269 / 291
リーベルトには戻れない(2)
しおりを挟む
「俺もあっち側へ行きたかった……。焦らずに彼女との距離を少しずつ詰められていたら今頃は……」(ちんこ菌保持忍者)
「俺は出会う時期が遅かったからな~。不利だよな」(ちん忍者の兄)
「酒臭くてわるぅござんした。ルパート、おまえの魔法でつむじ風を起こして換気してやったらどうだ?」(怪力キザ勇者)
「ハハ、いいなソレ。まぁ書類も舞うんだけどな」(やさぐれたルパートお兄様)
「俺もう城へ帰ってレンガの数でも数えてようかな……」(乳魔王)
「ルディオ、それは我が王の心をほっこりさせる為に用意したカモミールティーだ。おまえが飲んでどうする!」(気難しそうな黒騎士)
「大丈夫だよソル。僕が何杯でも淹れてあげるから」(余裕のキースお兄様)
昨日の会議では存在する限り戦い抜くとか格好良いことを言っていた彼ら。ソルさんとキースお兄様以外の全員の目が見事に死んでいた。
「あら~急展開。ハハ、あれだけの戦士を一度でグロッキーにするなんて、ロックウィーナはやるなぁ」
渇いた笑いを漏らしたマシュー中隊長は知らないだろう。ここにも失恋して打ちのめされている男が一人居るってことを。
仕事モードに戻ったギルドマスターが中隊長へ確認する。
「彼らは大丈夫です、仕事になったらキッチリできる男達なんで。冒険者ギルドの防衛担当範囲は決まりましたか?」
「ああ、はい。それを伝えに伺ったんでした」
中隊長は会議室の長テーブルにフィースノーの地図を広げて、マスターと街の防衛について話し出した。
僕は書類を作成する事務員として、二人の会話をしっかり聞かなくちゃいけない。だのに速記に集中できなかった。
(僕だって、ずっとずっとウィーお姉様の事が好きだったのに)
財産を狙った義理の母と姉に殺されそうになった僕。助けてくれたお姉様。
お姉様に背負われた時、僕は優しく頼れる彼女に恋をしたんだ。
だけれどそんな素敵なお姉様にはとっくに恋人が居るだろうし、6歳も下の僕なんか相手にされないと思って諦めていた。
(冒険者ギルドへ就職したのはただ純粋に、お姉様に恩返しがしたかったから。自分が助けてもらったあのリーベルトだと明かすつもりは無かった)
でも入ってみて驚いたんだ。ウィーお姉様はルパートお兄様の妨害工作によって、こんなにも魅力的なのにまだ誰とも付き合えていなかった。
人としてはゲスなクソッタレ野郎だけれど、僕は心の中でルパートお兄様をグッジョブと賞賛しまくった。
そして僕は愚かにも夢を見てしまったのだ。いつかお姉様の隣に、男として自分が立つという大それた夢を。
(必死に勉強して、シュターク商会を継げるほど立派になれたなら……。リーベルトに戻ってお姉様に求婚しようと頑張ってきたのに)
僕は馬鹿だ。グズグズしていたせいで何も残らなかった。
「キースお兄様を勃たせてしまうなんて。二重の意味で男として立派に立てたよな、お兄様は!」
「リリアナちゃん、エロいモノローグが口から出ているよ……」
中隊長が小声で咎めた。僕には落ち込むことすら許されないのか。
行動しなかったからキースお兄様のようにはなれず、振られて一緒に落ち込める仲間もできなかった。
こんなことなら陰で頑張らず、堂々と努力をアピールするべきだった。身内から殺されかけたトラウマを克服して仕事に打ち込む、健気で美しい青年実業家オーラをもっと前面に押し出すべきだったんだ。
「僕は中途半端、ちゅうぶらりんだ。ちんこの使い道が無くなって永久にぶらんぶらんだ」
「おいやめろ。俺達が居る世界は小説の中だってことを忘れるな。成人指定を食らいたいのか」
中隊長の注意がキツくなった。どうして僕を責める?
怒られるべきはお姉様に不埒な真似をしたキースお兄様の方だろうに。
過激表現タグが必要なコトを絶対にヤッてるぞ? 小説の世界だというなら二人が結ばれたシーンは二~三ページ前だ。読み返してこい中隊長。話はそれからだ。
「よしみんな注目! 地図を見てくれ」
マスターに呼ばれて全員が長テーブルへ集合した。人混みの中で僕はそっとお姉様へ祝福の言葉を贈った。本当は嫌なんだけど……。
「おめでとうございます、お姉様。キースお兄様とお幸せに」
するとお姉様は照れで肩を竦めて、でも瞳は僕に真っ直ぐ向けて本当に美しく笑ったんだ。
揺るぎない愛。それを見せつけられた気分だった。
そんな顔を見せられたら僕はリーベルトには戻れない。ずっと可愛い妹分で居るしかないじゃないか。
僕は必死に涙を堪えて、精一杯の笑顔をお姉様へお返ししたんだ。
「俺は出会う時期が遅かったからな~。不利だよな」(ちん忍者の兄)
「酒臭くてわるぅござんした。ルパート、おまえの魔法でつむじ風を起こして換気してやったらどうだ?」(怪力キザ勇者)
「ハハ、いいなソレ。まぁ書類も舞うんだけどな」(やさぐれたルパートお兄様)
「俺もう城へ帰ってレンガの数でも数えてようかな……」(乳魔王)
「ルディオ、それは我が王の心をほっこりさせる為に用意したカモミールティーだ。おまえが飲んでどうする!」(気難しそうな黒騎士)
「大丈夫だよソル。僕が何杯でも淹れてあげるから」(余裕のキースお兄様)
昨日の会議では存在する限り戦い抜くとか格好良いことを言っていた彼ら。ソルさんとキースお兄様以外の全員の目が見事に死んでいた。
「あら~急展開。ハハ、あれだけの戦士を一度でグロッキーにするなんて、ロックウィーナはやるなぁ」
渇いた笑いを漏らしたマシュー中隊長は知らないだろう。ここにも失恋して打ちのめされている男が一人居るってことを。
仕事モードに戻ったギルドマスターが中隊長へ確認する。
「彼らは大丈夫です、仕事になったらキッチリできる男達なんで。冒険者ギルドの防衛担当範囲は決まりましたか?」
「ああ、はい。それを伝えに伺ったんでした」
中隊長は会議室の長テーブルにフィースノーの地図を広げて、マスターと街の防衛について話し出した。
僕は書類を作成する事務員として、二人の会話をしっかり聞かなくちゃいけない。だのに速記に集中できなかった。
(僕だって、ずっとずっとウィーお姉様の事が好きだったのに)
財産を狙った義理の母と姉に殺されそうになった僕。助けてくれたお姉様。
お姉様に背負われた時、僕は優しく頼れる彼女に恋をしたんだ。
だけれどそんな素敵なお姉様にはとっくに恋人が居るだろうし、6歳も下の僕なんか相手にされないと思って諦めていた。
(冒険者ギルドへ就職したのはただ純粋に、お姉様に恩返しがしたかったから。自分が助けてもらったあのリーベルトだと明かすつもりは無かった)
でも入ってみて驚いたんだ。ウィーお姉様はルパートお兄様の妨害工作によって、こんなにも魅力的なのにまだ誰とも付き合えていなかった。
人としてはゲスなクソッタレ野郎だけれど、僕は心の中でルパートお兄様をグッジョブと賞賛しまくった。
そして僕は愚かにも夢を見てしまったのだ。いつかお姉様の隣に、男として自分が立つという大それた夢を。
(必死に勉強して、シュターク商会を継げるほど立派になれたなら……。リーベルトに戻ってお姉様に求婚しようと頑張ってきたのに)
僕は馬鹿だ。グズグズしていたせいで何も残らなかった。
「キースお兄様を勃たせてしまうなんて。二重の意味で男として立派に立てたよな、お兄様は!」
「リリアナちゃん、エロいモノローグが口から出ているよ……」
中隊長が小声で咎めた。僕には落ち込むことすら許されないのか。
行動しなかったからキースお兄様のようにはなれず、振られて一緒に落ち込める仲間もできなかった。
こんなことなら陰で頑張らず、堂々と努力をアピールするべきだった。身内から殺されかけたトラウマを克服して仕事に打ち込む、健気で美しい青年実業家オーラをもっと前面に押し出すべきだったんだ。
「僕は中途半端、ちゅうぶらりんだ。ちんこの使い道が無くなって永久にぶらんぶらんだ」
「おいやめろ。俺達が居る世界は小説の中だってことを忘れるな。成人指定を食らいたいのか」
中隊長の注意がキツくなった。どうして僕を責める?
怒られるべきはお姉様に不埒な真似をしたキースお兄様の方だろうに。
過激表現タグが必要なコトを絶対にヤッてるぞ? 小説の世界だというなら二人が結ばれたシーンは二~三ページ前だ。読み返してこい中隊長。話はそれからだ。
「よしみんな注目! 地図を見てくれ」
マスターに呼ばれて全員が長テーブルへ集合した。人混みの中で僕はそっとお姉様へ祝福の言葉を贈った。本当は嫌なんだけど……。
「おめでとうございます、お姉様。キースお兄様とお幸せに」
するとお姉様は照れで肩を竦めて、でも瞳は僕に真っ直ぐ向けて本当に美しく笑ったんだ。
揺るぎない愛。それを見せつけられた気分だった。
そんな顔を見せられたら僕はリーベルトには戻れない。ずっと可愛い妹分で居るしかないじゃないか。
僕は必死に涙を堪えて、精一杯の笑顔をお姉様へお返ししたんだ。
1
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる