捨てられ令嬢は、異能の眼を持つ魔術師になる。私、溺愛されているみたいですよ?

miy

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第6章

72話

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「ランチェスター侯爵令息夫人イシス様、私がご案内をさせていただきます。どうぞ、こちらでございます」


ナターリエ様のお部屋を出てすぐ、公爵家の家令から丁寧に声をかけられる。


「はい」




──────────




公爵家ともなれば、邸内に牢獄や地下牢のひとつやふたつ…普通にあるもので、私はその地下牢に案内された。


「フェル!」

「来たか、イシス。こちらは問題なく…言われた通りにしてあるぞ。そっちは?」

「ナターリエ様はもう大丈夫よ。何とか無毒化できたわ」


フェルナンド様は何も言わず、ただ私をキュッと軽く抱き締めた。

ふふっ、よくやったと言われているみたい。
もし失敗していたら…とんでもなかったわよね?巻き込んでごめんね。





「彼女は?」

「ダリア・ポートリエ男爵令嬢。公爵家でご令嬢の側付き侍女として、16の時から…もう5年仕えている」


牢屋の中には、先ほどまでナターリエ様に付き添っていた侍女のダリアがいた。

冷たい石床の上に…黙ったまま座り込んでいる。




そう、このダリアこそ、ナターリエ様に毒を盛った犯人。


「5年も側にいたあなたは、ナターリエ様に信頼されていたはず。それなのに…なぜ“毒”を?」


私が問いかけても、ダリアは黙って身動きひとつしない。


「その手には、毒の残留物がわずかに残っていたわ。
そして…ナターリエ様の側にあったコップにも。中の水には毒が入っていたのでは?」


ダリアの肩がガタガタと震え出す。




私がナターリエ様の部屋を視た・・時、そのことにすぐ気が付いた。

だから…毒入りの水をさり気なく・・・・・持ち出すであろうダリアを拘束し、ダリアの手とコップの中身を調べるようにフェルナンド様にお願いしておいたの。


毒見された飲食物がナターリエ様の前に運ばれたとしても、ダリアが最後に毒を一振りすればそれで終わりよね。

ナターリエ様の記憶の中で、ダリアはいつも側にいたわ。




「お前の手からも、コップの水からも毒物反応が出た。同じ毒物だ…言い逃れはできないと思え」


ダリアは牢屋の鉄格子にしがみついた。


「わ…私は、…私は…」

「理由があるなら話して。ナターリエ様はご無事だけれど…公爵令嬢の暗殺は未遂でも大罪。
あなたのご家族全員が罪に問われることになるわ」

「…大罪?……私の家族が……」


ダリアは真っ青な顔になって…泣き出した。


「…っ…アンデヴァイセン…伯爵にっ…命令されました」

「…何っ?!…」



“アンデヴァイセン”

…まさか、ここでその名を聞くことになるなんて…



「なぜ、伯爵からそんな命令を?」

「…っ…それはっ…それは…言えません…」


フェルナンド様が詰問するが、ダリアは酷く動揺して頭を左右に激しく振り…答えない。



ユーリス殿下を支持するアンデヴァイセン伯爵家は、エリック殿下派の公爵家とは敵対関係にある。
使用人を雇う際には、当然その辺りの身辺調査をしっかりとしたはず。

ダリアは、いつ…どうして伯爵と繋がったの?
5年も側仕えをしていたナターリエ様を毒殺する命令に…なぜ従ったの?

ダリアの本意でないとするならば、そうせざるを得なかった大きな理由があるはず。 

何か弱味を握られていた…とか…?



「ダリア」


私はその名を敢えて呼び捨てた。ダリアはビクリと震えて、無意識に私を見る。
その一瞬の隙を逃さず…ダリアの暗い瞳を捉えた。





「……ぅ…っ…!…」


私が視た・・彼女の記憶は…真っ黒く塗り潰され…断片的にしか読み取れない。それは、とても苦しく…私にとって酷く不快なものだった。


「イシス!…大丈夫か?!」


あまりの気持ち悪さに座り込んでしまった私を、フェルナンド様が慌てて抱え上げる。


「…フェル…」

「イシス?…涙が…っ…一度ここから出よう!」

「いいえ、いいえ…駄目よ…。…ダリアさん…」


私はフェルナンド様に支えられながら、ヨロヨロと牢屋の前まで行く。


ダリアは怯えた表情で私たちを見ている。


私は鉄格子の間から手を入れ、ダリアに触れようとした。


「…ダリアさん…」

「なっ…何?!…触らないでっ!…」


私の手は拒絶され、あっさりとはたき落とされる。




「…イシス…!!」


…手首に痛みを感じたところで、意識が途絶えた…







…ダリア…

あなたは…
バジルによって尊厳を踏みにじられ…
辱めを受け…傷付いた人…



とても…真っ黒い記憶…






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