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あたしはアンヌ。
こっちの世界では杏奈って名前になってる。
陛下と魔術師が戸籍?ってのを用意してくれて、あたしは両親が早くに亡くなってそれなりの遺産が残ってる事になってる。
その遺産って聖地に力を注ぐ旅で貢献した報酬なんだって。
なんだか申し訳ないけど、右も左もわからない世界で生きていくためにはお金大事だから有難く受け取っておく。
髪とか目の色は片親が外人のハーフってことで誤魔化した。
マリンから色々説明は聞いてたけど、あたしが居た世界じゃ見たことのない物ばかりで溢れかえっていた。
王位も無いけど政治家って位があって、爵位はないけどお役所って人たちが領地を治めてる?違うかな。
もっと勉強しないと。
「アンヌ…じゃない杏奈ー!途中まで一緒に行こー!」
「あ、マリン?待って、すぐ行く!」
ここには学校っていう学び舎があって、あたしやマリンの年齢の子はそこに通う義務があるんだって。
あたしは中学校、マリンは高校に言ってるけど、方向が一緒だからよく二人で通ってる。
いきなりこちらの世界の中級クラスの勉強から入っちゃったから大変だけど、マリンとこっちで出来た友達に助けられながらなんとかやっていけてる。
『――ヌ…――あ………ヌ』
「ん?なんの音?」
制服に着替えていると、怪しげな音がどこからともなく聞こえた。
もしかして、これが噂の泥棒?それとも隣のお宅の生活音?
念のため武器になりそうな辞書を手に持ち、音のする方へ足音を立てないようにしながら向かう。
どうやら洗面台の方から聞こえるようだ。
『アンヌ!居ないのか!?』
「え、もしかしてジグ?」
聞き覚えのある声に警戒が薄れる。
洗面台の鏡にジグが映っていて、どうやら向こうからの連絡のようだと気付いた。
あっちの世界から魔術師の力を借りてこうやって鏡を使って連絡を取ることが出来る。
ただ条件があるらしく、綺麗な満月の出る日じゃないと駄目なんだとか。
懐かしい顔に手を振って応えると、ジグは複雑そうな表情になった。
「あの、久しぶり」
『……ああ。そうだな。お前俺には連絡くれないからな。久しぶりにもなるだろうな』
役一年ぶりの幼馴染は初手からチクッと嫌味をかましてきた。
確かに連絡しなかったのは悪いかもしれないけど、なかなか派手に失恋した相手だから気まずくて。
「ごめん、今急いでて…大した要件が無いならもういいかな?」
あたしがそう言うとジグは凄く驚いた表情をしていた。
ちょっと素気なくしすぎただろうか。でも急いでいるのは本当なので、せめて機会を改めて欲しいんだよね。
『そんなに、俺が嫌か。他の世界に行くくらいに。俺が……お前じゃなくてマリンを好きになったから』
隠した覚えはないけど、やっぱりジグにもばれてたのか。あたしの気持ち。
ならもっと早く振って欲しかったけど、告白もしてないのに断り様も無かっただろうと思い直す。
「それは関係ないよ。こっちの世界に来たのはマリンの話を聞いて興味を持ったからだし」
『なら!…なら、もういいだろ…そろそろ帰ってこい。おばさんたちも寂しそうにしてる』
あ、卑怯。って瞬時に過った。
そこで親引き合いに出すなんて。
「まだ帰らないよ、そんなの。全然やりたい事も学びたい事も沢山残ってるのに」
『……それは、俺より大切か?俺が、結婚しようって言ったら、お前どうする』
「え、いや、どうするって……えっ?結婚!?」
いきなりなに?
一事が万事意味の分からないことを言うジグに困惑する。
『マリンのことは何とか諦めが付いたけど、お前の事は諦めるとか、そういうの想像もできない。生まれてからずっとアンヌが居ない日常なんてなかったから。当たり前に居るもんだと思ってたから。頼むからもう…帰ってこい。傍に居ないと落ち着かないんだ』
苦しそうに吐き出される告白。
ジグが鏡にそっと手を添えた。
確かにあたしはジグに想いを伝えていなかったけど、かなり綺麗にあたしを失恋させたのだ。だってあの頃のジグは如何にもマリン以外眼中にないって感じだったし。
今更こんな風に言われても、気持ちを切り替えた後だから困ってしまう。
「ごめんなさい。ジグの気持ちには応えられない。そういう話をするならもう連絡は寄越さないで」
『っ、アンヌ!?』
がん、と鏡をジグが叩いた。
こちらに来ようとでも思ったのだろうか。向こうの鏡にヒビが入ったのが最後に映り、映像が終わった。
「安奈ってば!遅刻するよ!?」
「あ、ごめんごめん!今行く!」
気持ちを切り替えるようにマリンに返事をする。
色々とすれ違っていなければ、今頃ジグと結婚していたのだろうか。
今の生活が楽しすぎて、考えつかないな。
こっちの世界では杏奈って名前になってる。
陛下と魔術師が戸籍?ってのを用意してくれて、あたしは両親が早くに亡くなってそれなりの遺産が残ってる事になってる。
その遺産って聖地に力を注ぐ旅で貢献した報酬なんだって。
なんだか申し訳ないけど、右も左もわからない世界で生きていくためにはお金大事だから有難く受け取っておく。
髪とか目の色は片親が外人のハーフってことで誤魔化した。
マリンから色々説明は聞いてたけど、あたしが居た世界じゃ見たことのない物ばかりで溢れかえっていた。
王位も無いけど政治家って位があって、爵位はないけどお役所って人たちが領地を治めてる?違うかな。
もっと勉強しないと。
「アンヌ…じゃない杏奈ー!途中まで一緒に行こー!」
「あ、マリン?待って、すぐ行く!」
ここには学校っていう学び舎があって、あたしやマリンの年齢の子はそこに通う義務があるんだって。
あたしは中学校、マリンは高校に言ってるけど、方向が一緒だからよく二人で通ってる。
いきなりこちらの世界の中級クラスの勉強から入っちゃったから大変だけど、マリンとこっちで出来た友達に助けられながらなんとかやっていけてる。
『――ヌ…――あ………ヌ』
「ん?なんの音?」
制服に着替えていると、怪しげな音がどこからともなく聞こえた。
もしかして、これが噂の泥棒?それとも隣のお宅の生活音?
念のため武器になりそうな辞書を手に持ち、音のする方へ足音を立てないようにしながら向かう。
どうやら洗面台の方から聞こえるようだ。
『アンヌ!居ないのか!?』
「え、もしかしてジグ?」
聞き覚えのある声に警戒が薄れる。
洗面台の鏡にジグが映っていて、どうやら向こうからの連絡のようだと気付いた。
あっちの世界から魔術師の力を借りてこうやって鏡を使って連絡を取ることが出来る。
ただ条件があるらしく、綺麗な満月の出る日じゃないと駄目なんだとか。
懐かしい顔に手を振って応えると、ジグは複雑そうな表情になった。
「あの、久しぶり」
『……ああ。そうだな。お前俺には連絡くれないからな。久しぶりにもなるだろうな』
役一年ぶりの幼馴染は初手からチクッと嫌味をかましてきた。
確かに連絡しなかったのは悪いかもしれないけど、なかなか派手に失恋した相手だから気まずくて。
「ごめん、今急いでて…大した要件が無いならもういいかな?」
あたしがそう言うとジグは凄く驚いた表情をしていた。
ちょっと素気なくしすぎただろうか。でも急いでいるのは本当なので、せめて機会を改めて欲しいんだよね。
『そんなに、俺が嫌か。他の世界に行くくらいに。俺が……お前じゃなくてマリンを好きになったから』
隠した覚えはないけど、やっぱりジグにもばれてたのか。あたしの気持ち。
ならもっと早く振って欲しかったけど、告白もしてないのに断り様も無かっただろうと思い直す。
「それは関係ないよ。こっちの世界に来たのはマリンの話を聞いて興味を持ったからだし」
『なら!…なら、もういいだろ…そろそろ帰ってこい。おばさんたちも寂しそうにしてる』
あ、卑怯。って瞬時に過った。
そこで親引き合いに出すなんて。
「まだ帰らないよ、そんなの。全然やりたい事も学びたい事も沢山残ってるのに」
『……それは、俺より大切か?俺が、結婚しようって言ったら、お前どうする』
「え、いや、どうするって……えっ?結婚!?」
いきなりなに?
一事が万事意味の分からないことを言うジグに困惑する。
『マリンのことは何とか諦めが付いたけど、お前の事は諦めるとか、そういうの想像もできない。生まれてからずっとアンヌが居ない日常なんてなかったから。当たり前に居るもんだと思ってたから。頼むからもう…帰ってこい。傍に居ないと落ち着かないんだ』
苦しそうに吐き出される告白。
ジグが鏡にそっと手を添えた。
確かにあたしはジグに想いを伝えていなかったけど、かなり綺麗にあたしを失恋させたのだ。だってあの頃のジグは如何にもマリン以外眼中にないって感じだったし。
今更こんな風に言われても、気持ちを切り替えた後だから困ってしまう。
「ごめんなさい。ジグの気持ちには応えられない。そういう話をするならもう連絡は寄越さないで」
『っ、アンヌ!?』
がん、と鏡をジグが叩いた。
こちらに来ようとでも思ったのだろうか。向こうの鏡にヒビが入ったのが最後に映り、映像が終わった。
「安奈ってば!遅刻するよ!?」
「あ、ごめんごめん!今行く!」
気持ちを切り替えるようにマリンに返事をする。
色々とすれ違っていなければ、今頃ジグと結婚していたのだろうか。
今の生活が楽しすぎて、考えつかないな。
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見て貰う、頼る気満々だった。
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自分はマリンに全力で尻尾を振り
そっちしか見る気がないけど
アンナはお人好しに
そんな俺でも面倒は見ろよ!
…と言う傲慢な気持ちで居たんじゃないかと
ジグとアンナは
ジグがかなり一方的に搾取してる関係だった
と思う。
アンナの愛情と世話焼きな性格が
成立させてただけの。
ジグが聖地巡りの際にマリンが居ても
恋人としてでなくともアンナの献身に感謝し、
ちゃんとアンナを労ってれば
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あの結果はマストですよね。
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居なくなったアンナについて
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ジグの発言に
アンナはジグにバレてたと感じてたけど
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