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新一幕 勇者と聖騎士と魔王(3)
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ルパートは私の肩を掴まえてガックンガックン揺らした。わあぁ脳みそがシェイクされるうぅ。
エリアスが間に入ってくれたが、いつもより遠慮がちの制止だった。「恋人と親友に裏切られた」。このフレーズでおおよその事情を察したのだろう。
「言えよ! 誰から聞いたんだ!」
「先輩ですよ!」
揺さ振られて酔いかけたが大声で主張した。
「ルパート先輩が、未来で私に話してくれたんです!」
「そんな馬鹿なことが有ってたまるか!」
「有ったんですよ! ちなみに先輩の悪評が流された時に、味方になって噂を打ち消そうとしてくれたのがルービックさんですね? 現在43歳のエリート聖騎士」
「なっ……、おま、何でルービックさんのことまで知ってんだよ?」
ルパートは明らかに狼狽えていた。ここで畳みかければいけるかもしれない。いや彼を倒したい訳ではないが。
「未来の先輩のご紹介です。私の恋人にルービックさんはどうかって」
「俺が……?」
「ルパート貴様、私のロックウィーナ嬢に男を斡旋しているのか!?」
エリアスがルパートに突っかかった。注目してほしい点はそこじゃない。でもまぁ、私とルパートの微妙な関係を説明するにはいい機会かもね。
「ルパート先輩は過去に私をフッたくせに、私が恋人を作ろうとすると邪魔をするからとっちめたんです。それで未来の先輩は、私の恋人作りに協力する約束をしたんですよ」
「え……」
エリアスが私とルパートの顔を交互に見た。
「ルパートに振られた……? レディ……貴女はルパートが好きだったのか?」
アハハハ。とっても恥ずかしいが、ルパートの過去を暴露したのだから私も潔く認めよう。
「はい。六年前に告白しました。先輩は私の初恋の相手でした」
エリアスが目を剥き、ルパートは照れ臭そうに横を向いた。
「今も……そうなのか?」
らしくない弱い声で尋ねてきたエリアスに、私は明確に答えた。
「いいえ全然。今となっては黒歴史です」
「良かった」
「おい」
胸を撫ぜ下ろしたエリアスは、ルパートを視線で牽制した。
「しかしそうなるとルパートの態度が腑に落ちない。レディを袖にしておいて、どうして付き纏い行為をするんだ?」
「付き纏いって……」
「しているだろう? まるで恋人のようにレディを束縛している。彼女を拒絶したくせに」
「うっ……」
エリアスに問い詰められてタジタジになったルパートはいい気味だが、時間が惜しいので助け舟を出した。
「先輩の私への感情は、妹を心配する兄なんだそうです。それで私に言い寄る男性を吟味しているらしいですよ。すっごい迷惑なんですけどね」
「それはウザいな」
「おい」
「とにかく先輩、これで私が時間を逆行したと信じてもらえましたか? 今の私が知らないはずの情報を持っていたでしょう?」
「でもよ……、そんな夢みたいな話が現実に有る訳ないじゃん」
疑い深い奴め。
「ルパート、レディが話した事柄は全てキミに当てはまるのか?」
「それは……まぁ。でもさ、時間を遡るなんて不可能でしょ?」
「ふむ。レディ、私についての情報は無いか? 未来の私はどうだったか教えてくれ」
未来のエリアスについて……。情報有るけどさ、私と結婚して子供を四人もうけるとか言っちゃっていいの? めっちゃ気まずいんだけど。
「おいウィー、まばたきが異様に多くなってるぞ?」
「目に埃が入っただけです」
「眼球を傷付けたら大変だ。私に見せてごらん」
「どっはぁ!! 近、エリアスさんお顔が近いです! だ、大丈夫、埃はもう取れましたから!」
「おいコラ離れろ!!」
エリアスの不意打ちアップに腰が抜けそうになった。でもショックを受けたおかげで一つ思い出せた。
「エリアスさんのご実家モルガナン家は勇者の一族! 結婚式では指輪じゃなくて短剣を交換するんですよね?」
「!」
エリアスが真顔になった。
「……その通りだ。短剣の交換に立ち会うのは近親者のみで、他の参列者には知らされない情報だ」
「え、マジで……? つーか、何で短剣?」
「互いの覚悟の交換なんだ。親族ではないレディがそれを知っているということは、つまり……」
エリアスは私の左手を自身の両手でそっと包み込んだ。
「未来で貴女は伴侶として、私の隣に並んだんだな」
エリアスさんたら察しが良過ぎぃぃ。私達の結婚式という表現を避けた意味が無―い!!
「ちょっ……何だソレ、俺は認めねぇぞ!」
抗議したルパートにエリアスは冷めた目を向けた。
「どうしてキミの許可が要る。婚姻は私とレディ、二人の間の問題だ」
そうだね。
エリアスは私には素晴らしい笑顔を見せた。
「求婚を承諾してくれてありがとう。これからは婚約者としてロックウィーナと呼ばせてもらおう」
承諾してないです。あくまでも未来の話です。
「呼び方はお好きなように。でもあのっ、結婚について今は考えられません。私には友人を救うという大きな目的が有るんです。その為に時間を遡ってきました」
「それは先ほど聞いた、レクセン支部に居るという二人のことか?」
「そうです。彼らは深緑の月、21日に殉職してしまうんです!」
「今年のか? ……もうすぐだな」
エリアスは周囲を見渡した。草原を涼しい風が通り抜けた。
「少し落ち着いて話そうか。ロックウィーナ、そこに座ろう。ルパートも彼女の話を冷静にもう一度聞いてみるんだ」
ルパートは渋々といった風だったがエリアスに従った。流石に私が持つ情報の多さに不自然さを感じたのだろう。
エリアスが間に入ってくれたが、いつもより遠慮がちの制止だった。「恋人と親友に裏切られた」。このフレーズでおおよその事情を察したのだろう。
「言えよ! 誰から聞いたんだ!」
「先輩ですよ!」
揺さ振られて酔いかけたが大声で主張した。
「ルパート先輩が、未来で私に話してくれたんです!」
「そんな馬鹿なことが有ってたまるか!」
「有ったんですよ! ちなみに先輩の悪評が流された時に、味方になって噂を打ち消そうとしてくれたのがルービックさんですね? 現在43歳のエリート聖騎士」
「なっ……、おま、何でルービックさんのことまで知ってんだよ?」
ルパートは明らかに狼狽えていた。ここで畳みかければいけるかもしれない。いや彼を倒したい訳ではないが。
「未来の先輩のご紹介です。私の恋人にルービックさんはどうかって」
「俺が……?」
「ルパート貴様、私のロックウィーナ嬢に男を斡旋しているのか!?」
エリアスがルパートに突っかかった。注目してほしい点はそこじゃない。でもまぁ、私とルパートの微妙な関係を説明するにはいい機会かもね。
「ルパート先輩は過去に私をフッたくせに、私が恋人を作ろうとすると邪魔をするからとっちめたんです。それで未来の先輩は、私の恋人作りに協力する約束をしたんですよ」
「え……」
エリアスが私とルパートの顔を交互に見た。
「ルパートに振られた……? レディ……貴女はルパートが好きだったのか?」
アハハハ。とっても恥ずかしいが、ルパートの過去を暴露したのだから私も潔く認めよう。
「はい。六年前に告白しました。先輩は私の初恋の相手でした」
エリアスが目を剥き、ルパートは照れ臭そうに横を向いた。
「今も……そうなのか?」
らしくない弱い声で尋ねてきたエリアスに、私は明確に答えた。
「いいえ全然。今となっては黒歴史です」
「良かった」
「おい」
胸を撫ぜ下ろしたエリアスは、ルパートを視線で牽制した。
「しかしそうなるとルパートの態度が腑に落ちない。レディを袖にしておいて、どうして付き纏い行為をするんだ?」
「付き纏いって……」
「しているだろう? まるで恋人のようにレディを束縛している。彼女を拒絶したくせに」
「うっ……」
エリアスに問い詰められてタジタジになったルパートはいい気味だが、時間が惜しいので助け舟を出した。
「先輩の私への感情は、妹を心配する兄なんだそうです。それで私に言い寄る男性を吟味しているらしいですよ。すっごい迷惑なんですけどね」
「それはウザいな」
「おい」
「とにかく先輩、これで私が時間を逆行したと信じてもらえましたか? 今の私が知らないはずの情報を持っていたでしょう?」
「でもよ……、そんな夢みたいな話が現実に有る訳ないじゃん」
疑い深い奴め。
「ルパート、レディが話した事柄は全てキミに当てはまるのか?」
「それは……まぁ。でもさ、時間を遡るなんて不可能でしょ?」
「ふむ。レディ、私についての情報は無いか? 未来の私はどうだったか教えてくれ」
未来のエリアスについて……。情報有るけどさ、私と結婚して子供を四人もうけるとか言っちゃっていいの? めっちゃ気まずいんだけど。
「おいウィー、まばたきが異様に多くなってるぞ?」
「目に埃が入っただけです」
「眼球を傷付けたら大変だ。私に見せてごらん」
「どっはぁ!! 近、エリアスさんお顔が近いです! だ、大丈夫、埃はもう取れましたから!」
「おいコラ離れろ!!」
エリアスの不意打ちアップに腰が抜けそうになった。でもショックを受けたおかげで一つ思い出せた。
「エリアスさんのご実家モルガナン家は勇者の一族! 結婚式では指輪じゃなくて短剣を交換するんですよね?」
「!」
エリアスが真顔になった。
「……その通りだ。短剣の交換に立ち会うのは近親者のみで、他の参列者には知らされない情報だ」
「え、マジで……? つーか、何で短剣?」
「互いの覚悟の交換なんだ。親族ではないレディがそれを知っているということは、つまり……」
エリアスは私の左手を自身の両手でそっと包み込んだ。
「未来で貴女は伴侶として、私の隣に並んだんだな」
エリアスさんたら察しが良過ぎぃぃ。私達の結婚式という表現を避けた意味が無―い!!
「ちょっ……何だソレ、俺は認めねぇぞ!」
抗議したルパートにエリアスは冷めた目を向けた。
「どうしてキミの許可が要る。婚姻は私とレディ、二人の間の問題だ」
そうだね。
エリアスは私には素晴らしい笑顔を見せた。
「求婚を承諾してくれてありがとう。これからは婚約者としてロックウィーナと呼ばせてもらおう」
承諾してないです。あくまでも未来の話です。
「呼び方はお好きなように。でもあのっ、結婚について今は考えられません。私には友人を救うという大きな目的が有るんです。その為に時間を遡ってきました」
「それは先ほど聞いた、レクセン支部に居るという二人のことか?」
「そうです。彼らは深緑の月、21日に殉職してしまうんです!」
「今年のか? ……もうすぐだな」
エリアスは周囲を見渡した。草原を涼しい風が通り抜けた。
「少し落ち着いて話そうか。ロックウィーナ、そこに座ろう。ルパートも彼女の話を冷静にもう一度聞いてみるんだ」
ルパートは渋々といった風だったがエリアスに従った。流石に私が持つ情報の多さに不自然さを感じたのだろう。
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