65 / 291
新四幕 ルパートの焦り(3)
しおりを挟む
エリアスは私をじっと見つめた。
「ロックウィーナ、私もキミと同じだ。生涯を共にする伴侶には心から愛した相手を望む。家を出たのはアルのストーキングから逃れる為だったが、今では広い世界を知れて良かったと思う。何と言ってもロックウィーナ、キミという素晴らしい女性と知り合えた」
それ口説いてますか? 口説いてますよね? 生涯の相手と前置きした上で私と会えて良かっただなんて、遠まわしにもう一度プロポーズしてますよね? 魔王隣りに居るけど。
「確かに世界は広い。エリー、小娘としりとり勝負をしてみろ。常識が覆るぞ」
アルクナイトが無粋な突っ込みを入れて場を白けさせた。エリアスは渋い表情となったが、心臓がバックンバックン跳ねていた私は助かったという気分。勇者にアプローチされても魔王が居る限りは危険な展開にならなくて済みそうだ。
と安心したのも束の間、アルクナイトはその数分後に寝落ちした。お子ちゃまか。エリアスはその魔王をひょいと肩に担ぎ上げると、
「コイツの部屋に放り投げてくる。すぐに戻る」
そう言って部屋を出ていった。そして本当にすぐ戻ってきた。
「お待たせした」
してないです。あっという間でした。宣告通り放り投げてきたんだな。まぁ魔王なら多少乱暴に扱っても壊れたりしないだろう。
エリアスは私の隣りへ腰を下ろした。彼の重みでベッドのスプリングが大きく軋んだ。まだ引っ越してきたばかりなのでエリアスの部屋にはベッドしか置いてない。だから私達はベッドに座って話していた。
(あれ……?)
窓は野営用の敷布をカーテン代わりにして塞いである。密閉された空間に私を好きなエリアスと二人きり。しかもベッドの上。
これって美味しく頂いてもらう為の舞台装置が揃っていませんか?
「ロックウィーナ、今日は危険な目に遭わせてすまない」
伏し目となったエリアスが私の肩を抱いてきた。今度はそっと、優しい力加減で。また心臓がうるさく鳴り響いた。
「キミに怪我が無くて良かった。リーベルトに感謝しないと。だが本来なら私が護らなければいけなかったんだ」
「そんな、それは私の弱さが原因です」
「キミは良い動きをしていた。充分に強い。……だがそれは、あくまでも女性としてなんだ」
「………………」
「決して馬鹿にしている訳ではない。女性と男性とでは骨格も、筋肉の付き方も違う。同じように鍛えたら男の方が強くなるのは当然のことなんだ」
「はい。それは解っています……」
必死に鍛錬を積んでも、私ではエリアスの大剣を振り回すことは永久にできないだろう。
……いやアレ、男の人でも基本できないよね? 振るだけならともかく、一振りでトロールの胴体切断て普通じゃないよね? 無理無理。真似したら肩関節が外れるよ。エリアスが規格外なんだよね?
「あの、エリアスさん」
「……ん?」
エリアスは澄んだ青い瞳で私を見ている。
「私ね、最初は出動班に入るの嫌だったんですよ。リーベルトみたいに受付の仕事がしたかったんです。華が無いからって弾かれちゃいましたけど」
「採用係は見る目が無いな。キミには雪の上に咲いた花のような芯の強い美しさが有る。疲れた冒険者達にとって癒しの存在になっただろうに」
「あはは、ありがとうございます。でもですね、今の私、回収の仕事をけっこう気に入ってるんです。キツイし、モンスターは怖いし、相棒の先輩はウンコだしで大変なんですけどね……」
あ、エリアスの前でウンコって言っちゃった! お願い、ここはスルーして!
「やり甲斐も感じてるんですよ。放っておいたら死んじゃってた人を助けられたり、間に合わなくて死んじゃった人も……遺品を回収できたら、その人が完全に忘れ去られることを防げるから」
「ロックウィーナ……」
エリアスが抱いた私の肩を更に引き寄せた。二人の身体がめちゃくちゃ密着した。ひゃあ。だ、大丈夫、一周目でもハグはされた。それ以上のことはされてないから。
「キミのその志はとても尊い。本音を言うと危険な仕事を辞めて欲しいと思う。だが……キミにそのつもりは無いんだね?」
「はい」
「私がキミにしてやれることは有るか?」
私は笑顔で答えた。
「有ります。私をうんと鍛えて下さい。簡単にやられないように」
「ロックウィーナ……!」
ドサッ。
「!!!」
私はエリアスにベッドの上に押し倒されていた。にゃあ。
真剣な眼差しのエリアスの顔が接近してくる。
これは……もしかしなくてもキス!? 大丈夫じゃなかったよ! ど、どどどどーしよう!?
(駄目だ、怖い!)
心の準備ができていなかった私は、目をギュッと瞑って顔を横へ背けた。身体も震えていたと思う。
「あっ……、すまない、ロックウィーナ!」
すぐ近くでエリアスの焦る声が聞こえた。瞼を開けると、思った以上に至近距離にエリアスの顔が有った。キスされるまであと五センチでした。お互いの息が掛かる。心臓が逝きそう。
「キミを傷付けてしまうところだった。未熟な私を許して欲しい」
エリアスは私の上半身を優しく抱き起した。鼻血出そう。
「怖がらせたな。本当にすまない」
本気で怖かった。真面目な話をしている最中に押し倒されるとは思わなかった。これがルパートの言っていた男の性衝動か。
「ダッ……大丈夫デス」
声が裏返った私は動揺をエリアスに見抜かれた。彼は頭を左右に振った。
「全然大丈夫じゃないよな。すまない」
何度も謝るエリアスへ笑顔を向けて安心させてあげたいのだが、身体中が強張っていて上手く筋肉を動かせなかった。
「ロックウィーナ、私もキミと同じだ。生涯を共にする伴侶には心から愛した相手を望む。家を出たのはアルのストーキングから逃れる為だったが、今では広い世界を知れて良かったと思う。何と言ってもロックウィーナ、キミという素晴らしい女性と知り合えた」
それ口説いてますか? 口説いてますよね? 生涯の相手と前置きした上で私と会えて良かっただなんて、遠まわしにもう一度プロポーズしてますよね? 魔王隣りに居るけど。
「確かに世界は広い。エリー、小娘としりとり勝負をしてみろ。常識が覆るぞ」
アルクナイトが無粋な突っ込みを入れて場を白けさせた。エリアスは渋い表情となったが、心臓がバックンバックン跳ねていた私は助かったという気分。勇者にアプローチされても魔王が居る限りは危険な展開にならなくて済みそうだ。
と安心したのも束の間、アルクナイトはその数分後に寝落ちした。お子ちゃまか。エリアスはその魔王をひょいと肩に担ぎ上げると、
「コイツの部屋に放り投げてくる。すぐに戻る」
そう言って部屋を出ていった。そして本当にすぐ戻ってきた。
「お待たせした」
してないです。あっという間でした。宣告通り放り投げてきたんだな。まぁ魔王なら多少乱暴に扱っても壊れたりしないだろう。
エリアスは私の隣りへ腰を下ろした。彼の重みでベッドのスプリングが大きく軋んだ。まだ引っ越してきたばかりなのでエリアスの部屋にはベッドしか置いてない。だから私達はベッドに座って話していた。
(あれ……?)
窓は野営用の敷布をカーテン代わりにして塞いである。密閉された空間に私を好きなエリアスと二人きり。しかもベッドの上。
これって美味しく頂いてもらう為の舞台装置が揃っていませんか?
「ロックウィーナ、今日は危険な目に遭わせてすまない」
伏し目となったエリアスが私の肩を抱いてきた。今度はそっと、優しい力加減で。また心臓がうるさく鳴り響いた。
「キミに怪我が無くて良かった。リーベルトに感謝しないと。だが本来なら私が護らなければいけなかったんだ」
「そんな、それは私の弱さが原因です」
「キミは良い動きをしていた。充分に強い。……だがそれは、あくまでも女性としてなんだ」
「………………」
「決して馬鹿にしている訳ではない。女性と男性とでは骨格も、筋肉の付き方も違う。同じように鍛えたら男の方が強くなるのは当然のことなんだ」
「はい。それは解っています……」
必死に鍛錬を積んでも、私ではエリアスの大剣を振り回すことは永久にできないだろう。
……いやアレ、男の人でも基本できないよね? 振るだけならともかく、一振りでトロールの胴体切断て普通じゃないよね? 無理無理。真似したら肩関節が外れるよ。エリアスが規格外なんだよね?
「あの、エリアスさん」
「……ん?」
エリアスは澄んだ青い瞳で私を見ている。
「私ね、最初は出動班に入るの嫌だったんですよ。リーベルトみたいに受付の仕事がしたかったんです。華が無いからって弾かれちゃいましたけど」
「採用係は見る目が無いな。キミには雪の上に咲いた花のような芯の強い美しさが有る。疲れた冒険者達にとって癒しの存在になっただろうに」
「あはは、ありがとうございます。でもですね、今の私、回収の仕事をけっこう気に入ってるんです。キツイし、モンスターは怖いし、相棒の先輩はウンコだしで大変なんですけどね……」
あ、エリアスの前でウンコって言っちゃった! お願い、ここはスルーして!
「やり甲斐も感じてるんですよ。放っておいたら死んじゃってた人を助けられたり、間に合わなくて死んじゃった人も……遺品を回収できたら、その人が完全に忘れ去られることを防げるから」
「ロックウィーナ……」
エリアスが抱いた私の肩を更に引き寄せた。二人の身体がめちゃくちゃ密着した。ひゃあ。だ、大丈夫、一周目でもハグはされた。それ以上のことはされてないから。
「キミのその志はとても尊い。本音を言うと危険な仕事を辞めて欲しいと思う。だが……キミにそのつもりは無いんだね?」
「はい」
「私がキミにしてやれることは有るか?」
私は笑顔で答えた。
「有ります。私をうんと鍛えて下さい。簡単にやられないように」
「ロックウィーナ……!」
ドサッ。
「!!!」
私はエリアスにベッドの上に押し倒されていた。にゃあ。
真剣な眼差しのエリアスの顔が接近してくる。
これは……もしかしなくてもキス!? 大丈夫じゃなかったよ! ど、どどどどーしよう!?
(駄目だ、怖い!)
心の準備ができていなかった私は、目をギュッと瞑って顔を横へ背けた。身体も震えていたと思う。
「あっ……、すまない、ロックウィーナ!」
すぐ近くでエリアスの焦る声が聞こえた。瞼を開けると、思った以上に至近距離にエリアスの顔が有った。キスされるまであと五センチでした。お互いの息が掛かる。心臓が逝きそう。
「キミを傷付けてしまうところだった。未熟な私を許して欲しい」
エリアスは私の上半身を優しく抱き起した。鼻血出そう。
「怖がらせたな。本当にすまない」
本気で怖かった。真面目な話をしている最中に押し倒されるとは思わなかった。これがルパートの言っていた男の性衝動か。
「ダッ……大丈夫デス」
声が裏返った私は動揺をエリアスに見抜かれた。彼は頭を左右に振った。
「全然大丈夫じゃないよな。すまない」
何度も謝るエリアスへ笑顔を向けて安心させてあげたいのだが、身体中が強張っていて上手く筋肉を動かせなかった。
2
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる