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予想外(ジグ視点)
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マリンに一世一代の告白をして、ふられてしまった。
彼女があまりに自然に周りと溶け込んでいるから、異世界から来たのだという事をすっかり忘れていた。いや、忘れていたかったのかもしれない。
俺だったら大事な家族を置いて別の世界で暮らせるのかと問われ、とてもじゃないが不可能だと素直に答えた。
相手の事をちゃんと考えもせずに想いを伝えたことを恥じる。
ほとんど一目惚れで、あんなに異性を意識したことが無かったから余裕が無かった。
村にもかわいい女の子は居たけど、笑顔を見るだけで胸が締め付けられるような気持になったことはない。
怖がりながら魔物に立ち向かう勇敢さに、いつでも明るく笑ってくれる優しさがたまらなく好きだった。
勇者なんて大役に押しつぶされてしまいそうな時、マリンは俺の心の拠り所だったのだ。
マリンが向こうの世界に帰ってしまうまであと少し。
村へ帰る準備をしながら、いじましくも何度も会いに行ってしまう。
もしかして、もしかしたら、考え直してこっちに残ってくれるって、俺と一緒に居たいって言ってくれるかもしれないなんて期待しながら。
――そしてとうとうマリンが異世界へ帰ってしまう日が来た。
「ジグ、ちょっといい?」
村へ帰るまでの間泊めて貰っている王城の部屋に、マリンが訪ねて来た。
俺は息苦しさ半分、期待半分で扉を開ける。
が、そこにはマリンと一緒にアンヌも居た。
やはり最後まで俺が望むような答えは帰って来ないと知り、拳を握り締める。
「……別れの挨拶か?」
不貞腐れたような声が出てしまい、仕切り直すために咳払いをする。
マリンとアンヌを部屋に招き入れ椅子を勧めた。
「うん。予定通りお城の地下にある魔法陣で帰してもらえるんだって」
「見えてる部分だけでも広いのに地下まであるのね、このお城」
アンヌの楽しそうな声が耳障りで、咎めるようについ睨み付けてしまう。
マリンが帰ってしまう。二度と会えないかもしれないのに随分と機嫌が良いんだな。
「それでね、アンヌも私と一緒に向こうの世界へ行くことになって…」
「え?」
聞き間違いか?
どく、と心臓が嫌な音を立てて大きく跳ねた。
「マリンから向こうの世界の話を聞いてるうちにどうしても見て見たくなったの。空飛ぶ乗り物や馬より早い乗り物があるんだって」
「聖女が召喚できない時、こっちの世界の魔法使いが異世界へ出向くこともあるんだって。だから向こうで暮らす準備はお手の物みたい」
「王様が褒美をくれるって言ってたでしょ?だから思い切って頼んでみたの」
「ふふふ、楽しみね!向こうに行ったら案内してあげたい場所が一杯あるから」
俺を置いて話が進んでいく。
酷い耳鳴りがしてきて、それ以上二人の話を聞きたくないと思ってしまった。
いつの間にこの二人は、お互いを呼び捨てにするほど仲良くなったんだろう。
「――ど、ぅす」
声が掠れ、アンヌにもマリンにも届かず消えた。
まずい、と頭のどこかで警告音がする。
「ッアンヌ、お前、おじさんとおばさんはどうするんだよ」
そうだ、あの二人が一人娘のアンヌを得体の知れない世界にやるなんて許すはずがない。
焦って出たにしては的を射ている意見に自然と口が笑う。
「お父さんとお母さんにはもう手紙で伝えてあるわよ。当たり前じゃない」
「……は?二人は、お前が異世界に行くこと…」
「了承済みだけど。こっちと行き来するのは難しいけど不可能じゃないし連絡も取れるからって言ったら、ならいいって」
ならいいってなんだ。
なんで止めない?
どうしてこいつはいつもそうなんだ。
聖地を巡る旅だって危険だってのに無理やり付いて来て、今度はマリンの住んでた世界に行くだって?
無鉄砲すぎる。
「アンヌ、お前」
「勇者様、失礼いたします。聖女様、アンヌ様、そろそろお時間です」
手を伸ばそうとしたのと同時に城の騎士が入って来る。
アンヌと一緒に村に帰るんだと思ってた。
勇者としての役目が終わったらいつも通り、隣の家にはアンヌが居て……。
「じゃあねジグ。おばさんたちによろしく言っておいて」
晴れやかな笑顔で告げられた別れは、妙に非現実感があった。
彼女があまりに自然に周りと溶け込んでいるから、異世界から来たのだという事をすっかり忘れていた。いや、忘れていたかったのかもしれない。
俺だったら大事な家族を置いて別の世界で暮らせるのかと問われ、とてもじゃないが不可能だと素直に答えた。
相手の事をちゃんと考えもせずに想いを伝えたことを恥じる。
ほとんど一目惚れで、あんなに異性を意識したことが無かったから余裕が無かった。
村にもかわいい女の子は居たけど、笑顔を見るだけで胸が締め付けられるような気持になったことはない。
怖がりながら魔物に立ち向かう勇敢さに、いつでも明るく笑ってくれる優しさがたまらなく好きだった。
勇者なんて大役に押しつぶされてしまいそうな時、マリンは俺の心の拠り所だったのだ。
マリンが向こうの世界に帰ってしまうまであと少し。
村へ帰る準備をしながら、いじましくも何度も会いに行ってしまう。
もしかして、もしかしたら、考え直してこっちに残ってくれるって、俺と一緒に居たいって言ってくれるかもしれないなんて期待しながら。
――そしてとうとうマリンが異世界へ帰ってしまう日が来た。
「ジグ、ちょっといい?」
村へ帰るまでの間泊めて貰っている王城の部屋に、マリンが訪ねて来た。
俺は息苦しさ半分、期待半分で扉を開ける。
が、そこにはマリンと一緒にアンヌも居た。
やはり最後まで俺が望むような答えは帰って来ないと知り、拳を握り締める。
「……別れの挨拶か?」
不貞腐れたような声が出てしまい、仕切り直すために咳払いをする。
マリンとアンヌを部屋に招き入れ椅子を勧めた。
「うん。予定通りお城の地下にある魔法陣で帰してもらえるんだって」
「見えてる部分だけでも広いのに地下まであるのね、このお城」
アンヌの楽しそうな声が耳障りで、咎めるようについ睨み付けてしまう。
マリンが帰ってしまう。二度と会えないかもしれないのに随分と機嫌が良いんだな。
「それでね、アンヌも私と一緒に向こうの世界へ行くことになって…」
「え?」
聞き間違いか?
どく、と心臓が嫌な音を立てて大きく跳ねた。
「マリンから向こうの世界の話を聞いてるうちにどうしても見て見たくなったの。空飛ぶ乗り物や馬より早い乗り物があるんだって」
「聖女が召喚できない時、こっちの世界の魔法使いが異世界へ出向くこともあるんだって。だから向こうで暮らす準備はお手の物みたい」
「王様が褒美をくれるって言ってたでしょ?だから思い切って頼んでみたの」
「ふふふ、楽しみね!向こうに行ったら案内してあげたい場所が一杯あるから」
俺を置いて話が進んでいく。
酷い耳鳴りがしてきて、それ以上二人の話を聞きたくないと思ってしまった。
いつの間にこの二人は、お互いを呼び捨てにするほど仲良くなったんだろう。
「――ど、ぅす」
声が掠れ、アンヌにもマリンにも届かず消えた。
まずい、と頭のどこかで警告音がする。
「ッアンヌ、お前、おじさんとおばさんはどうするんだよ」
そうだ、あの二人が一人娘のアンヌを得体の知れない世界にやるなんて許すはずがない。
焦って出たにしては的を射ている意見に自然と口が笑う。
「お父さんとお母さんにはもう手紙で伝えてあるわよ。当たり前じゃない」
「……は?二人は、お前が異世界に行くこと…」
「了承済みだけど。こっちと行き来するのは難しいけど不可能じゃないし連絡も取れるからって言ったら、ならいいって」
ならいいってなんだ。
なんで止めない?
どうしてこいつはいつもそうなんだ。
聖地を巡る旅だって危険だってのに無理やり付いて来て、今度はマリンの住んでた世界に行くだって?
無鉄砲すぎる。
「アンヌ、お前」
「勇者様、失礼いたします。聖女様、アンヌ様、そろそろお時間です」
手を伸ばそうとしたのと同時に城の騎士が入って来る。
アンヌと一緒に村に帰るんだと思ってた。
勇者としての役目が終わったらいつも通り、隣の家にはアンヌが居て……。
「じゃあねジグ。おばさんたちによろしく言っておいて」
晴れやかな笑顔で告げられた別れは、妙に非現実感があった。
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