ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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リーベルトには戻れない(2)

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「俺もあっち側へ行きたかった……。焦らずに彼女との距離を少しずつ詰められていたら今頃は……」(ちんこ菌保持忍者)
「俺は出会う時期が遅かったからな~。不利だよな」(ちん忍者の兄)
「酒臭くてわるぅござんした。ルパート、おまえの魔法でつむじ風を起こして換気してやったらどうだ?」(怪力キザ勇者)
「ハハ、いいなソレ。まぁ書類も舞うんだけどな」(やさぐれたルパートお兄様)
「俺もう城へ帰ってレンガの数でも数えてようかな……」(乳魔王)
「ルディオ、それは我が王の心をほっこりさせる為に用意したカモミールティーだ。おまえが飲んでどうする!」(気難しそうな黒騎士)
「大丈夫だよソル。僕が何杯でも淹れてあげるから」(余裕のキースお兄様)

 昨日の会議では存在する限り戦い抜くとか格好良いことを言っていた彼ら。ソルさんとキースお兄様以外の全員の目が見事に死んでいた。

「あら~急展開。ハハ、あれだけの戦士を一度でグロッキーにするなんて、ロックウィーナはやるなぁ」

 渇いた笑いを漏らしたマシュー中隊長は知らないだろう。ここにも失恋して打ちのめされている男が一人居るってことを。
 仕事モードに戻ったギルドマスターが中隊長へ確認する。

「彼らは大丈夫です、仕事になったらキッチリできる男達なんで。冒険者ギルドの防衛担当範囲は決まりましたか?」
「ああ、はい。それを伝えに伺ったんでした」

 中隊長は会議室の長テーブルにフィースノーの地図を広げて、マスターと街の防衛について話し出した。
 僕は書類を作成する事務員として、二人の会話をしっかり聞かなくちゃいけない。だのに速記に集中できなかった。

(僕だって、ずっとずっとウィーお姉様の事が好きだったのに)

 財産を狙った義理の母と姉に殺されそうになった僕。助けてくれたお姉様。
 お姉様に背負われた時、僕は優しく頼れる彼女に恋をしたんだ。
 だけれどそんな素敵なお姉様にはとっくに恋人が居るだろうし、6歳も下の僕なんか相手にされないと思って諦めていた。

(冒険者ギルドへ就職したのはただ純粋に、お姉様に恩返しがしたかったから。自分が助けてもらったあのリーベルトだと明かすつもりは無かった)

 でも入ってみて驚いたんだ。ウィーお姉様はルパートお兄様の妨害工作によって、こんなにも魅力的なのにまだ誰とも付き合えていなかった。
 人としてはゲスなクソッタレ野郎だけれど、僕は心の中でルパートお兄様をグッジョブと賞賛しまくった。
 そして僕は愚かにも夢を見てしまったのだ。いつかお姉様の隣に、男として自分が立つという大それた夢を。

(必死に勉強して、シュターク商会を継げるほど立派になれたなら……。リーベルトに戻ってお姉様に求婚しようと頑張ってきたのに)

 僕は馬鹿だ。グズグズしていたせいで何も残らなかった。

「キースお兄様をたせてしまうなんて。二重の意味で男として立派に立てたよな、お兄様は!」
「リリアナちゃん、エロいモノローグが口から出ているよ……」

 中隊長が小声で咎めた。僕には落ち込むことすら許されないのか。
 行動しなかったからキースお兄様のようにはなれず、振られて一緒に落ち込める仲間もできなかった。
 こんなことなら陰で頑張らず、堂々と努力をアピールするべきだった。身内から殺されかけたトラウマを克服して仕事に打ち込む、健気で美しい青年実業家オーラをもっと前面に押し出すべきだったんだ。

「僕は中途半端、ちゅうぶらりんだ。ちんこの使い道が無くなって永久にぶらんぶらんだ」
「おいやめろ。俺達が居る世界は小説の中だってことを忘れるな。成人指定を食らいたいのか」

 中隊長の注意がキツくなった。どうして僕を責める?
 怒られるべきはお姉様に不埒ふらちな真似をしたキースお兄様の方だろうに。
 過激表現タグが必要なコトを絶対にヤッてるぞ? 小説の世界だというなら二人が結ばれたシーンは二~三ページ前だ。読み返してこい中隊長。話はそれからだ。

「よしみんな注目! 地図を見てくれ」

 マスターに呼ばれて全員が長テーブルへ集合した。人混みの中で僕はそっとお姉様へ祝福の言葉を贈った。本当は嫌なんだけど……。

「おめでとうございます、お姉様。キースお兄様とお幸せに」

 するとお姉様は照れで肩をすくめて、でも瞳は僕に真っ直ぐ向けて本当に美しく笑ったんだ。
 揺るぎない愛。それを見せつけられた気分だった。

 そんな顔を見せられたら僕はリーベルトには戻れない。ずっと可愛い妹分で居るしかないじゃないか。
 僕は必死に涙をこらえて、精一杯の笑顔をお姉様へお返ししたんだ。
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