ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
270 / 291

崩壊の足音(1)

しおりを挟む
 ミラとマリナと再会してから一週間。街の出入りができなくなったことで起きた混乱も今は沈静化している。
 一番損害を受けることになったのは旅の行商人達だが、彼らに関しては街の領主であるエディオン家がいくらか助成金を出した上で、一時的に他の仕事を斡旋あっせんしたことで話はついた。
 私達冒険者ギルドは交代で街の見回りを行い、空き時間には個々で訓練に励むという日々を送っていた。今のところ人喰い霧は見えず平穏に過ごせている。三人の聖騎士達と会えなくなったのは寂しいが、連絡員となったミラとマリナの話ではみんな元気にしているそうだ。

 私はキースとの関係がすこぶる順調で浮かれまくっていた。ギルド内で公認の仲となれたようで、セス達はもちろん、街中の依頼を受けに来る冒険者からも祝福の言葉を贈られるほどだ。

 20時55分。約束の時間五分前となった私はいそいそと部屋を出た。もちろんキースの部屋へ向かう為だ。21時からのお部屋デートは私達の日課となっていた。
 もう少しでキースの部屋、という所で左手側の部屋の扉が開き、中からエリアスとルパートが出てきた。

「あ」

 お互いに相手を視認して彼らは笑顔に、私はしまったと表情を強張こわばらせた。

「……こんばんは。お二人一緒でしたか」
「おう。万が一に街へ霧の巨人兵が入り込んだ場合、俺達はエディオン家の私兵と共同戦線を張ることになっただろ? その陣形についてエリアスさんに意見を貰ってたんだ」
「エリアスさんは兵の配置にお詳しいのですか?」

 気ままな冒険勇者の意外な一面。隊列とか関係なく大剣で一刀両断にするイメージなのに。

「大したことはない。故郷に居た頃に父から少し教授された程度だ」

 なるほど。二人ともこんな遅い時間まで街の為に働いてくれていたのね。感謝しきりだ。

「ちぃっと頭を使ったせいか小腹がいてな、食堂で何かつまもうってことになったんだ。おまえも来いよ」
「それは良いな。ロックウィーナもぜひ一緒に」

 ニコニコと彼らは善意で誘ってくれている。長時間働いてくれた二人をねぎらいたい気持ちは有る。しかし私はキースと約束しているのだ。

「私はお腹がいていないので、今夜は遠慮しておきます」
「飲み物だけでも付き合ってくれよ」
「キミと言う一輪の美しい花が、コーヒーの味をより深めてくれるだろう」
「……すげーなエリアスさん。素面しらふの状態でよくそんな歯が浮く台詞せりふを言えるもんだ」

 お断りすることには罪悪感を覚えるが、キースが私を待ってくれているのだから彼らとは行けないや。

「ごめんなさい、実は用事が有りまして……」

 その瞬間二人の目つきがキッと鋭くなった。ひぇ!?

「キース殿に逢いに行くのだな」
「ヤル気か。今夜もヤル気かおまえらは」

 女性に対して何てことを言うのよ。ヤル気だけどさ。

「そこら辺は……ノーコメントで」
「ロックウィーナ……」

 エリアスが大げさな動作でふぅ~っと息を吐いた。彼の芝居がかった言動にはもう慣れた。

「初めてのだから仕方が無いのかもしれないが……」
「いやウィーの初恋は俺。そこんとこ間違えないように」

 即座にルパートの訂正が入った。エリアスは面倒くせぇなコイツ、という風に眉をひそめたがちゃんと言い直した。

「初めてのだからのぼせ上ってしまうのも無理はない。だが程々にな」
「そうそう、頻繫に逢うよりも時々の方が長続きするもんなんだぞ?」

 男達はアドバイスを装ってお部屋デートを邪魔するつもりだ。ここ数日間は舌打ちや呪詛の言葉がだいぶ減った(ゼロではない)ので、諦めムードに入ってくれたのだと思っていたが甘かった。

「仕事中は先輩後輩の関係を崩していないのだから、勤務時間外は自由にさせて下さいよ」
「でも毎晩逢っているのだろう? …………毎晩」

 エリアスは自分で言って自分でダメージを受けていた。しかしすぐに立ち直り、立てた人差し指をチッチッチッと揺らして私へ言った。
 
「女性からあまりベッタリされると、男は重く感じてしまう場合が有るんだ」
「あ~重たいのは勘弁だな。逆にそっけない態度を取られたら燃えるかも。大人になるとさ、付かず離れずの小悪魔ちゃんタイプにグッときたりするんだよな」
「凄く解るぞルパート。そういう訳でロックウィーナ、キース殿にはなるべく塩対応で」

 呆れて私がポカンとしていると、端の部屋の扉が開いた。キースだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...