気配を読むことも、何かが飛んでこないか神経を張り巡らせる事も……。リュウと一緒ならしなくていい気がする。って、駄目か。それじゃあリュウに丸投げしてることになるな」
「構わない。……全部私に任せて良い」
「そうかぁ? そうだ、たまには交代しようか。リュウの手を俺が引くってどお?」
「引かれてもいいが、君のことは絶対に守る」
きっぱりと言い放ったリーリュイの顔を覗き込み、光太朗は小首をかしげた。リーリュイは至極真面目な顔だ。
「……戦友って、そんなことまでしてくれんのか?」
「ああ。そうだ」
「……そうかあ。じゃあ俺も、リュウを絶対に守るよ。リュウのことは絶対に裏切らない。約束する」
「私も、約束しよう」
キュウ屋の前まで進むと、リーリュイは光太朗を振り返った。そして自身の口を覆っていた布を取る。
リーリュイは繋いだ手を額に当て、瞼を伏せた。
「私、リーリュイは、光太朗を守り通す。あらゆる害を遠ざけ、どんな敵でも葬ってみせる。君を裏切らず、君に絶対的な信頼を置く……堅く誓う」
「お、おいおい……。俺はともかく、リュウは騎士だろ? そんな誓い立てていいのか?」
瞼を伏せていたリーリュイが視線を上げ、薄く笑みを浮かべた。優しさと強さに溢れた表情に、光太朗の胸がじわりと熱くなる。
「構わない。私は誓う。……そして光太朗、私は王族だ。言わないでおこうとも思ったが……君を欺くようなことはしたくない。君が王族を嫌う理由は、聞かなくとも痛いほど分かる。しかし私は……」
「リュウ、ごめん! 違うんだ。昨日の俺の言い方が悪かった。……確かに王族は嫌いだが、中にはあんたみたいな良い人もいる。王族だからって、リュウを嫌うことはないよ」
ぱっと顔を輝かせるリーリュイの手を引いて、光太朗はポケットから鍵を取り出した。
「まあ、とりあえず店に入れよ。ゆっくり話そう」
光太朗はそう言いながら、キュウ屋の鍵を開ける。その間もリーリュイは手を離そうとしない。
疑問に思いながらも、光太朗はキュウ屋のドアを開けた。
そして中の状況を見て、リーリュイが目を見開く。光太朗もすっかり頭から抜けていたが、床に開いた大きな穴を見て、同じような表情を浮かべた。
「光太朗、これはどうした?」
「あ~、これな。昼間、重量オーバーで……」
「もしかして騎士らか? 何ということを……!」
「リ、リュウ! 怒らなくていい! ちゃんと弁償してもらうことになってるから。ウルフェイルさんって知ってるだろ? その人がちゃんとしてくれたから!」
その言葉を聞いて、リーリュイの雰囲気ががらりと変わった。穏やかな空気が消し飛び、美麗な眉が吊り上がる。
「ウルフェイルが来ていたのか? 他の騎士も?」
「……えっと、うん。ウルフの集団が一番多かったよ」
「ウルフ! ウルフと呼べと、あいつが指示したのか!?」
「……え? ああ、うん。え? そこは怒る所か?」
光太朗がそう言うと、リーリュイは荒々しくターバンを外した。床に空いた穴を覗き込むと、唸り声のようなため息を吐く。
「寒くなってきたのに、これでは床から冷気が這い上がってきてしまう。応急処置もしないなんて、何という手際の悪さだ」
「リュウ、大丈夫だ。今日は二階で寝るから」
「当該の騎士にはきつく言っておく。すまない、光太朗」
「……リュウ、あんたやっぱり……魔導騎士団のお偉いさんか?」
その問いに、リーリュイはぴたりと動きを止めた。「まぁ、そこそこだ」と小さな声で呟いて、何もなかったかのように光太朗へと向き合う。
「諸々は、さて置いて」
「ああ、さて置くのね」
光太朗が笑って答えると、リーリュイが持っていた荷物を目の前へと掲げた。先ほどの鋭い空気は消え去って、穏やかさが戻っている。
「光太朗、厨房を貸してくれ」
「……無いよ?」
「…………無い?」
「うん。リュウ、こっち来て」
光太朗はそう言いながら、出口の横にある扉を開けた。暖炉とは逆の方向にある、小ぶりなドアだ。
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