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残酷な事実(2)
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ルービックは警戒心を解いていないようだが、ひとまず剣から手を放した。
「……確かに魔王の名に相応しい魔力量だ。だがキミが本当に魔王だとして、何故敵である人類と共に居るのだ」
「俺も人間だ」
アルクナイトが皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……人間?」
「五百年近く前に、このラグゼリア王国で中流家庭の子供として生まれた」
「ええ!? しかし私が習った歴史では魔王アルクナイトは上位魔族から生まれた存在で、だから長寿だと……」
「人間でもな、魔力を上手く体内に循環させれば老化を止められるんだ。その具体的な方法を記した書を王立魔導アカデミーへ寄贈したはずだが、国は禁書として封じたようだな。まぁ魔法の才が無い王侯貴族の連中から見たら、不老長寿の魔術師の存在は脅威以外の何ものでもないのだろう。第二、第三の魔王が誕生するかもしれないからな」
「………………」
「だから国は人間としての俺の記録を抹消し、魔族として後世に伝えたんだ。これでも国に貢献した証として伯爵位を持っていたのだが」
少しだけ国の暗部を覗いた気分になった。
聖騎士達は明らかに動揺していた。彼らの遠い先輩騎士達が三百年前に魔王軍と死闘を繰り広げたのだ。休戦協定を結んでいるとはいえ、魔王は王国兵団にとっての宿敵だ。
「人間だとして、どうしてこちら側に居るんだ?」
エドガーの苦々しい呟きをアルクナイトが拾った。
「俺にはもう人類と戦う気が無い。そこの馬鹿とうっかり友人になってしまったんでな」
魔王の視線の先には勇者が居た。聖騎士達は更に驚くことになった。
「友人って、エリアスさんと!?」
「彼は三百年前の大戦で魔王に大打撃を与えた勇者、アーサー・モルガナンの子孫だろ!?」
エリアスはニッコリと返した。
「ただの友人ではなく、親友だろ? アル」
アルクナイトは居心地悪そうに目線をずらした。絶対に照れている。
「……とまぁ、こういう風に常にコイツは俺の毒気を抜いてくるんだ。人間を恨んでいるのが馬鹿馬鹿しく思えてくるほどにな」
「悩みがある時の俺に対する師団長みたいなモンか……」
マシューがブツブツ言いながら納得していた。ルービックはそれを困った風に一瞥した後、アルクナイトへ最終確認をした。
「本当に、人類とは戦う気が無いんだな?」
「ああ。誓ってやる」
「勇者一族の一員である私も保証しよう。アルのかつての部下には人類を抹殺しようと企む者も居るが、アルは阻止する為に彼らと戦っている」
「魔王軍も一枚岩ではないということか……」
ルービックは側近のエドガーと目を合わせた。エドガーが頷き、聖騎士達は警戒を解いた。
「信用しよう、魔王殿。だがしばらくの間はここだけの話にしておいてくれ。兵団内で発表すれば大混乱が起きるだろうから、慎重な根回しが必要だ」
「行動を共にするおまえ達が知っていればそれでいい」
「しかしそれでは、魔王殿は人類の敵だとずっと思われることになる」
「構わん。人類と戦って大量の死傷者を出した事実は変わらない」
今は人の世界を護る為に身体を張って頑張ってくれているのに。アルクナイトが悪く思われたままなのは嫌だなぁ。
ふと、向かいの席のユーリがアルクナイトに熱視線を送っているのが見えた。
「魔王様は潔いんだな。美しいのは顔と肉体だけではなかったか」
嫌なコメントも付いてきた。危険なフラグが立っている気がする。
「話を戻すが、兵士達は霧の中でどんな目に遭ったのだろうか。視界が利かない状態で魔物に襲われてしまったか」
ルービックが問いかけ、アルクナイトは腕組みをして難しい顔で応じた。
「いいや。兵士は霧に殺されたんだ」
「霧に……?」
「そうだ。霧の中に入った俺の部下は瞬時に身体を分解されてしまった。王国兵達にも同じことが起きたのだろう」
「な……、分解だと!?」
「何だよそれ! 霧が人を喰ったとでも言うのか!?」
会議室の空気がまたもや張り詰めた。皆の恐怖心によって。
「どういう原理なのかは判らん。入って調べることができないのだからな。師団長、国民を決して霧へ近付けさせないように上告しろ」
「……承知した。魔王殿のことは上手く伏せてすぐに騎士団長へ報告する」
引き締まった表情となった聖騎士達へ、今度はアルクナイトの方から質問を投げた。
「おまえ達は神に会ったことが有るか?」
「神?」
ああ、ついに核心に触れる時が来たか。みんなは事実を受け止めることができるのだろうか。私は緊張しながらやり取りを見ていた。
急に話題が変わって面食らったルービックだが、律儀に考えてから答えた。
「それは始祖神ベラルのことだろうか?」
ラグゼリア王国は国民に信仰を強要していない為、一般人は神に祈る習慣があまり無い。長旅や出産の安全祈願程度に留まっている。日々熱心に神に祈りを捧げるのは寺院で奉仕する僧侶くらいだ。
しかし王が代替わりをする戴冠式や、王国兵団が戦地へ兵を派遣する際には、司祭を呼んで始祖神ベラルへ祈りの儀式を執り行う。
ルービックが挙げたのはその女神の名前だ。彼女は私達が住む大陸を創造したと言い伝えられている。
「兵団で何度かベラルの儀式に立ち会ったことは有るが、私自身は無宗教だ。神を近くに感じたことは無い」
「そうか。ケイシーと忍者Ⅱと女装男を除いた俺達はな、全員が神と夢の中で邂逅しているんだ」
「……確かに魔王の名に相応しい魔力量だ。だがキミが本当に魔王だとして、何故敵である人類と共に居るのだ」
「俺も人間だ」
アルクナイトが皮肉めいた笑みを浮かべた。
「……人間?」
「五百年近く前に、このラグゼリア王国で中流家庭の子供として生まれた」
「ええ!? しかし私が習った歴史では魔王アルクナイトは上位魔族から生まれた存在で、だから長寿だと……」
「人間でもな、魔力を上手く体内に循環させれば老化を止められるんだ。その具体的な方法を記した書を王立魔導アカデミーへ寄贈したはずだが、国は禁書として封じたようだな。まぁ魔法の才が無い王侯貴族の連中から見たら、不老長寿の魔術師の存在は脅威以外の何ものでもないのだろう。第二、第三の魔王が誕生するかもしれないからな」
「………………」
「だから国は人間としての俺の記録を抹消し、魔族として後世に伝えたんだ。これでも国に貢献した証として伯爵位を持っていたのだが」
少しだけ国の暗部を覗いた気分になった。
聖騎士達は明らかに動揺していた。彼らの遠い先輩騎士達が三百年前に魔王軍と死闘を繰り広げたのだ。休戦協定を結んでいるとはいえ、魔王は王国兵団にとっての宿敵だ。
「人間だとして、どうしてこちら側に居るんだ?」
エドガーの苦々しい呟きをアルクナイトが拾った。
「俺にはもう人類と戦う気が無い。そこの馬鹿とうっかり友人になってしまったんでな」
魔王の視線の先には勇者が居た。聖騎士達は更に驚くことになった。
「友人って、エリアスさんと!?」
「彼は三百年前の大戦で魔王に大打撃を与えた勇者、アーサー・モルガナンの子孫だろ!?」
エリアスはニッコリと返した。
「ただの友人ではなく、親友だろ? アル」
アルクナイトは居心地悪そうに目線をずらした。絶対に照れている。
「……とまぁ、こういう風に常にコイツは俺の毒気を抜いてくるんだ。人間を恨んでいるのが馬鹿馬鹿しく思えてくるほどにな」
「悩みがある時の俺に対する師団長みたいなモンか……」
マシューがブツブツ言いながら納得していた。ルービックはそれを困った風に一瞥した後、アルクナイトへ最終確認をした。
「本当に、人類とは戦う気が無いんだな?」
「ああ。誓ってやる」
「勇者一族の一員である私も保証しよう。アルのかつての部下には人類を抹殺しようと企む者も居るが、アルは阻止する為に彼らと戦っている」
「魔王軍も一枚岩ではないということか……」
ルービックは側近のエドガーと目を合わせた。エドガーが頷き、聖騎士達は警戒を解いた。
「信用しよう、魔王殿。だがしばらくの間はここだけの話にしておいてくれ。兵団内で発表すれば大混乱が起きるだろうから、慎重な根回しが必要だ」
「行動を共にするおまえ達が知っていればそれでいい」
「しかしそれでは、魔王殿は人類の敵だとずっと思われることになる」
「構わん。人類と戦って大量の死傷者を出した事実は変わらない」
今は人の世界を護る為に身体を張って頑張ってくれているのに。アルクナイトが悪く思われたままなのは嫌だなぁ。
ふと、向かいの席のユーリがアルクナイトに熱視線を送っているのが見えた。
「魔王様は潔いんだな。美しいのは顔と肉体だけではなかったか」
嫌なコメントも付いてきた。危険なフラグが立っている気がする。
「話を戻すが、兵士達は霧の中でどんな目に遭ったのだろうか。視界が利かない状態で魔物に襲われてしまったか」
ルービックが問いかけ、アルクナイトは腕組みをして難しい顔で応じた。
「いいや。兵士は霧に殺されたんだ」
「霧に……?」
「そうだ。霧の中に入った俺の部下は瞬時に身体を分解されてしまった。王国兵達にも同じことが起きたのだろう」
「な……、分解だと!?」
「何だよそれ! 霧が人を喰ったとでも言うのか!?」
会議室の空気がまたもや張り詰めた。皆の恐怖心によって。
「どういう原理なのかは判らん。入って調べることができないのだからな。師団長、国民を決して霧へ近付けさせないように上告しろ」
「……承知した。魔王殿のことは上手く伏せてすぐに騎士団長へ報告する」
引き締まった表情となった聖騎士達へ、今度はアルクナイトの方から質問を投げた。
「おまえ達は神に会ったことが有るか?」
「神?」
ああ、ついに核心に触れる時が来たか。みんなは事実を受け止めることができるのだろうか。私は緊張しながらやり取りを見ていた。
急に話題が変わって面食らったルービックだが、律儀に考えてから答えた。
「それは始祖神ベラルのことだろうか?」
ラグゼリア王国は国民に信仰を強要していない為、一般人は神に祈る習慣があまり無い。長旅や出産の安全祈願程度に留まっている。日々熱心に神に祈りを捧げるのは寺院で奉仕する僧侶くらいだ。
しかし王が代替わりをする戴冠式や、王国兵団が戦地へ兵を派遣する際には、司祭を呼んで始祖神ベラルへ祈りの儀式を執り行う。
ルービックが挙げたのはその女神の名前だ。彼女は私達が住む大陸を創造したと言い伝えられている。
「兵団で何度かベラルの儀式に立ち会ったことは有るが、私自身は無宗教だ。神を近くに感じたことは無い」
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