ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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女神(割とアッサリと)降臨(5)

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☆☆☆


 お部屋改造ビフォーアフターは数時間で完了した。見違えるほど綺麗になった屋根裏部屋を見渡して私達はしばし言葉を失った。
 女のコが好きそうな可愛らしい家具も配置されていた。使用者に配慮してくれたようだ。

「アルクナイト……。修繕工事の為に猫さん達の他にも誰か呼んだの?」
「いや? アイツらだけで全てをこなしたはずだ」
『なーご』

 黒猫三匹が誇らしげに空中を飛び回っていた。

「でも猫さんじゃ釘を打てないんじゃない?」

 いくらS級魔物といえど、あの可愛いまん丸お手々で大工仕事は無理だろう。

「アイツら人型にも変化できるんだぞ? 猫耳と尻尾は残るが」
「なっ」
「ぜひ人型になって下さい!!」

 私以上に鈴音が食い付いた。いや私も見たいけどさ。

「駄目だ。ロックウィーナは面食いだから問題が起きる可能性が有る」

 え。それってつまり人型に変化したぬこ様達はイケメン揃いってこと? くっそう余計に見たい。でも男性陣の視線が冷たく刺さってきたので我慢した。

「もう22時半だ。スズネは眠った方がいいな」

 腕時計を見たルパートに指摘されて鈴音はむくれた。

「私は高校生……、もう16歳です。ちょっとくらい夜更かししても大丈夫」
「えっ、ウソ、12歳くらいかと思ってた!」

 東洋人は若く見えるからねぇ。馬鹿正直にデリカシーの無い発言をしたルパートに代わって、エリアスが優しく鈴音に勧めた。

「明日から忙しくなる。帰宅したギルドマスターや聖騎士達とも面通ししてもらいたいし。今日は早く休んだ方がいい」
「は、はい」
「おやすみスズネ。良い夢を」
「ありがとうございます……。おやすみなさい……」

 エリアスには素直な鈴音であった。白けた表情で大人げない最年長者の魔王が両手を挙げた。

「はいはいお子様はとっとと就寝、大人の我々は撤収するぞー」
「……ちょっと待って、魔王」

 鈴音に呼び止められたアルクナイトは面倒臭そうに振り返った。

「素敵なお部屋をありがとう。……感謝してます」

 鈴音は視線こそ合わせられなかったが魔王に礼を述べた。アルクナイトは数秒間停止していたが、

「ふん」

 再び回れ右をしてさっさと階段へ向かってしまった。素直じゃないなぁ。
 残った私達も鈴音に軽く手を振ってから屋根裏部屋を後にした。

「……拍子抜けしたよ」

 階段を降りながらキースが愚痴た。

「女神に会えたら恨みつらみをぶちまけてやろうと思ったのに、まるっきり普通の女のコなんだもんね」
「ああそれ、俺も思った。何て設定を作ってんだよって文句言うつもりだった」

 ルパートが苦笑してマキアとエンも続いた。

「俺達なんか死ぬ設定でしたからね……。でもスズネを見る限り魔王様の推測通り、小説だと思って悪意なく設定しちゃったんだろうな」
「それで殺される側はたまったモンじゃないが、あんな子供に怒りをぶつける気にはなれないな」

 何だかんだ言ってみんな優しいんだよね。大勢の大人の男で囲って、一人の少女を糾弾することに嫌悪感を抱いてしまったのだろう。

「こうなった以上、迷惑女神にも世界復興に目一杯協力してもらう。多少なりと奇跡の力が使えるようだからな、こき使ってやろう」

 アルクナイトも他のみんなと一緒で鈴音を許していた。本当、素直じゃないな。

「それじゃあ明日から頑張ろうね。おやすみなさい」

 締めの言葉をつむいだ私へ、みんなの「えっ?」と言う視線が集中した。何? 私変なこと言った?

「もう寝るのか?」

 エンが尋ねてきた。

「うん。もうシャワーも歯磨きも済ませたし。他に何かすること有ったっけ?」
「いや……今日は衝撃的な事実がいろいろと明らかになったから、もう少しアンタと語り合いたくて」
「それは俺の台詞だ。どけ、忍者」

 アルクナイトが割り込んできた。

「本日最大の功労者である俺をねぎらえ。たくさん喋って疲れた」
「それはもう言ったじゃない。お疲れ様って」

 その後でちゅーされたんだよね。思い出すと照れるから記憶よどっか行け。

「あんなもので足りるか。キスのおかわりを所望する」
「ふあっ!?」

 一拍置いてから、

「はっ!?」
「へ!?」
「何だと!?」

 男達が騒ぎ出した。あああ馬鹿魔王、言っちゃったよ。

「ちょっと待てエロガッパ。キミは今何と言った?」
「キスだ。キ・ス。おまえの名前とは似て非なるものだ、白」

 アルクナイトは得意げに言った。自分は一歩前に居ると他の男達を牽制したつもりだろう。でもね、残念なお知らせです。私は既にエンとルパートにも唇を奪われているんですよ。抜け駆けキスとデートだから二人は言わないだろうけど。

「ふざけるな魔王!」
「いつだ? いつウィーに触れた!?」

 そのエンとルパートが魔王に詰め寄っていた。おーい。アンタらは責める立場にないだろうに。

「どうせ不意打ちでウィーにキスしたんだろ! アイツは隙が多いからな!」

 不意打ちの帝王ルパートが自分を思いっきり棚に上げていた。

「アル、事と次第によっては許さんぞ」

 エリアスが闘気をまとった。勇者のそれは陽炎かげろうのように揺らめいた。

「ロックウィーナ、部屋に避難した方がいい」
「そうだな。乱闘になりそうだ」

 マキアとユーリが庇うように私をその場から連れ出した。男達の怒号が飛び交う二階独身寮の廊下をそっと進む。マーカス先生や事務の女性職員が自室の扉を少し開けて様子を窺っていた。ごめんねうるさくして。

「ありがとう二人とも」
「いや大変だなおまえも」
「でもどうやって止めたらいいんだろ、みんな強いからさぁ。ユアンさん、いい知恵有る?」
「無いな。静かになるまで俺達も避難してよう」
「だね」

 マキアとユーリはさじを投げた。

「んじゃ俺達も自分の部屋へ戻るからな。困ったことが遭ったら呼びな」
「重ね重ねありがとう。おやすみなさい」

 私は二人に別れを告げて自室の扉を開けた。そして、

「うわあぁぁぁ!! マキア、ユアン助けて!!!!」

 すぐに二人を呼び戻した。

「どうした!?」
「下がっててロックウィーナ!」

 私を押し退けて部屋へ入った二人は目を見張った。簡素なベッドの上に、黒光りする鎧を装着した赤髪の騎士が偉そうに足を組んで座っていたのだ。

「アイツは誰だ? ……強いな」

 ユーリが黒騎士の強さを肌で感じて身構えた。私とマキアは顔を見合わせた。

「ねぇあの人って……」
「うん……」

 二人の声が合わさり、かつて魔王の側近を務めていた男の名を呼んだ。

「ソル?」
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