生活魔法は万能です

浜柔

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172 元通り

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 ザネクが弓を買い、ルキアスとザネクは弓店を後にする。

「ザネクは試し撃ちしないの? 射撃場ならできるんだよね?」
「射撃場で試し撃ちなぁ……」

 ザネクは腕を組んで上を見る。

「兄ちゃんの話だと、矢を回収できないらしいからちょっとな。一本が最低でも二〇〇ダールだからな」
「え!? 銃弾より高いよ!?」
「材料を色々使うし、手間も掛かるだろ? 自作する人も居るらしいがな」
「ぼくなら自作するしか無かったところだね……」
「自作でも使い捨ては嫌だろ?」

 ルキアスは矢を思い浮かべて、自作する手間を考えてみる。鏃だけでも自作の銃の弾丸より手間取りそうだ。その他に棒や羽根の加工をしてそれらを繋ぎ合わせるのだから、更に数倍の時間が掛かっても不思議ではない。そこまで手間を掛けてしまったら、失くすのが惜しくなるのも道理だろう。

「確かに。でもどうして回収できないの?」
「的の方にのこのこ歩いて行ったら流れ弾に中るかも知れないだろ?」

 射撃場は一人一部屋ではなく、大部屋で何人もが同時に利用する。中には下手な射手も混じっているものだ。

「あ、そっか……」
「銃弾は使い捨てにするしかないから銃を撃つなら気にする話じゃないがな」
「そうだね。……あれ? でも銃だって的が穴だらけになったら換えなきゃいけないよね? それはどうするの?」
「何かこう……」

 ザネクはロープを下に引っ張るような仕草をする。

「ロープを引いて的を手前の方に動かして交換するらしいぞ」
「へー、ちょっと見てみたくなったよ」
「でも見るだけでも五〇〇ダールな?」
「……それがあった!」

 探索を再開してもう少し懐が温かくなってからならともかく、今直ぐはちょっと厳しいルキアスだ。

「お預けだね……」
「試し撃ちは明日にでもダンジョンに行こうぜ。今日にも兄ちゃんが様子を教えてくれる筈だからさ」
「うん」




 そして翌日。ザネクはガノスから「ダンジョンにはこれと言った異常は見られない」と聞いたとルキアスに伝えた。

「あんな大群だったのに元の通りなの? 勿論その方が都合はいいけど……」
「年に一度か二度はあって、いつも終わったら何事もなかったように元通りだってさ」
「不思議だね……。でも何であんな事が起きるんだろう?」
「ダンジョンが探索者を試してるってのが専らの噂らしい」
「試すの? どんな風に?」
「魔物を倒さずに放置すればするほど強い魔物が大発生するって話だ。探索者の頑張り具合を試すんだと」
「それって試してるのかな……? 」

 ルキアスはヨーコを思い出した。ヨーコが彼女の言う通りにダンジョンの神なら何となく成り行き任せに思えるのだ。
 しかし結論の出ない話をいつまでしていても虚しいだけだと、二人はさくさくとダンジョンに行くことにした。
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