84 / 291
新七幕 魔王の瞳に映る世界(5)
しおりを挟む
(本来ならエンディングが始まっている頃合いだ。始まらないということは、ループを壊すことができたのか?)
何らかの事情で部下が退却しない限り、俺は……きっとここで死ぬ。相手の数が多過ぎる。
今までは結婚エンディングが始まって、戦いが中断されたから助かっていたのだ。
十日目の先へ進めば、俺への死のカウントダウンが始まる。
それでいいんだ。俺は五百年近く生きてきた。もう充分だ。
ようやく自由を手に入れたエリアスに未来をあげたかった。だから死を覚悟して時間のループを壊す道を選んだ。余計なことをしたと、アイツは怒るだろうがな。
そしてもう一人……ロックウィーナ。彼女と心を通わせてしまったのは大失敗だった。エリアスの為に未来を切り開く、ただその為だけに動いていたというのに。死も恐れてはいなかったというのに。
あの小娘のせいで、俺の中に少しばかり未練と生への執着が生まれてしまった。
「はあぁっ!」
ソルの魔法剣が結界を掠めた。パリンと音がして、俺の肌は凍てつく冷気を体感した。ああ、結界が破られたか。
地上に降りたソルは、次の攻撃で決めに来るだろう。俺も手の平に魔力を集中させて、大魔法を放つ準備に入った。
すまないな、ソル。おまえを道連れにさせてもらう。おまえを生かしておくと人類にとって脅威になりそうだから。
悪かった。俺を信じて付いてきてくれたのに。俺はおまえの望む王にはなれなかったよ。
手の平が熱い。ソルと刺し違えて死ぬと決めた俺は、眼下の世界を改めて見渡した。
美しいな。何てことはない何処にでもある草原だが輝いて見える。
………………………………ん?
草原の端っこに砂煙が立っていた。数は少ないがファイヤーボールも飛んで見える。そして慌てふためく魔物達の悲鳴が上がった。
ドドドドドドドドド!!!!
大剣を構えた俺のよく知る男が草原を大股で駆け抜けていた。その左右にはサポート役として、金髪のチャラい男と覆面で顔を隠した変態が並走していた。
「何だ!?」
突如現れた野蛮人達は一切の情け無しに、ソルが連れてきた軍団員達を血祭りに上げながらこちらへ近付いてくる。
制止しようとAクラスの魔物の集団が動いたので、俺はソル用に準備していた魔法弾をそちらに放った。
「爆ぜ散れ!!」
全ての属性を混ぜ合わせた特殊魔法弾である。大地に接触したソレは、閃光を走らせた後に広範囲の魔物を巻き込んで爆発した。
グゴアァァァァァン!!!!!!
我ながら凄い威力だ。地形と生態系をちょっぴり変えてしまったかもしれない。
「危ねぇ!」
余波が少しチャラ男に届きそうになったが、まぁ大丈夫だろう。ギルドマスターならドンマイドンマイと言っているところかな?
「貴様は……エリアス・モルガナン!」
ソルが剣を奴らに向けて構え直した。
大剣を持った野蛮人は、我らが勇者エリアスだった。プラス愉快な仲間達。
おいおい。何故アイツらがここに居る? どうしてここが判ったんだ? 戦う場所を俺は伝えていないぞ?
重い剣と鎧を装着しながら、草原の端からソルの近くまで到達したエリアスに息の乱れは無い。また体力をつけたのか、化け物め。
ソルは憎々しげにエリアスを凝視した。
「よくも私の前に立てたものだ……!」
ソルは監視でエリアスの顔を知っていたが、エリアスにとってソルは初対面の相手だった。
「すまない、誰だったか?」
「魔王アルクナイトの側近ソルだ!!」
元、な。
「おまえがっ、おまえが私の王を惑わせた! 王の心をよくも盗んだな!!」
うん、まぁそうなんだが……ソル、言い方ってものがあるだろう? ほら、チャラ男がえぇ~って顔をしているぞ? 空に居ても俺は魔眼でみんなの表情が良く見えていた。
「そうか。貴様がこの軍団のリーダーか。ならば斬るまでだ」
戦いにおいて単純明快なエリアスは大剣をかざした。彼の基準は敵か味方か、ただそれだけだ。
「なめるなぁっ!!」
ソルは冷気を纏った剣をエリアスへ振った。
「ふんっ!」
エリアスはソルの剣を自身の大剣で受け止めた。腕力と武器の強度に自信が有る者しかやってはいけない技だ。そして……、
バキンッ。
ソルの剣が粉々に砕けた。ソルは目の前で起こった現象に愕然とした。
「馬鹿な! 私の剣には魔法を付与しているのに!」
あー……そういえばエリアスの剣には魔王対策で、魔法を無力化する印が彫られているんだった。運が悪かったなソル、剣士としての純粋な勝負ではエリアスに軍配が上がるぞ。
タタタタタタと、第一陣よりも軽やかな足音を響かせて第二陣が到着した。白魔術師キースと彼の防御障壁に護られた、小娘と恋愛体質のガキ魔術師だ。
「アルクナイトは!? 彼は何処? 生きてるんでしょ!?」
真っ先に俺の安否を確認する小娘。正直言ってちょっと嬉しかった。
「小娘風情が! 我が王の名を軽々しく口にするなど許され……」
「うるさい! さっさとここに魔王を出しなさいよ!!」
小娘を威嚇しようとしたソルがやり返された。
俺は苦笑して空からゆっくり地上へ降りた。心配してくれた奴らに無事な姿を見せてやらんとな。
何らかの事情で部下が退却しない限り、俺は……きっとここで死ぬ。相手の数が多過ぎる。
今までは結婚エンディングが始まって、戦いが中断されたから助かっていたのだ。
十日目の先へ進めば、俺への死のカウントダウンが始まる。
それでいいんだ。俺は五百年近く生きてきた。もう充分だ。
ようやく自由を手に入れたエリアスに未来をあげたかった。だから死を覚悟して時間のループを壊す道を選んだ。余計なことをしたと、アイツは怒るだろうがな。
そしてもう一人……ロックウィーナ。彼女と心を通わせてしまったのは大失敗だった。エリアスの為に未来を切り開く、ただその為だけに動いていたというのに。死も恐れてはいなかったというのに。
あの小娘のせいで、俺の中に少しばかり未練と生への執着が生まれてしまった。
「はあぁっ!」
ソルの魔法剣が結界を掠めた。パリンと音がして、俺の肌は凍てつく冷気を体感した。ああ、結界が破られたか。
地上に降りたソルは、次の攻撃で決めに来るだろう。俺も手の平に魔力を集中させて、大魔法を放つ準備に入った。
すまないな、ソル。おまえを道連れにさせてもらう。おまえを生かしておくと人類にとって脅威になりそうだから。
悪かった。俺を信じて付いてきてくれたのに。俺はおまえの望む王にはなれなかったよ。
手の平が熱い。ソルと刺し違えて死ぬと決めた俺は、眼下の世界を改めて見渡した。
美しいな。何てことはない何処にでもある草原だが輝いて見える。
………………………………ん?
草原の端っこに砂煙が立っていた。数は少ないがファイヤーボールも飛んで見える。そして慌てふためく魔物達の悲鳴が上がった。
ドドドドドドドドド!!!!
大剣を構えた俺のよく知る男が草原を大股で駆け抜けていた。その左右にはサポート役として、金髪のチャラい男と覆面で顔を隠した変態が並走していた。
「何だ!?」
突如現れた野蛮人達は一切の情け無しに、ソルが連れてきた軍団員達を血祭りに上げながらこちらへ近付いてくる。
制止しようとAクラスの魔物の集団が動いたので、俺はソル用に準備していた魔法弾をそちらに放った。
「爆ぜ散れ!!」
全ての属性を混ぜ合わせた特殊魔法弾である。大地に接触したソレは、閃光を走らせた後に広範囲の魔物を巻き込んで爆発した。
グゴアァァァァァン!!!!!!
我ながら凄い威力だ。地形と生態系をちょっぴり変えてしまったかもしれない。
「危ねぇ!」
余波が少しチャラ男に届きそうになったが、まぁ大丈夫だろう。ギルドマスターならドンマイドンマイと言っているところかな?
「貴様は……エリアス・モルガナン!」
ソルが剣を奴らに向けて構え直した。
大剣を持った野蛮人は、我らが勇者エリアスだった。プラス愉快な仲間達。
おいおい。何故アイツらがここに居る? どうしてここが判ったんだ? 戦う場所を俺は伝えていないぞ?
重い剣と鎧を装着しながら、草原の端からソルの近くまで到達したエリアスに息の乱れは無い。また体力をつけたのか、化け物め。
ソルは憎々しげにエリアスを凝視した。
「よくも私の前に立てたものだ……!」
ソルは監視でエリアスの顔を知っていたが、エリアスにとってソルは初対面の相手だった。
「すまない、誰だったか?」
「魔王アルクナイトの側近ソルだ!!」
元、な。
「おまえがっ、おまえが私の王を惑わせた! 王の心をよくも盗んだな!!」
うん、まぁそうなんだが……ソル、言い方ってものがあるだろう? ほら、チャラ男がえぇ~って顔をしているぞ? 空に居ても俺は魔眼でみんなの表情が良く見えていた。
「そうか。貴様がこの軍団のリーダーか。ならば斬るまでだ」
戦いにおいて単純明快なエリアスは大剣をかざした。彼の基準は敵か味方か、ただそれだけだ。
「なめるなぁっ!!」
ソルは冷気を纏った剣をエリアスへ振った。
「ふんっ!」
エリアスはソルの剣を自身の大剣で受け止めた。腕力と武器の強度に自信が有る者しかやってはいけない技だ。そして……、
バキンッ。
ソルの剣が粉々に砕けた。ソルは目の前で起こった現象に愕然とした。
「馬鹿な! 私の剣には魔法を付与しているのに!」
あー……そういえばエリアスの剣には魔王対策で、魔法を無力化する印が彫られているんだった。運が悪かったなソル、剣士としての純粋な勝負ではエリアスに軍配が上がるぞ。
タタタタタタと、第一陣よりも軽やかな足音を響かせて第二陣が到着した。白魔術師キースと彼の防御障壁に護られた、小娘と恋愛体質のガキ魔術師だ。
「アルクナイトは!? 彼は何処? 生きてるんでしょ!?」
真っ先に俺の安否を確認する小娘。正直言ってちょっと嬉しかった。
「小娘風情が! 我が王の名を軽々しく口にするなど許され……」
「うるさい! さっさとここに魔王を出しなさいよ!!」
小娘を威嚇しようとしたソルがやり返された。
俺は苦笑して空からゆっくり地上へ降りた。心配してくれた奴らに無事な姿を見せてやらんとな。
2
あなたにおすすめの小説
時空の迷い子〜異世界恋愛はラノベだけで十分です〜
いろは
恋愛
20歳ラノベ好きの喪女の春香。いつもの週末の様にラノベを深夜まで読み寝落ちし目覚めたら森の中に。よく読むラノベの様な異世界に転移した。
突然狼に襲われ助けてくれたのは赤髪の超男前。
この男性は公爵家嫡男で公爵家に保護してもらい帰り方を探す事に。
転移した先は女神の嫉妬により男しか生まれない国。どうやら異世界から来た春香は”迷い人”と呼ばれこの国の王子が探しているらしい。”迷い人”である事を隠し困惑しながらも順応しようと奮闘する物語。
※”小説家になろう”で書いた話を改編・追記しました。あちらでは完結しています。よければ覗いてみて下さい
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる