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第一話 追憶-4
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全てはシルフィエットと入れ替わりでゲームヒロインに当たる男爵令嬢が入学したことから始まっていた。平民の出でありながら男爵の養女となったことで入学できたのだ。
エカテリーナがその「名を口にするのも穢らわしい」相手と初めて会ったのは、新年度の慌ただしさも一段落した四月下旬のことである。それは王立学園の庭を散策中のことであった。
どこか苦しげな女性の声が聞こえ、大事が有ってはいけないと駆け付けた。ところが、着いた先の四阿の陰に潜んでいたのは服をはだけて男性教師と情事に耽る女の姿であった。それが問題の男爵令嬢、ゲームヒロインである。
我が目を疑ったエカテリーナは二度見をしたが、女は明らかに情事の真っ最中。
他人の情事を見るなど当然の如く初めてだ。どう反応して良いか判らなくなったエカテリーナは絶句して立ち尽くすばかり。頭の中も真っ白になる。
そんなエカテリーナを早々に見咎めたゲームヒロインが快楽に溶けた笑みを差し向けた。明らかな挑発だ。
これによってエカテリーナはますます困惑を深めた。情事を見られながらむしろ誇らしげにすらする女の心中など計り知れない。気持ち悪さだけが募る。しかしこれによって感情が少し冷え、若干の思考も戻った。
気を取り直したエカテリーナはそのままにしてはおけないと、情事に耽る二人を咎め立てする。
男の反応が顕著だった。ここで初めてエカテリーナに気付いた男が慌てて身形を整え、駆け出すように立ち去った。
ところがゲームヒロインの方は悠々と、動揺を隠せずにいたエカテリーナを嘲るかのように、そして勝ち誇るかのように嗤いつつ立ち去るのだ。
人目を憚って然るべき行為を目撃されて尚、悪びれもしない彼女のことがエカテリーナには信じられなかった。
それ以降、エカテリーナは二日と置かずにゲームヒロインの情事を目撃するようになる。教師であったり学生であったりと、相手を都度変えながら行く先々で情事に耽っている。待ち伏せされているかと錯覚するほどだ。
それと言うのも、多数の目撃者が居るなら噂になりそうなものでありながら、そうした様子が無い。目撃しているのが自分だけなのではないかと考えたのだ。最初の頃こそ人目を避けるような場所で行われていた情事が徐々に人目に付きやすい場所へと移ったにも拘わらずだったため、余計にそう思われた。
錯覚だったと悟るのは、五月下旬。廊下を歩いている際、階段から血相を変え、それでいて顔を赤らめながら走り去る女学生と擦れ違った。その階段の陰ではゲームヒロインが情事に耽っており、女学生はそれを見たのだ。それでもその情事が誰かの口の端に上ることなく日々は過ぎる。こうして彼女の情事を目撃しても誰もが口を噤んでいるのだと知った。自らを振り返ってもそうだったため、皆も同じだったのだと妙に納得もした。
振り返って考えれば、この頃にはもうゲームヒロインの毒が学園全体を病ませ、常軌を逸した様子を日常に変えつつあったのだ。
また、以前にも見た相手との情事に出会すことも増えた。そんな男の場合、エカテリーナが咎めれば情事を切り上げはしても、立ち去る時に興が冷めたと舌打ちを残す始末だ。
六月半ばともなると、あられもない姿のゲームヒロインはいつ服を着ているのか疑わしいほどとなり、相手の男ももうエカテリーナが咎めても情事を止めなくなっていた。
エカテリーナがその「名を口にするのも穢らわしい」相手と初めて会ったのは、新年度の慌ただしさも一段落した四月下旬のことである。それは王立学園の庭を散策中のことであった。
どこか苦しげな女性の声が聞こえ、大事が有ってはいけないと駆け付けた。ところが、着いた先の四阿の陰に潜んでいたのは服をはだけて男性教師と情事に耽る女の姿であった。それが問題の男爵令嬢、ゲームヒロインである。
我が目を疑ったエカテリーナは二度見をしたが、女は明らかに情事の真っ最中。
他人の情事を見るなど当然の如く初めてだ。どう反応して良いか判らなくなったエカテリーナは絶句して立ち尽くすばかり。頭の中も真っ白になる。
そんなエカテリーナを早々に見咎めたゲームヒロインが快楽に溶けた笑みを差し向けた。明らかな挑発だ。
これによってエカテリーナはますます困惑を深めた。情事を見られながらむしろ誇らしげにすらする女の心中など計り知れない。気持ち悪さだけが募る。しかしこれによって感情が少し冷え、若干の思考も戻った。
気を取り直したエカテリーナはそのままにしてはおけないと、情事に耽る二人を咎め立てする。
男の反応が顕著だった。ここで初めてエカテリーナに気付いた男が慌てて身形を整え、駆け出すように立ち去った。
ところがゲームヒロインの方は悠々と、動揺を隠せずにいたエカテリーナを嘲るかのように、そして勝ち誇るかのように嗤いつつ立ち去るのだ。
人目を憚って然るべき行為を目撃されて尚、悪びれもしない彼女のことがエカテリーナには信じられなかった。
それ以降、エカテリーナは二日と置かずにゲームヒロインの情事を目撃するようになる。教師であったり学生であったりと、相手を都度変えながら行く先々で情事に耽っている。待ち伏せされているかと錯覚するほどだ。
それと言うのも、多数の目撃者が居るなら噂になりそうなものでありながら、そうした様子が無い。目撃しているのが自分だけなのではないかと考えたのだ。最初の頃こそ人目を避けるような場所で行われていた情事が徐々に人目に付きやすい場所へと移ったにも拘わらずだったため、余計にそう思われた。
錯覚だったと悟るのは、五月下旬。廊下を歩いている際、階段から血相を変え、それでいて顔を赤らめながら走り去る女学生と擦れ違った。その階段の陰ではゲームヒロインが情事に耽っており、女学生はそれを見たのだ。それでもその情事が誰かの口の端に上ることなく日々は過ぎる。こうして彼女の情事を目撃しても誰もが口を噤んでいるのだと知った。自らを振り返ってもそうだったため、皆も同じだったのだと妙に納得もした。
振り返って考えれば、この頃にはもうゲームヒロインの毒が学園全体を病ませ、常軌を逸した様子を日常に変えつつあったのだ。
また、以前にも見た相手との情事に出会すことも増えた。そんな男の場合、エカテリーナが咎めれば情事を切り上げはしても、立ち去る時に興が冷めたと舌打ちを残す始末だ。
六月半ばともなると、あられもない姿のゲームヒロインはいつ服を着ているのか疑わしいほどとなり、相手の男ももうエカテリーナが咎めても情事を止めなくなっていた。
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