540 / 627
540 明日から
しおりを挟む
地上に戻ったルキアス達は休憩する。まだ殆ど疲れてないが、何か懸念が有ればその払拭に努めるのが生き残る道だ。
「あの人達ってどうしてぼくらを見てたんだろう?」
「一番考えられるのは、俺らが魔物をほぼ全部始末してしまってたから、横取りされた気分だったってところか」
「そっか。そのままじゃ魔物を狩れなくなっちゃうもんね」
「だからシャルウィが気付いてくれたのはちょうど良かったと思うぜ。あれ以上続けてたら恨み買ってたかも知れないからな」
尤も、全ては臆測だから相手と話してみなければ判らない。ダンジョン内では迂闊に話し掛けられないので難しいが。
「それより剣だ。切れ味にびっくりしたぞ」
「ほんとだよね」
「鋼鉄でこれだったらアダマントを『捏ね』たらどうなるんだろうな?」
「アダマントをね……」
「もう、アダマントを『捏ね』る心配より先に手に入れる心配をしなさいよ」
「「……」」
剣一本分のアダマントを手に入れるには深層で狩りをするか、大金を積むしかない。
あまりの身も蓋も無さにルキアスとザネクはもにょもにょと口を動かすだけだった。
「でももっと先に明日からの狩りをどうするかを決めなくちゃよね。ザネクがあれだけさくさく倒せるなら盾も要らなくなるし、もっと奥に行けるじゃない?」
「おう。俺は行けるぜ」
「奥に行くならタイラクさん達と合流するのはどうかな? タイラクさんの気が変わってなければだけど」
「それ、あったわね。それで行きましょう」
「でもシャルウィはいいのか? シャルウィだけ自力で逃げる手段が無いぞ」
ルキアスなら『傘』で飛ぶことで、ザネクも『傘』で飛ぶか『大盾』で防御を固めればどうにかなる。しかしシャルウィにはそんな無敵に等しい手段が無い。
だが、シャルウィ自身はそう気にしていない様子だ。
「そこはザネクが守ってくれるわよね?」
「お、おう。勿論だけどよ……」
「だったら大丈夫よ」
「おう」
明日からの方針が決まったところで今日この後をどうするかだが、三人共ダンジョンに行く気分ではなくなっていたため、クリューの町の散策をすることにした。
普段は通らない道を歩いてみれば、はっきり見えるものもある。もう殆どの建物が完成している。
「アパートなんかももう随分建ってるんだね。ぼくらもそろそろ引越を考えないと」
「じゃあどこら辺に家を借りるか回ってみようぜ」
十分な時間もあったので、三人は殆どの場所を見て回ることができ、候補も幾つかに絞られた。最有力候補として選んだのはダンジョンと堤防とのちょうど真ん中くらいに位置する場所だ。
夜になって探索の件と住居の件を深層組に打診すると、探索は二つ返事で了承、住居はメイナーダに一任で話が纏まった。ルキアス達が選んだ候補の可否をメイナーダが判定する感じである。
鍛冶師は脂汗を流して呻いていた。
「ぐぬぬぬぬ! 全っ然っ凹みもしねぇ!」
鋼鉄を『捏ね』ようとしているのだ。しかしビクともしない。
脇に置いていた少し大きめのナイフを持って鋼材に突き刺す。ナイフは鋼材にめり込んだ。
このナイフはザネクの剣を打った時の余りで打ったもので、ザネクに剣の加工賃を請求しなかったのはこれを返さずに済ますためでもあったのだ。
悪用したり売ったりはしない。手本とするだけ。このナイフと同等の切れ味が当面の目標だ。
諦め掛けた時、このナイフの切れ味を再確認する。そうしてモチベーションを取り戻すのだ。
彼のこの努力が実るのは数年後の未来だが、実った時には鍛冶師界に震撼が走り、瞬く間に予約の取れない鍛冶師になる。
「あの人達ってどうしてぼくらを見てたんだろう?」
「一番考えられるのは、俺らが魔物をほぼ全部始末してしまってたから、横取りされた気分だったってところか」
「そっか。そのままじゃ魔物を狩れなくなっちゃうもんね」
「だからシャルウィが気付いてくれたのはちょうど良かったと思うぜ。あれ以上続けてたら恨み買ってたかも知れないからな」
尤も、全ては臆測だから相手と話してみなければ判らない。ダンジョン内では迂闊に話し掛けられないので難しいが。
「それより剣だ。切れ味にびっくりしたぞ」
「ほんとだよね」
「鋼鉄でこれだったらアダマントを『捏ね』たらどうなるんだろうな?」
「アダマントをね……」
「もう、アダマントを『捏ね』る心配より先に手に入れる心配をしなさいよ」
「「……」」
剣一本分のアダマントを手に入れるには深層で狩りをするか、大金を積むしかない。
あまりの身も蓋も無さにルキアスとザネクはもにょもにょと口を動かすだけだった。
「でももっと先に明日からの狩りをどうするかを決めなくちゃよね。ザネクがあれだけさくさく倒せるなら盾も要らなくなるし、もっと奥に行けるじゃない?」
「おう。俺は行けるぜ」
「奥に行くならタイラクさん達と合流するのはどうかな? タイラクさんの気が変わってなければだけど」
「それ、あったわね。それで行きましょう」
「でもシャルウィはいいのか? シャルウィだけ自力で逃げる手段が無いぞ」
ルキアスなら『傘』で飛ぶことで、ザネクも『傘』で飛ぶか『大盾』で防御を固めればどうにかなる。しかしシャルウィにはそんな無敵に等しい手段が無い。
だが、シャルウィ自身はそう気にしていない様子だ。
「そこはザネクが守ってくれるわよね?」
「お、おう。勿論だけどよ……」
「だったら大丈夫よ」
「おう」
明日からの方針が決まったところで今日この後をどうするかだが、三人共ダンジョンに行く気分ではなくなっていたため、クリューの町の散策をすることにした。
普段は通らない道を歩いてみれば、はっきり見えるものもある。もう殆どの建物が完成している。
「アパートなんかももう随分建ってるんだね。ぼくらもそろそろ引越を考えないと」
「じゃあどこら辺に家を借りるか回ってみようぜ」
十分な時間もあったので、三人は殆どの場所を見て回ることができ、候補も幾つかに絞られた。最有力候補として選んだのはダンジョンと堤防とのちょうど真ん中くらいに位置する場所だ。
夜になって探索の件と住居の件を深層組に打診すると、探索は二つ返事で了承、住居はメイナーダに一任で話が纏まった。ルキアス達が選んだ候補の可否をメイナーダが判定する感じである。
鍛冶師は脂汗を流して呻いていた。
「ぐぬぬぬぬ! 全っ然っ凹みもしねぇ!」
鋼鉄を『捏ね』ようとしているのだ。しかしビクともしない。
脇に置いていた少し大きめのナイフを持って鋼材に突き刺す。ナイフは鋼材にめり込んだ。
このナイフはザネクの剣を打った時の余りで打ったもので、ザネクに剣の加工賃を請求しなかったのはこれを返さずに済ますためでもあったのだ。
悪用したり売ったりはしない。手本とするだけ。このナイフと同等の切れ味が当面の目標だ。
諦め掛けた時、このナイフの切れ味を再確認する。そうしてモチベーションを取り戻すのだ。
彼のこの努力が実るのは数年後の未来だが、実った時には鍛冶師界に震撼が走り、瞬く間に予約の取れない鍛冶師になる。
18
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる