415 / 627
415 変な女
しおりを挟む
挨拶こそ軽い感じだったロマが真剣な面持ちになった。
「ところで兄弟、体調に問題は無いか?」
「少し息苦しいけど、それ以外は何も無いかな」
「そっか。その程度と聞いて安心した」
ロマは表情を緩めた。
「いや、何ね。兄弟と同じ一〇レベルの探索者がこんな階層まで来たら魔力に当てられて死んじまったりするんでな」
「ええQ? 何となく息苦しいのはそのせい!?」
「多分な。まあでも今がそれくらいならそれ以上悪化しない筈だから、安心してくれていいぞ」
「う、うん……」
「そんで直ぐにでも上に帰してやりたいところなんだが、道中が危険でな。こう言っちゃ何だが兄弟のレベルじゃ命の保証ができない階が幾つか在る。俺じゃ兄弟を連れてそこを通り抜けられるか五分五分だ。死体なら幾らでも持ち帰ってやれるんだが、死体になるのは願い下げだろ?」
「……そりゃ嫌だよ」
「だよな。だからメイを呼んで来るから、それまで待ってくれ」
「え? メイナーダさんじゃなくても、ぼくをここまで連れて来た女の人とか……」
「あいつはちょっとな……」
「じゃあ、タイラクさんに頼むとかは?」
「タイラクは近接だからそれもちょっとな。中には近寄っただけで危ない魔物も居るし、それでなくても兄弟は無茶苦茶でかい魔物の爪が目の前を通り過ぎるのに堪えられるか?」
「……勘弁して欲しいかな」
「だろ? だからメイなんだ。メイはこう言っちゃ何だが出鱈目だからな」
「そうなんだ……。でもそもそもぼくはどうしてこんな所に……」
ルキアスはそう考えたところで気を失う前の経緯を思い出した。
「そうだ。変な女の人に拉致されたんだった!」
「変な女とは失敬だな、ボクは」
ルキアスが声を上げるのに合わせたようにドアが開いてルキアスを掠った女性が入って来た。
「ボクは探求者なんだよ? 探求のためなら何でもするだけさ」
「やっぱり変な人だ!」
「その通り!」
頭を抱えるルキアスの叫びに、ロマは深く頷きながら同意した。
「失敬だな、二人とも」
本気かどうか不明なぷんぷんした様子で怒る女性は奇妙に可愛らしく、ルキアスとロマは毒気を抜かれてしまった。
「そんなことより、起きたのならボクには早速仕事をして貰いたい」
ルキアスを指差しながら言うので、恐らくこの「ボク」はルキアスのことだ。
しかしこれにはロマもおこだった。
「拉致しておいて仕事を押し付けるたぁ、てめぇは奴隷商人か!?」
「キミの了見は狭いね。いいかい? ボクはこのボクのためを思って言ってやってるんだよ? ここで寝泊まりするのに働きもしないんじゃ肩身の狭い思いをしてしまうだろう? そうならないようにしてあげようとしているのが判らないのかい?」
「そもそもてめぇが掠って来たからだろが! お前がまた上まで送り届ければ万事解決だろが!」
「嫌だよ。そんなことをしたら何のために連れて来たのか判らないじゃないか」
ルキアスはロマがメイナーダに頼ろうとする理由に合点がいった。
「うがーっ! ああ言えばこう言う!」
「何を怒り散らしてるのか知らないけどね、これはとても合理的な話なんだよ」
そんな言い合いがなされる中、部屋のドアが開いた。
「よう、ルキアス。目が醒めたんだな。何か妙なことになって悪かった」
入って来たのは肉の塊を持ったタイラクだった。
「ところで兄弟、体調に問題は無いか?」
「少し息苦しいけど、それ以外は何も無いかな」
「そっか。その程度と聞いて安心した」
ロマは表情を緩めた。
「いや、何ね。兄弟と同じ一〇レベルの探索者がこんな階層まで来たら魔力に当てられて死んじまったりするんでな」
「ええQ? 何となく息苦しいのはそのせい!?」
「多分な。まあでも今がそれくらいならそれ以上悪化しない筈だから、安心してくれていいぞ」
「う、うん……」
「そんで直ぐにでも上に帰してやりたいところなんだが、道中が危険でな。こう言っちゃ何だが兄弟のレベルじゃ命の保証ができない階が幾つか在る。俺じゃ兄弟を連れてそこを通り抜けられるか五分五分だ。死体なら幾らでも持ち帰ってやれるんだが、死体になるのは願い下げだろ?」
「……そりゃ嫌だよ」
「だよな。だからメイを呼んで来るから、それまで待ってくれ」
「え? メイナーダさんじゃなくても、ぼくをここまで連れて来た女の人とか……」
「あいつはちょっとな……」
「じゃあ、タイラクさんに頼むとかは?」
「タイラクは近接だからそれもちょっとな。中には近寄っただけで危ない魔物も居るし、それでなくても兄弟は無茶苦茶でかい魔物の爪が目の前を通り過ぎるのに堪えられるか?」
「……勘弁して欲しいかな」
「だろ? だからメイなんだ。メイはこう言っちゃ何だが出鱈目だからな」
「そうなんだ……。でもそもそもぼくはどうしてこんな所に……」
ルキアスはそう考えたところで気を失う前の経緯を思い出した。
「そうだ。変な女の人に拉致されたんだった!」
「変な女とは失敬だな、ボクは」
ルキアスが声を上げるのに合わせたようにドアが開いてルキアスを掠った女性が入って来た。
「ボクは探求者なんだよ? 探求のためなら何でもするだけさ」
「やっぱり変な人だ!」
「その通り!」
頭を抱えるルキアスの叫びに、ロマは深く頷きながら同意した。
「失敬だな、二人とも」
本気かどうか不明なぷんぷんした様子で怒る女性は奇妙に可愛らしく、ルキアスとロマは毒気を抜かれてしまった。
「そんなことより、起きたのならボクには早速仕事をして貰いたい」
ルキアスを指差しながら言うので、恐らくこの「ボク」はルキアスのことだ。
しかしこれにはロマもおこだった。
「拉致しておいて仕事を押し付けるたぁ、てめぇは奴隷商人か!?」
「キミの了見は狭いね。いいかい? ボクはこのボクのためを思って言ってやってるんだよ? ここで寝泊まりするのに働きもしないんじゃ肩身の狭い思いをしてしまうだろう? そうならないようにしてあげようとしているのが判らないのかい?」
「そもそもてめぇが掠って来たからだろが! お前がまた上まで送り届ければ万事解決だろが!」
「嫌だよ。そんなことをしたら何のために連れて来たのか判らないじゃないか」
ルキアスはロマがメイナーダに頼ろうとする理由に合点がいった。
「うがーっ! ああ言えばこう言う!」
「何を怒り散らしてるのか知らないけどね、これはとても合理的な話なんだよ」
そんな言い合いがなされる中、部屋のドアが開いた。
「よう、ルキアス。目が醒めたんだな。何か妙なことになって悪かった」
入って来たのは肉の塊を持ったタイラクだった。
20
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる