169 / 291
それぞれの想い(6)
しおりを挟む
彼の気迫に押されて私は、座ったままジリジリと後退りしたくなった。腕を掴んだエンはそれを許してくれなかったが。
「アンタの傍に居たい」
「エン」
「触れたい」
「あのね……」
「心が欲しい」
「待って、そんなに急いで答えを出さないで」
「無理だ」
言ってエンは私を草の上に押し倒した。
またか~~~~!!!! エリアス、アルクナイト、ルパートに続いてこれで四人目だよ。性急な男どもと、危険を学習しない私。どっちも大馬鹿だ。
「エン、どきなさい。私の気持ちを無視してコトを進めないで!」
私は自分の上に圧し掛かる男へ抗議した。
「アンタは俺に恋をしていない」
「……そうだね。友達だと思ってる。でもそれは他の男性にも同じことを言えるよ。私はまだ誰にも恋をしていない。急に何人もの人に告白されて戸惑ってるの。お願いだから考える時間をちょうだい」
私はゆっくりした口調でエンの気を静めようと努めた。しかし彼は既に心を決めてこの場に来ていたのだった。
「悪いがロックウィーナ、アンタの気持ちが固まるまで待っていられない」
「はっ……?」
「グズグズしていたら他の誰かに先を越される。アンタが他の男に抱かれるなんて、そんなことは許せない」
「エン…………?」
私はエンの瞳の中に、若さ故に暴走する狂気を見つけた。この後のことを想像して全身が慄き、私は彼を跳ね除けようとした。
「くっ」
エンの目を狙った私の熊手突きは払い落とされ、もう一方の手はエンの脇に挟まれて動きを封じられた。そして彼は左手で私の服の後ろ襟首を掴み、腰を捻って両脚を前に出して抑え込みの体勢を取った。
これは岩見鈴音の住んでいた「日本」という国に存在する柔道の技だ。箸もそうだが、エンの故郷である東国と日本には共通点がたくさん有った。
「うう~~~~っ」
しばらく私はエンの腕の中でもがいていたが、抑え込みは解けず体力だけが消耗していった。エンは私に怪我をさせずに無力化することに成功したのだ。
「う~~~~……」
やがてぐったりと私から力が抜けたタイミングで、腰部分に熱い何かが触れた。エンの指だった。
「っ!?」
腰に付けていた鞭が外され、少しめくられた私の服の中に彼の手が侵入していたのだ。肌へ直に指が這う感触。私は思わず身をよじった。
「エン、やめて!」
「………………」
眉一つ動かさずに彼は私を見下ろしていた。まるで忍びとして任務に当たっている時のように。
(どうしよう、どうしよう、エンは本気だ……!)
彼は私を抱こうとしていた。
エンの手は私の肌を撫でながら上がってくる。やがて胸部へ到達するだろう。このままでは、なし崩し的に私は彼と肉体関係を持つことになる。
(駄目、そんなことできない!!)
エンが真面目で優しい青年だということは知っている。自分の損得を考えずに、バディのマキアや義兄弟のユーリの為に陰で動く仲間想いの人だ。
好きだよ。だけど私にとってエンは友達なのだ。
恋してない相手に初めては捧げられない。
(大声を出して女性兵士を呼ぼうか!?)
そうしたらエンは兵士達に袋叩きにされるだろう。規律の厳しい王国兵団内で、婦女暴行を働いた者として処罰対象になってしまうのだ。ギルドの仲間もきっと彼を許さない。
それは避けたい。エンさえ考え直してくれたら丸く収まるのだから。
「エン、あなたは私がアルクナイトにキスマークを付けられた時、強引な彼の行動に対して怒ってくれたじゃない」
私は説得を試みた。彼の心に響くことを願って言葉を紡いだ。
「あなたは無理やり女性にこんなことをする人じゃない。今は頭に血が上ってどうかしちゃってるの」
「………………」
「お願い、冷静になって」
「俺は冷静だ。自分が何をしているか理解している」
「エ……」
私の懇願は最悪な形で退けられた。エンの唇によって口を塞がれたのだ。
「!……!……!」
情熱的で長いキス。これによって悲鳴を上げて女性兵士に助けを求めるという、残されていた最終手段も封じられてしまった。
「!!」
エンの指が私の胸の膨らみに触れた。親とは違う、性欲に突き動かされた接触。
増幅された恐怖と、拒絶心。
抵抗できない自分よりも強い男の下で、私の肌は容易く蹂躙されていった。
(嫌、嫌だ、こんなのは嫌……)
絶望が涙を形成しようとしたその時、
「この馬鹿野郎、エン!!!!!!」
怒気を孕んだ声が頭上から降り注いだ。
同時にふっと身体が軽くなり呼吸も楽になった。閉じていた瞼を開けると、上に乗っていたエンが横の草の上に尻餅をついていた。
柔らかい月の光に赤髪がぼんやり照らされていた。
私の危機に駆けつけ、エンを突き飛ばしてくれたマキアがそこに居た。
「アンタの傍に居たい」
「エン」
「触れたい」
「あのね……」
「心が欲しい」
「待って、そんなに急いで答えを出さないで」
「無理だ」
言ってエンは私を草の上に押し倒した。
またか~~~~!!!! エリアス、アルクナイト、ルパートに続いてこれで四人目だよ。性急な男どもと、危険を学習しない私。どっちも大馬鹿だ。
「エン、どきなさい。私の気持ちを無視してコトを進めないで!」
私は自分の上に圧し掛かる男へ抗議した。
「アンタは俺に恋をしていない」
「……そうだね。友達だと思ってる。でもそれは他の男性にも同じことを言えるよ。私はまだ誰にも恋をしていない。急に何人もの人に告白されて戸惑ってるの。お願いだから考える時間をちょうだい」
私はゆっくりした口調でエンの気を静めようと努めた。しかし彼は既に心を決めてこの場に来ていたのだった。
「悪いがロックウィーナ、アンタの気持ちが固まるまで待っていられない」
「はっ……?」
「グズグズしていたら他の誰かに先を越される。アンタが他の男に抱かれるなんて、そんなことは許せない」
「エン…………?」
私はエンの瞳の中に、若さ故に暴走する狂気を見つけた。この後のことを想像して全身が慄き、私は彼を跳ね除けようとした。
「くっ」
エンの目を狙った私の熊手突きは払い落とされ、もう一方の手はエンの脇に挟まれて動きを封じられた。そして彼は左手で私の服の後ろ襟首を掴み、腰を捻って両脚を前に出して抑え込みの体勢を取った。
これは岩見鈴音の住んでいた「日本」という国に存在する柔道の技だ。箸もそうだが、エンの故郷である東国と日本には共通点がたくさん有った。
「うう~~~~っ」
しばらく私はエンの腕の中でもがいていたが、抑え込みは解けず体力だけが消耗していった。エンは私に怪我をさせずに無力化することに成功したのだ。
「う~~~~……」
やがてぐったりと私から力が抜けたタイミングで、腰部分に熱い何かが触れた。エンの指だった。
「っ!?」
腰に付けていた鞭が外され、少しめくられた私の服の中に彼の手が侵入していたのだ。肌へ直に指が這う感触。私は思わず身をよじった。
「エン、やめて!」
「………………」
眉一つ動かさずに彼は私を見下ろしていた。まるで忍びとして任務に当たっている時のように。
(どうしよう、どうしよう、エンは本気だ……!)
彼は私を抱こうとしていた。
エンの手は私の肌を撫でながら上がってくる。やがて胸部へ到達するだろう。このままでは、なし崩し的に私は彼と肉体関係を持つことになる。
(駄目、そんなことできない!!)
エンが真面目で優しい青年だということは知っている。自分の損得を考えずに、バディのマキアや義兄弟のユーリの為に陰で動く仲間想いの人だ。
好きだよ。だけど私にとってエンは友達なのだ。
恋してない相手に初めては捧げられない。
(大声を出して女性兵士を呼ぼうか!?)
そうしたらエンは兵士達に袋叩きにされるだろう。規律の厳しい王国兵団内で、婦女暴行を働いた者として処罰対象になってしまうのだ。ギルドの仲間もきっと彼を許さない。
それは避けたい。エンさえ考え直してくれたら丸く収まるのだから。
「エン、あなたは私がアルクナイトにキスマークを付けられた時、強引な彼の行動に対して怒ってくれたじゃない」
私は説得を試みた。彼の心に響くことを願って言葉を紡いだ。
「あなたは無理やり女性にこんなことをする人じゃない。今は頭に血が上ってどうかしちゃってるの」
「………………」
「お願い、冷静になって」
「俺は冷静だ。自分が何をしているか理解している」
「エ……」
私の懇願は最悪な形で退けられた。エンの唇によって口を塞がれたのだ。
「!……!……!」
情熱的で長いキス。これによって悲鳴を上げて女性兵士に助けを求めるという、残されていた最終手段も封じられてしまった。
「!!」
エンの指が私の胸の膨らみに触れた。親とは違う、性欲に突き動かされた接触。
増幅された恐怖と、拒絶心。
抵抗できない自分よりも強い男の下で、私の肌は容易く蹂躙されていった。
(嫌、嫌だ、こんなのは嫌……)
絶望が涙を形成しようとしたその時、
「この馬鹿野郎、エン!!!!!!」
怒気を孕んだ声が頭上から降り注いだ。
同時にふっと身体が軽くなり呼吸も楽になった。閉じていた瞼を開けると、上に乗っていたエンが横の草の上に尻餅をついていた。
柔らかい月の光に赤髪がぼんやり照らされていた。
私の危機に駆けつけ、エンを突き飛ばしてくれたマキアがそこに居た。
1
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
