ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
42 / 291

仮終章 こんな結末は認めない!!!!(2)

しおりを挟む
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 結婚してすぐにエリアスは爵位を受勲し子爵となった。自動的に私は子爵夫人となった。
 ガラじゃないよね? でもそんなことは言っていられない。辺境伯である父親の手伝いをする為に留守がちな夫に代わり、私が国から賜った領地と領民を護らなければ。
 猛勉強をしながら領地管理に奮闘する日々が始まった。

 授かった四人の子供達の育児も加わり、忙しさと騒々しさで目が回りそうだったが、執事やメイド達の献身的な補佐のおかげで何とか乗り切った。
 大変だけれど充実した日々。私は幸せだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ふおぉ!!!! 私ってば将来四人も産むんだ、子だくさんだね!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 エリアスを背負ったあの日、私達の運命は決まっていたのかもしれない。

 お互いに少し老けたが、エリアスは変わらぬ微笑みで私を見つめる。私も彼を見つめ返す。
 この日々が永遠に続くことを、私は願わずにいられない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ……………………。
 ……………………。
 ……………………。

 ずっと続いていたナレーションが止まった。代わりにエリアスと私の結婚式を描いた一枚絵が暗闇に大きく表示された。finの文字と共に。



「……何コレ」

 私はしばらくその絵を見ていたが、そのうちに腹が立ってきた。

「何なのよコレ、馬鹿にしてんの?」

 これでは未来予測というより、まるで恋愛小説のエピローグ部分を読み聞かされたかのようだ。私の大切な人生なのに、ずいぶんと軽く扱われたような不快感が残った。

「ねぇ、あなたは誰よ?」

 私は暗闇へ声をかけた。

「あなたのことよ。もっともらしくナレーションで私の心情を表現してくれた誰かさん」

 そこに居る。そう確信して私は暗闇を睨みつけた。

「私の気持ちを勝手に代弁しないで。そもそも間違ってるから。たとえ二年という歳月が経過しても本当の私ならきっと、マキアとエンのことを引きり続けてる。私達を助ける為に自爆までした友達を忘れて、エリアスさんとの未来を前向きに考えることなんてできない」

 涙が頬を伝う感触が有った。そうだ、この感情こそが真実。
 別れの言葉すら言えなかった友達の死。そんな簡単に吹っ切れるものか。

『受け入れて』

 暗闇から返答が有った。少しエコーがかかっているが、まだ若い女性の声に聞こえた。少女かもしれない。

『エリアスは優しいでしょ? 彼と結婚することであなたは幸せになれるのよ?』
「そうだね、エリアスはとても優しい。彼に不満なんて無いよ」
『だったら……』
「でも、この胸の痛みは消えない」

 暗闇の声はしばし沈黙したが、再び同じ主張を繰り返した。

『エリアスと結ばれることが一番の幸せなのに』
「勝手に決めないで」
『エリアスじゃ駄目なの? 別の人が良いと言うの? キース? ルパート?』
「そういうことじゃない!」

 私に怒鳴りつけられて、謎の声の主は怯《おび》えたようだ。

『怒らないで。あなたまで私に逆らうの?』
「……あなたまで? 他に誰が?」
『アルクナイトよ。彼のせいで私の世界は混乱し始めている』

 魔王が?

「ねぇ、あなたは誰なの?」
『知らなくていい。ロックウィーナ、あなたは私の造った世界でエリアスと幸せに暮らすの。……私のことを思い出さないで』

 造った世界? それに、「思い出さないで」?
 私は以前にもある人物に同じことを言われていた。

「あなたは、夢で出会ったあの少女なの?」
『……余計なことは考えずに、エリアスを受け入れて』
「できない」
『どうして!』
「私の心の大半を占めているのが、マキアとエンが死んだ悲しみだから」

 人の心はそんな単純なものではない。六年前にルパートにフラれたことを未だに吹っ切れていない私だ。マキアとエンのことは生涯忘れないだろう。

『あなたは何を望むの?』
「友達の救出よ。彼らが生きていた時間に戻りたい」
『過去を書き換えたら未来も変わるの。エリアスと結婚することができなくなるかもしれない。それでも?』

 私は暗闇に浮かぶ絵を見据えた。寄り添って幸せそうに笑う二人。

「……それでも。私は友達を救いたい。それが叶うなら一生独身でもいい」

 決意を現す為に私は大声で叫んだ。

「こんな未来は……、こんな結末は認めない!!!!」

 その瞬間、絵がガラスのようにひび割れて粉々になった。そして眩しい光が私の目をくらませたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜

いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。 突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。 この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。 転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。 ※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...