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崩壊の足音(1)
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ミラとマリナと再会してから一週間。街の出入りができなくなったことで起きた混乱も今は沈静化している。
一番損害を受けることになったのは旅の行商人達だが、彼らに関しては街の領主であるエディオン家がいくらか助成金を出した上で、一時的に他の仕事を斡旋したことで話はついた。
私達冒険者ギルドは交代で街の見回りを行い、空き時間には個々で訓練に励むという日々を送っていた。今のところ人喰い霧は見えず平穏に過ごせている。三人の聖騎士達と会えなくなったのは寂しいが、連絡員となったミラとマリナの話ではみんな元気にしているそうだ。
私はキースとの関係がすこぶる順調で浮かれまくっていた。ギルド内で公認の仲となれたようで、セス達はもちろん、街中の依頼を受けに来る冒険者からも祝福の言葉を贈られるほどだ。
20時55分。約束の時間五分前となった私はいそいそと部屋を出た。もちろんキースの部屋へ向かう為だ。21時からのお部屋デートは私達の日課となっていた。
もう少しでキースの部屋、という所で左手側の部屋の扉が開き、中からエリアスとルパートが出てきた。
「あ」
お互いに相手を視認して彼らは笑顔に、私はしまったと表情を強張らせた。
「……こんばんは。お二人一緒でしたか」
「おう。万が一に街へ霧の巨人兵が入り込んだ場合、俺達はエディオン家の私兵と共同戦線を張ることになっただろ? その陣形についてエリアスさんに意見を貰ってたんだ」
「エリアスさんは兵の配置にお詳しいのですか?」
気ままな冒険勇者の意外な一面。隊列とか関係なく大剣で一刀両断にするイメージなのに。
「大したことはない。故郷に居た頃に父から少し教授された程度だ」
なるほど。二人ともこんな遅い時間まで街の為に働いてくれていたのね。感謝しきりだ。
「ちぃっと頭を使ったせいか小腹が空いてな、食堂で何か摘もうってことになったんだ。おまえも来いよ」
「それは良いな。ロックウィーナもぜひ一緒に」
ニコニコと彼らは善意で誘ってくれている。長時間働いてくれた二人を労いたい気持ちは有る。しかし私はキースと約束しているのだ。
「私はお腹が空いていないので、今夜は遠慮しておきます」
「飲み物だけでも付き合ってくれよ」
「キミと言う一輪の美しい花が、コーヒーの味をより深めてくれるだろう」
「……すげーなエリアスさん。素面の状態でよくそんな歯が浮く台詞を言えるもんだ」
お断りすることには罪悪感を覚えるが、キースが私を待ってくれているのだから彼らとは行けないや。
「ごめんなさい、実は用事が有りまして……」
その瞬間二人の目つきがキッと鋭くなった。ひぇ!?
「キース殿に逢いに行くのだな」
「ヤル気か。今夜もヤル気かおまえらは」
女性に対して何てことを言うのよ。ヤル気だけどさ。
「そこら辺は……ノーコメントで」
「ロックウィーナ……」
エリアスが大げさな動作でふぅ~っと息を吐いた。彼の芝居がかった言動にはもう慣れた。
「初めての恋だから仕方が無いのかもしれないが……」
「いやウィーの初恋は俺。そこんとこ間違えないように」
即座にルパートの訂正が入った。エリアスは面倒くせぇなコイツ、という風に眉を顰めたがちゃんと言い直した。
「初めての交際だからのぼせ上ってしまうのも無理はない。だが程々にな」
「そうそう、頻繫に逢うよりも時々の方が長続きするもんなんだぞ?」
男達はアドバイスを装ってお部屋デートを邪魔するつもりだ。ここ数日間は舌打ちや呪詛の言葉がだいぶ減った(ゼロではない)ので、諦めムードに入ってくれたのだと思っていたが甘かった。
「仕事中は先輩後輩の関係を崩していないのだから、勤務時間外は自由にさせて下さいよ」
「でも毎晩逢っているのだろう? …………毎晩」
エリアスは自分で言って自分でダメージを受けていた。しかしすぐに立ち直り、立てた人差し指をチッチッチッと揺らして私へ言った。
「女性からあまりベッタリされると、男は重く感じてしまう場合が有るんだ」
「あ~重たいのは勘弁だな。逆にそっけない態度を取られたら燃えるかも。大人になるとさ、付かず離れずの小悪魔ちゃんタイプにグッときたりするんだよな」
「凄く解るぞルパート。そういう訳でロックウィーナ、キース殿にはなるべく塩対応で」
呆れて私がポカンとしていると、端の部屋の扉が開いた。キースだった。
一番損害を受けることになったのは旅の行商人達だが、彼らに関しては街の領主であるエディオン家がいくらか助成金を出した上で、一時的に他の仕事を斡旋したことで話はついた。
私達冒険者ギルドは交代で街の見回りを行い、空き時間には個々で訓練に励むという日々を送っていた。今のところ人喰い霧は見えず平穏に過ごせている。三人の聖騎士達と会えなくなったのは寂しいが、連絡員となったミラとマリナの話ではみんな元気にしているそうだ。
私はキースとの関係がすこぶる順調で浮かれまくっていた。ギルド内で公認の仲となれたようで、セス達はもちろん、街中の依頼を受けに来る冒険者からも祝福の言葉を贈られるほどだ。
20時55分。約束の時間五分前となった私はいそいそと部屋を出た。もちろんキースの部屋へ向かう為だ。21時からのお部屋デートは私達の日課となっていた。
もう少しでキースの部屋、という所で左手側の部屋の扉が開き、中からエリアスとルパートが出てきた。
「あ」
お互いに相手を視認して彼らは笑顔に、私はしまったと表情を強張らせた。
「……こんばんは。お二人一緒でしたか」
「おう。万が一に街へ霧の巨人兵が入り込んだ場合、俺達はエディオン家の私兵と共同戦線を張ることになっただろ? その陣形についてエリアスさんに意見を貰ってたんだ」
「エリアスさんは兵の配置にお詳しいのですか?」
気ままな冒険勇者の意外な一面。隊列とか関係なく大剣で一刀両断にするイメージなのに。
「大したことはない。故郷に居た頃に父から少し教授された程度だ」
なるほど。二人ともこんな遅い時間まで街の為に働いてくれていたのね。感謝しきりだ。
「ちぃっと頭を使ったせいか小腹が空いてな、食堂で何か摘もうってことになったんだ。おまえも来いよ」
「それは良いな。ロックウィーナもぜひ一緒に」
ニコニコと彼らは善意で誘ってくれている。長時間働いてくれた二人を労いたい気持ちは有る。しかし私はキースと約束しているのだ。
「私はお腹が空いていないので、今夜は遠慮しておきます」
「飲み物だけでも付き合ってくれよ」
「キミと言う一輪の美しい花が、コーヒーの味をより深めてくれるだろう」
「……すげーなエリアスさん。素面の状態でよくそんな歯が浮く台詞を言えるもんだ」
お断りすることには罪悪感を覚えるが、キースが私を待ってくれているのだから彼らとは行けないや。
「ごめんなさい、実は用事が有りまして……」
その瞬間二人の目つきがキッと鋭くなった。ひぇ!?
「キース殿に逢いに行くのだな」
「ヤル気か。今夜もヤル気かおまえらは」
女性に対して何てことを言うのよ。ヤル気だけどさ。
「そこら辺は……ノーコメントで」
「ロックウィーナ……」
エリアスが大げさな動作でふぅ~っと息を吐いた。彼の芝居がかった言動にはもう慣れた。
「初めての恋だから仕方が無いのかもしれないが……」
「いやウィーの初恋は俺。そこんとこ間違えないように」
即座にルパートの訂正が入った。エリアスは面倒くせぇなコイツ、という風に眉を顰めたがちゃんと言い直した。
「初めての交際だからのぼせ上ってしまうのも無理はない。だが程々にな」
「そうそう、頻繫に逢うよりも時々の方が長続きするもんなんだぞ?」
男達はアドバイスを装ってお部屋デートを邪魔するつもりだ。ここ数日間は舌打ちや呪詛の言葉がだいぶ減った(ゼロではない)ので、諦めムードに入ってくれたのだと思っていたが甘かった。
「仕事中は先輩後輩の関係を崩していないのだから、勤務時間外は自由にさせて下さいよ」
「でも毎晩逢っているのだろう? …………毎晩」
エリアスは自分で言って自分でダメージを受けていた。しかしすぐに立ち直り、立てた人差し指をチッチッチッと揺らして私へ言った。
「女性からあまりベッタリされると、男は重く感じてしまう場合が有るんだ」
「あ~重たいのは勘弁だな。逆にそっけない態度を取られたら燃えるかも。大人になるとさ、付かず離れずの小悪魔ちゃんタイプにグッときたりするんだよな」
「凄く解るぞルパート。そういう訳でロックウィーナ、キース殿にはなるべく塩対応で」
呆れて私がポカンとしていると、端の部屋の扉が開いた。キースだった。
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