ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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女神(割とアッサリと)降臨(4)

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 マキアは対象を変え、鈴音に穏やかな口調で話しかけた。

「神様……なんだよね? 敬語使って話した方がいいかな?」
「……ううん、そのままで大丈夫」
「話してくれるかな? どうして魔王様のベッドで寝ていたの?」
「…………。お金が無くて宿屋に泊まれないの。それで冒険者ギルドに泊めてもらおうと思って来たの」
「は? 図々しい」

 すかさず魔王が茶々を入れたが、

「キミも最初は、宿に部屋が取れないと言ってここへ来たんじゃないか」

 キースに冷たく突っ込み返されていた。

「ははは……。外野のことは気にしなくていいからね?」

 マキアの笑顔に鈴音も笑顔で頷いた。弟妹が居るマキアは年下の扱いに慣れている。

「どうして泊まる所が必要なの? 神様には自分の家が無いの?」
「……前は在ったの。私専用の休憩スポットが。でも時間のループが壊された時に、一緒に消えちゃった」
「そうだったんだ……。でも神様なんだから奇跡の力が使えるんじゃない?」
「新しい世界では上手く力が出せないの。ここでの私は部外者だから。それでもわずかに残った奇跡の力を使って、公園でショーをして日銭を稼いで宿屋に連泊していたんだけど……」

 え? 女神様が公園で大道芸を披露してたの?

「アンダー・ドラゴンのせいで治安が悪くなって、王国兵団の取り締まりが厳しくなったの。許可を取っていなかった私のショーは禁止になっちゃった」
「公園ショーで日銭……」
「無許可営業……」
「何してんの女神……」

 話を聞いていたみんなは口をあんぐり開けて呆然としていた。ループ破壊からこっち、鈴音は大変な思いをして暮らしていたみたいだ。

「く、苦労したんだね。そっか、それでお金が無くなっちゃったんだ」
「うん。だから冒険者ギルドでお世話になりたいの」
「それでどうして俺の部屋を選んだんだ」

 また魔王が割り込んだ。

「空き部屋を探していたら、王様が暮らすようなとっても豪華な部屋を見つけて、それでついフラフラ~っと入っちゃった」
「外鍵をかけておいたはずだぞ?」
「奇跡の力で開けたの」
「おまえっ、それ犯罪行為だからな! 奇跡の力をそんなことに使うな!」

 魔王が抗議したが、

「キミも以前、開錠の魔法を使ってロックウィーナの部屋に無断で入ったよね?」

 やっぱり即座にキースに突っ込まれていた。

「なっ、アル、それは本当か!?」
「駄目でしょーよ魔王様!」
「そう言うルパート、キミもピッキングで度々ロックウィーナの部屋に侵入しているよね?」
「ピッキングって……おいルパート、それこそ犯罪行為だろーが!」
「もうしてないから! 落ち着いてエリアスさん、エンも暗器を構えない!!」

 また騒がしくなった。どうしてこのメンバーは静かに話し合いができないんだろう?

「問題は女神さんの部屋をどうするかだよな?」

 冷静な人が居た。ユーリは騒ぐ馬鹿達を放って私へ尋ねた。

「ギルドに空き部屋はまだ在るのか?」
「独身寮はもう満室だね。しばらくスズネは私と同室になるしかないかな……」
「でもそれだとおまえが何かと不便だろ? 一人部屋だから二人だと狭いし」
「でもスズネは女のコだから女の私が保護しないと」
「いいアイデアが有る」

 キースが混ざってきた。

「マーカス先生に部屋を空けてもらって、彼には治療室へ移ってもらえばいいんだよ。治療室は広いし、診察用のベッドが在るから充分暮らせるだろう」
「うーん……、先生が普段使いしているベッドで診察を受けることになるのは少し抵抗が有りますが……、でもそれしか無いですかね」
「いや、それはやめておけ」

 騒ぎの熱が治まったようで、ルパートも会話に参加してきた。

「引っ越したら先生の私物を治療室へ置くことになるだろう? あの人は閲覧注意のヤバイ本をいっぱい持ってるぞ」
「ヤバイとは毒物関係の資料か? マーカスさんは薬師だよな?」

 忍びの習性か、ユーリが毒物に興味を示した。ルパートが重々しく首を横に振った。

「いや違う。ピンク系だ」
「ああ……そっちか」

 治療室がエロ空間になるのは阻止しないとな。マーカス移動が駄目となるとどうしようか?
 ここでアルクナイトが発言した。

「……この建物の三階には屋根裏部屋が在ったよな? そこをこの迷惑女神の部屋としよう」
「在るけど長らく放置されて汚いですよ? 以前雨漏りして屋根と床の一部がフガフガになっちゃったし。掃除と修繕に相当な時間がかかりそうだ」
「俺の部下にやらせればすぐだ。魔法でお片付けパパパのパ。建築のスキルを持っている奴も居るから修繕も可能だ。おいおまえ達、話を聞いていたな?」

 アルクナイトが天井へ向かって声をかけた。見上げるとそこには……、翼を生やした三匹の黒い猫がパタパタ飛んでいた。

「きゃあぁ、可愛い!!」
「にゃんこー!」

 私と鈴音のテンションがMAXまで上がった。降りてきて~撫でさせて~。

「こ、これが魔王の使い魔……。上に居ることに今回も気づけなかった」

 エンが悔しそうに肩を落とした。アルクナイトは得意げに言った。

「ふ、未熟者め。まぁコイツらは気配を消せるし、光の屈折率を操作して保護色になれるからな」

 それじゃあ気づけねーよ。でもカワエエ♡

「アルクナイト、猫さん達がお手すきの時にぜひ紹介して!」
「いいとも」

 魔王はニヤリと笑った。

「俺の部屋に来ればいつでも紹介してやるぞ、ロウィー」

 凄く凄くよこしまな香りがしたので遠慮することにした。
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