ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新一幕 勇者と聖騎士と魔王(2)

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☆☆☆


 ミッションで訪れたEランクフィールドにて。エリアス一人の大活躍によって、トロール解体ショーは無事に終了した。
 血の匂いに酔いながら私とルパートは一足先に、トロールが棲息していた洞窟から外の草原へ身体を避難させた。

「風が気持ちいい。あんな血飛沫ちしぶきが舞う光景を見たの久し振りだ……」

 苦い表情で深呼吸しているルパートへ私は近付いた。

「エリアスさんが頑張ってくれたおかげで、予定より早くギルドへ帰れそうですね。先輩、今日はもう用事が有りませんよね?」
「ああ。通常業務はしなくていいらしいからな。何だウィー、俺をデートに誘いたいのかぁ?」

 私は彼のつらい過去の恋愛を知った。戦闘で見直すことも有った。でもやっぱりコイツは基本ムカつく。

「違います。訓練の相手をしてもらいたいんです。私、もっともっと強くなりたいんです」
「素晴らしい心がけだ」

 こたえたのはエリアスだった。遅れて洞窟から出てきた彼は、血糊を布で拭き取った大剣をさやに戻した。

「私で良ければ相手になるぞ?」
「え、いいんですか?」

 ルパートには風の補助魔法という特技が有るが、純粋な剣術勝負ならエリアスの方が腕は上だろう。魔法を使えない私の訓練相手としては最適かもしれない。
 ルパートが茶々を入れた。

「ギルドの訓練場は職員以外使用禁止ですよ?」
「ならここで相手をしよう。モンスターは片付けたし、平坦な草原だ。身体を動かしやすいだろう」
「ぜひ!」

 乗り気な私をルパートが止めた。

「何で急にそんなにヤル気になったんだよ?」
「助けたい人が居るからですよ。夕べ話したでしょう?」

 真っ直ぐ視線を合わしてきた私に対して、ルパートはバツの悪い顔をした。

「レクセン支部に所属しているとかいう、若造のことか……」
「信じられないならレクセンに問い合わせてみて下さい。マキアとエンと言う名の職員が居るかどうか。年齢は23歳と21歳。炎の魔法が得意な魔術師と、クナイと呼ばれる武器を扱う忍者の青年二人組です」

 具体的な情報を出して訴える私にルパートは苦笑した。どうしたら信じてくれるんだろう? 気がいた。

「忍者……。特殊な技能を持つ東方の戦士だな。レディ、その二人がどうかしたのか?」
「いやコイツ、近い未来にその二人が死ぬって昨日から騒いでるんですよ」
「死ぬ……?」

 エリアスは眉をひそめたが私を馬鹿にはしなかった。ルパートとの決定的な違いがこういう所だ。

「どうしてそう思うんだ? 理由を話してもらえるだろうか?」
「……未来で一度見てきたからです」
「未来で?」

 エリアスは私の瞳を覗くように見つめた。私は目をらさずに見つめ返した。

「……レディは噓をいていない。未来を見たとは、正夢か何かか?」

 ああエリアスさん! 流石は一度結ばれた未来の伴侶! 信じてもらえた嬉しさでちょっぴり泣きそうになった。
 もちろんルパートのウンコ野郎は否定してきたが。

「ちょっとちょっとエリアスさんまで! そんな馬鹿げた話を信じるんですか!?」
「作り話じゃありません。レクセン支部のマキアとエンは確実に存在しますから!」
「どうせリリアナに調べてもらったんだろ? それでもっともらしいホラ話で俺を騙して、後でリリアナと笑おうって魂胆だ」

 そこまで暇じゃないわ! このひねくれ者が!
 ……解るけどさ、アンタがひねくれてしまったのは信じていた人に裏切られたせいだって。だからそのことについては触れたくなかった。

「未来で知った情報は他にも有ります」
「何よ?」
「……ルパート先輩は元聖騎士で、風魔法の使い手です」

 ルパートは「えっ」という表情を作ったが、頭を左右に振って打ち消した。

「マスターに聞いたんだな。あのお喋りめ」
「ルパート、キミは聖騎士だったのか?」
「元、ですけどね。ウィー、その程度の情報じゃ未来を見た証明にはならないぞ?」

 うん。だから言わなくちゃいけない。あなたのトラウマを暴露しなくちゃいけない。エリアスさんが居る前で。
 夕べ二人だけの時に、突き詰めて話しておけば良かった。傷付けたくないと遠慮したせいで、今こんなことになっている。
 でもごめんなさい。私には時間が無いの。ここでルパートとエリアス、二人の理解を得ておきたい。

「マスターが知らないことを私は知っています」
「何よ?」
「先輩が騎士団を辞めた理由。マスターには不祥事を起こしたとしか伝えていないでしょう?」
「……ああ」

 私は言った。

「先輩、あなたは結婚を考えていた当時の恋人と、幼馴染みの親友に裏切られたんです。それで騎士だった親友を殴ってお互いに除名処分になってしまった。違いますか?」

 強張こわばったルパートの顔を見た私は、自分のズボンの生地を握って罪悪感と戦った。

「何でっ……」

 ルパートが私に詰め寄った。

「何でおまえがそれを知っている! 誰から聞いた!?」
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