ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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二度目のプロローグ(2)

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 ここから十日後にエンとマキアが死亡する。……何もしなければ。
 少女は「過去を書き換えたら未来も変わる」と言った。ならば前回と違う行動、選択をすれば二人の死を回避できるかもしれない。

「さて、じゃあ街まで戻りましょう。せぇーのっ!」

 エリアスの腕を肩に掛けた私は、腰を跳ね上げて一気に彼を背負った。

「えっ、ええ!?」

 おんぶされたエリアスは私の背中で暴れた。こうなるのは知ってた。二回目だからね。

「なっ、駄目だ、降ろしてくれ! 私は自分で歩ける。女性に背負われるなど……」

 強がっているがエリアスは後日、実はこの時は天に召されそうだったとルパートに打ち明けている。無理はさせられない。

「大人しくして!!」

 私はピシャリと言い放った。

「ご自分の身体なんだから解るでしょう? 貴方の身体は限界なんです。そして負傷者を街まで送り届けるのが私の仕事です」
「だ、だが女性に……。せめてあちらの男性に担がれたい」
「それはできません。ルパート先輩にはモンスターと遭遇した際に、戦ってもらわなければならないので」

 いざという時に荷物は簡単に投げられるが、怪我人を乱暴には扱えないからね。
 以前はすぐに手ぶらになろうとするルパートに苛ついていたが、ガロン荒野やアンダー・ドラゴンのアジトでの彼を見て考えを改めた。ルパートは本気で私や要救助者を護ろうとしてくれた。

「……女性に背負われることに抵抗を感じるエリアスさんのお気持ちは解りますが、どうか私に任せて下さい。これまで私は何人もの男性を背負ってきました。大丈夫です。森を抜けた先に馬車を待たせてありますから、そこまで我慢して下さい。安全な街に着いたら支え役をルパート先輩にバトンタッチします」

 私は背中のエリアスを振り返って微笑んだ。危ない。お互いの顔が接近し過ぎてキスをするところだった。

「じゃ、じゃあ行きますね……」

 高身長で筋肉質な身体はやっぱり重かったが、私はエンとマキアを助けられるかもしれないという希望で気分が高揚していたので、悪路も苦とせずエリアスを搬送した。馬車が待機している地点まであっという間な感覚だった。
 背中からエリアスを降ろす時、背後から一瞬だけ彼に抱きしめられた気がした。


☆☆☆


 翌朝。私は冒険者ギルドの受付カウンター内で報告書を作成しつつ、エリアスの来訪を今か今かと待っていた。
 未来を変えるには私一人の力では不安だ。エリアスもルパートもキースもガッチリ巻き込むつもりだった。

 だからこそ昨晩、業務終了時刻と共にルパートを私の部屋に引っ張り込み、過去をさかのぼったことを説明して彼に協力を求めたのだ。
 しかしルパートは笑いやがった。殺したいほど憎たらしい顔をして、「ウィーちゃん頭大丈夫?」とほざきやがった。
 だから私は言い返した。明日になれば判る。エリアスさんが私に会いに来て、手の甲にキスをして、私と先輩にパーティを組む要請をしてくると。
 私が知っていてルパートの知らない未来を示した。それでも奴はヘラヘラしていたけどね。笑っていなさい、いくら否定してもその時は確実に来るんだから。

「ウィー、エリアスさんは来たかぁ?」

 机に向かう私の頭の上からムカつく声がした。昨日のことを回想していた私は、ルパートによって現在へと引き戻された。

「来ます。そろそろのはずです」
「おまえの手の甲にキスとか……ぷっ。おまえ知らないだろうが、あの人お貴族様だぞ? おまえなんかを相手にするかよ。恋愛小説読み過ぎ」

 私が反論しようとした正にその時……、

「ウィーお姉様ぁ、お姉様に会いたいって人がいらしてますぅ」

 受付嬢リリアナが私を呼んだ。キタ──ッ!! カウンター正面に身なりを整えた貴公子然としたエリアスが立っていた。

「え、アレ誰だ……?」
「エリアスさんですよ」

 私はルパートに余裕の笑みで返した後、いそいそとエリアスの元へ向かった。ルパートも私の後を追ってきた。
 他のギルド客の邪魔にならないように、エリアスを窓の在る壁際へ誘導した。

「ロックウィーナ嬢、昨日は大変世話になった」

 エリアスは右手を胸に当て、左腕を折り曲げて背中に回してお辞儀をした。

「……騎士の挨拶じゃん」

 ルパートが小声で呟いた。先祖が騎士だったというから、勇者の一族モルガナン家では騎士の作法が浸透しているのだろう。
 そしてエリアスは私の右手を取った。いきますか、手の甲にちゅー。私の話を信じていないはずのルパートが身構えた。

 しかしエリアスはキスをせず右膝を折って床に付けた。姫君に忠誠を誓う騎士のように屈んで見せたのだ。やだカッコイイ。
 そして彼は低く響く声で言った。

「レディ、私と結婚してくれ」

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 ……………………あれ? 
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