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残酷な事実(3)
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「え…………」
マシューが待ったをかけた。
「それって夢の話ですよね?」
「そうだな。だが全員が同じ晩に、同じ内容の夢を見るなど有り得るだろうか」
「全員が同じ……?」
絶句したマシュー。マキアが興奮気味にまくし立てた。
「本当なんです! 神様と言ってもベラルかどうかは判らないし少女の外見でしたが、彼女がロックウィーナと話している所を俺達全員で見ていたんです。朝起きてからエンや先輩達と、夢で聞いた会話の内容を照らし合わせたら完全に一致しました!」
「ロックウィーナと神様が会話……? エン、おまえも見たんだよな? どんな内容だったんだ?」
義兄弟ユーリに問われたエンは夢を思い出しながらゆっくり答えた。
「ロックウィーナはとんでもないことをしたと少女に責められていた」
「とんでもないこと?」
「死ぬ運命だった俺とマキアを救って未来を変えたんだ」
「は……? 死ぬ運命って何だよ、エン」
「それに魔王と先輩達とで協力し合って時間のループを飛び越えた」
「待て、ちょっと待てエン、意味が全く解らねぇ!」
混乱したのはユーリだけではなかった。時間のループを知らないリリアナや聖騎士達もポカンとしていた。
アルクナイトが静かに述べた。
「理解できるまで全てを何度でも説明してやる。長い話となるがな」
「しかし魔王殿、いきなり神と言われても……」
「人間として生まれた男が魔族を従える魔王となったんだ。神が存在していても不思議はあるまい。俺達の住むこの世界はな、奇想天外な小説のようなものなんだ」
「………………」
宣言通り、アルクナイトは丁寧にこれまで遭ったことを話して聞かせた。
荒唐無稽と思われる出来事の数々。だけれどアルクナイトを伝説の魔王だと認めた彼らは、反論をやめて大人しく話に耳を傾けていた。
私はというと、始まりの女神ベラルについて考えていた。
私も宗教には無頓着だったから、ベラルについては神話、おとぎ話に登場するキャラクターくらいにしか思っていなかった。だから少女をベラルと結び付けることをしなかったのだが……。
少女の名前は岩見鈴音だ。ベラルは鈴音のベルから派生した名前なんだと納得した。
「……とまぁ、時間のループについては概ねこんな感じだな。何か意見や質問は有るか?」
一区切りをつけた魔王が聴衆の様子を窺ったが、予想通り全員が茫然としていた。
「質問以前に信じられないんだが……。同じ十日間をグルグル回っていたなんて。それに……俺がエンを殺した未来が有ったなんて」
ユーリが苦しそうに言った。そこはつらいよね、和解して仲間となった今では尚更。
エンが気遣った。
「おまえは雇い主を護るという自分の仕事をこなしただけだ。俺が殺られたのは俺が弱かったからだ」
「………………」
「それに魔王が話したことは全て真実だ。彼とロックウィーナから未来に起きる出来事を聞いていたから、俺はおまえが首領の側近をしていると事前に知っていたんだ」
ユーリが目を瞬いた。
「そうか……。師団長を暗殺しに行った晩、再会したおまえが妙に落ち着いていたのはその為か。おまえの性格なら絶対に動揺しただろうに」
そしてユーリは私をしげしげと眺めた。
「……そう言えばロックウィーナ、おまえはボスが誰だか言い当てていたな。ボスには影武者が何人も居て、顔を特定されないようにしていたのに」
アンダー・ドラゴンの本拠地、公民館へ突入した時のことだね。現場に居たマシューも思い出したようだ。
「そうだ! あの時は不思議だったんだ。王国兵団すら知り得ない情報を、どうしてロックウィーナが知っていたのかって」
エドガーも会話へ参加した。
「キミ達はそれより前にも、見事な手際で首領に繋がる連絡員を捕らえていたな。もしやあれも未来を知っていたからできたことなのか……?」
私は頷いて肯定した。
「そうです。私達は同じ十日間を繰り返していました。私とアルクナイトには前の周回の記憶が残っていたから、悪い結果にならないように動けたんです。その結果マキアとエンを救い、時間のループを打ち破ることにも成功しました」
「記憶に残ってないだけで私もループしていたなんて……。信じられない」
項垂れるリリアナの横で、ギルドマスターが疑問を呈した。
「どうして神は十日間を執拗に繰り返していたんだ……?」
それこそが最大の問題点なのだ。私はアルクナイトを見やった。既に意を決していた彼はとても残酷な事実を告げた。
「神の創造した物語が、その十日間だけだったからだ」
「………………?」
リリアナが可愛らしく首を傾げた。
「どういうことですか?」
「この世界はその十日間しか存在していなかった。だからエンドレスで繰り返すしかなかったんだ」
「はい……?」
ルパートやキース、ループ破壊に参加したメンバーも虚を突かれた表情となった。
「それはおかしいぞ、アル。確かに十日間に閉じ込められはしたが、その前にも後にも世界は存在しているだろう?」
エリアスが訂正を求めたが、アルクナイトは哀しそうに親友を見つめた。
「ループの壁を破ったことで今の新しい世界が始まった。だが十日間の前には何も無かったんだ」
「馬鹿なことを。私は幼少期におまえと出会っているじゃないか」
「実際には出会っていない。その期間は存在しないのだから」
「……え?」
「俺達が友人となった過程、それは神が植え付けた記憶……、設定なんだ」
「何を言っている。……どういうことだ?」
「言った通りの意味だ。俺達が過去だと思っているもの、それは神に刷り込まれた設定であって、実際に体験したものではないんだ」
マシューが待ったをかけた。
「それって夢の話ですよね?」
「そうだな。だが全員が同じ晩に、同じ内容の夢を見るなど有り得るだろうか」
「全員が同じ……?」
絶句したマシュー。マキアが興奮気味にまくし立てた。
「本当なんです! 神様と言ってもベラルかどうかは判らないし少女の外見でしたが、彼女がロックウィーナと話している所を俺達全員で見ていたんです。朝起きてからエンや先輩達と、夢で聞いた会話の内容を照らし合わせたら完全に一致しました!」
「ロックウィーナと神様が会話……? エン、おまえも見たんだよな? どんな内容だったんだ?」
義兄弟ユーリに問われたエンは夢を思い出しながらゆっくり答えた。
「ロックウィーナはとんでもないことをしたと少女に責められていた」
「とんでもないこと?」
「死ぬ運命だった俺とマキアを救って未来を変えたんだ」
「は……? 死ぬ運命って何だよ、エン」
「それに魔王と先輩達とで協力し合って時間のループを飛び越えた」
「待て、ちょっと待てエン、意味が全く解らねぇ!」
混乱したのはユーリだけではなかった。時間のループを知らないリリアナや聖騎士達もポカンとしていた。
アルクナイトが静かに述べた。
「理解できるまで全てを何度でも説明してやる。長い話となるがな」
「しかし魔王殿、いきなり神と言われても……」
「人間として生まれた男が魔族を従える魔王となったんだ。神が存在していても不思議はあるまい。俺達の住むこの世界はな、奇想天外な小説のようなものなんだ」
「………………」
宣言通り、アルクナイトは丁寧にこれまで遭ったことを話して聞かせた。
荒唐無稽と思われる出来事の数々。だけれどアルクナイトを伝説の魔王だと認めた彼らは、反論をやめて大人しく話に耳を傾けていた。
私はというと、始まりの女神ベラルについて考えていた。
私も宗教には無頓着だったから、ベラルについては神話、おとぎ話に登場するキャラクターくらいにしか思っていなかった。だから少女をベラルと結び付けることをしなかったのだが……。
少女の名前は岩見鈴音だ。ベラルは鈴音のベルから派生した名前なんだと納得した。
「……とまぁ、時間のループについては概ねこんな感じだな。何か意見や質問は有るか?」
一区切りをつけた魔王が聴衆の様子を窺ったが、予想通り全員が茫然としていた。
「質問以前に信じられないんだが……。同じ十日間をグルグル回っていたなんて。それに……俺がエンを殺した未来が有ったなんて」
ユーリが苦しそうに言った。そこはつらいよね、和解して仲間となった今では尚更。
エンが気遣った。
「おまえは雇い主を護るという自分の仕事をこなしただけだ。俺が殺られたのは俺が弱かったからだ」
「………………」
「それに魔王が話したことは全て真実だ。彼とロックウィーナから未来に起きる出来事を聞いていたから、俺はおまえが首領の側近をしていると事前に知っていたんだ」
ユーリが目を瞬いた。
「そうか……。師団長を暗殺しに行った晩、再会したおまえが妙に落ち着いていたのはその為か。おまえの性格なら絶対に動揺しただろうに」
そしてユーリは私をしげしげと眺めた。
「……そう言えばロックウィーナ、おまえはボスが誰だか言い当てていたな。ボスには影武者が何人も居て、顔を特定されないようにしていたのに」
アンダー・ドラゴンの本拠地、公民館へ突入した時のことだね。現場に居たマシューも思い出したようだ。
「そうだ! あの時は不思議だったんだ。王国兵団すら知り得ない情報を、どうしてロックウィーナが知っていたのかって」
エドガーも会話へ参加した。
「キミ達はそれより前にも、見事な手際で首領に繋がる連絡員を捕らえていたな。もしやあれも未来を知っていたからできたことなのか……?」
私は頷いて肯定した。
「そうです。私達は同じ十日間を繰り返していました。私とアルクナイトには前の周回の記憶が残っていたから、悪い結果にならないように動けたんです。その結果マキアとエンを救い、時間のループを打ち破ることにも成功しました」
「記憶に残ってないだけで私もループしていたなんて……。信じられない」
項垂れるリリアナの横で、ギルドマスターが疑問を呈した。
「どうして神は十日間を執拗に繰り返していたんだ……?」
それこそが最大の問題点なのだ。私はアルクナイトを見やった。既に意を決していた彼はとても残酷な事実を告げた。
「神の創造した物語が、その十日間だけだったからだ」
「………………?」
リリアナが可愛らしく首を傾げた。
「どういうことですか?」
「この世界はその十日間しか存在していなかった。だからエンドレスで繰り返すしかなかったんだ」
「はい……?」
ルパートやキース、ループ破壊に参加したメンバーも虚を突かれた表情となった。
「それはおかしいぞ、アル。確かに十日間に閉じ込められはしたが、その前にも後にも世界は存在しているだろう?」
エリアスが訂正を求めたが、アルクナイトは哀しそうに親友を見つめた。
「ループの壁を破ったことで今の新しい世界が始まった。だが十日間の前には何も無かったんだ」
「馬鹿なことを。私は幼少期におまえと出会っているじゃないか」
「実際には出会っていない。その期間は存在しないのだから」
「……え?」
「俺達が友人となった過程、それは神が植え付けた記憶……、設定なんだ」
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