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しおりを挟む「……この宝石は、殿下がご令嬢にお贈りになったものですか?」
「そうだ! なんだ、ユーリア。その事に怒っているのか? 私が君じゃなくこの可愛い人に貴重な宝石を贈ったことを」
なぜだか殿下はドヤ顔だ。
ユーリアに宝石を検分されている当の男爵令嬢はどこか目を逸らしているというのに。
「だとしたら、これは由々しき事態です。この宝石は偽物ですわ、殿下」
ユーリアは真剣な表情で伝える。
「なっっっ!」
「宝石の中に光の帯が見えません。宝石商が殿下に偽物を売り付けたのならば詐欺に値します。まあ他の可能性もありますが……」
言いながら、ユーリアは再び男爵令嬢の方を見た。
「な、なんですか? わたしが何か!?」
「ご令嬢はどう思われますか? こちらの宝石が偽物だと聞いて」
「え!? あ! そ、そんなの……わたしは気にしないですっ、殿下の愛がありますからっ」
「そうですか」
ユーリアは王太子と男爵令嬢の顔を見比べる。贈った宝石が偽物だと聞いて顔面蒼白になっている殿下と、偽物でも構わないと胸を張る令嬢。
(気にしない、とは不思議な反論だわ。偽物ではないと言わないのね)
ユーリアは首を傾げる。
その発言の他にも、どこかギクリとした様子で目を逸らしたり急に冷や汗をかいたりなど変化が著しい。
十中八九、令嬢はその宝石が偽物だと知っていたに違いない。素人目には本物と見紛う出来だ。
そもそもかの男爵家が急に力を持ち始めたのも、自領の山からも宝石が大量に見つかったという触れ込みに起因する。もしかしたら、それらも叩けば埃が出るかもしれない。
(『真実の愛』は別になんの隠語でもなかったのね……! 余計なことを暴いてしまいました)
よっぽどショックだったのか、王太子はすっかり元気を無くしてしまっている。
見栄っ張りなあの人のことだ。もしかしたら、国庫にも手を付けたのかもしれない。
かなりふっかけられたとしても、煽てられて気分が良くなれば誤った判断をするタイプだから。
(でももう、わたくしには関係のないことだわ)
かつてはそうした問題を、ユーリアが秘密裏に処理していた。即断即決なところはいいのだが、いかんせん勢いだけなところもあって……とまあ、もういいのだ。
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