ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新七幕 魔王の瞳に映る世界(4)

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 ソルはすっと立ち上がり宣告をした。

「王よ、お別れです。未来の憂いとならないように、私は貴方をここで討たねばなりません」

 この台詞を聞いたのは十五回目だな。二回エリーと小娘の結婚エンディングを見てループに気付いた俺は、三周目から神のシナリオを狂わせようと積極的に動いた。それからだ。最終日にソルが俺に戦いを挑むようになったのは。
 ソルよ、おまえは自分の意志でここに立っているつもりだろうが、全ては神の計略だぞ? 最終日に俺が余計なことをしないように、おまえは神の手駒として俺の足止めをさせられているんだぞ? 時間のループが存在する限り、世界に未来は訪れないんだぞ?

 ソルが腰の剣に手を伸ばす。
 レクセン支部の若造二人は助かった。もう未来は変わったはずだ。だからソルとの戦いを回避できるのではないかと少し期待したが、どうやら無理なようだな。
 俺は身に付けていたイヤリングと指輪を外して草の上へ放り投げた。アレは強力な封魔アイテムだ。身体中に抑えていた魔力がたぎる。
 そして俺は戦いやすいように本来の姿へ戻る。少年ではなく青年へ。服や靴は魔法繊維で織られており、体型に合わせて大きさが自在に変化する仕様だ。

 ソルは戦いを仕掛けず、懐かしむ瞳で俺の変貌を見守っていた。エリアスと知り合って以来、俺は魔力を抑えてガキの姿を保っていたからな。
 完全に青年の姿へ戻った俺に、ソルは抜いた剣を向けた。

「王よ、貴方を討たねばならぬのは悲しいことです」

 俺もだよソル。でももう終わりにしよう。俺達は古い時代の遺物だ。新しい時代を切り開くのは今を生きる若者に任せよう。

 さあアルクナイト、これが最後の舞台だ。魔王としての矜持きょうじを見せつけた上で、せいぜい華々しく散ってやろうじゃないか。



 最初の一手はソルが放った。奴は冷気を付加した剣を構えて俺へ突進した。燃えるような赤い髪に反して、ソルは水魔法が得意なのだ。
 斜め上からの斬撃。横へ避けた後に空へ飛び退いた俺へ、翼を持つ魔物群が一斉に襲いかかる。

「熱波よ、ぎ払え!!」

 俺が右手を横に大きく振る動きに合わせて、前方に超高温の風が発生した。火属性を持たない五十匹程度の魔物が一瞬にして黒焦げとなった。

「風の刃よ、我が敵を切り刻め!」

 チャラ男が得意とする、かまいたちの魔法だ。当然俺にだって使える。なんせ魔王の前は賢者様。これで残っていた火属性の魔物と、背後から迫ってきていた数十匹の魔物の身体が分断された。

「はぁっ!」

 地上からソルが大ジャンプをして空中の俺まで迫った。氷の剣による水平斬り。これも俺はかわした。ソルは魔法で身体を押し出すジャンプはできても浮遊はできないので、一旦地上へ降りた。
 翼を持たない人間は不便だよな、ソル。魔物も飛ぶ術を持たない者は地上で戦いの行方を見守るしかない。故に浮遊術を使える俺は昔から空を主戦場としているのだ。
 だがエリアスの祖先……、三百年前に俺と戦ったアーサー・モルガナンは弓の名手だった。正確な遠方射撃で上空にまで矢を飛ばしてきやがった。何十本、何百本も。太陽が眩しくて目がくらんでいれば良かったのに。ばーか。

「おっと」

 俺の脇すれすれを、鳥型の魔物が鋭いくちばしを前にして通過していった。過去に想いをせている場合じゃないな。
 更に地上から無数のファイヤーボールが飛んできた。ソルと同様に禁呪に手を出して闇落ちした、人間の魔術師達で結成された部隊が放ったのだろう。
 俺は風魔法でジグザグに飛んで逃れたが、二発のファイヤーボールを避け切れず、身体を護る結界に当ててしまった。様々な攻撃を無効化する便利な結界だが、完全無敵という訳ではない。耐久力が有るのだ。一度破壊されると張り直すのに多少の時間を要する。

「はぁっ!」

 気合い充分、再びソルがジャンプ攻撃を仕掛けてきた。上段斬り……と見せかけて、十数個の氷の弾を発射してきた。魔法剣士ならではの戦法だ。
 回避行動が遅れた俺は、結界で五~六個の弾を受け止めることになった。
 地上に降りたソルを俺は睨んだ。

 一対一なら俺は誰にも負けない。ソル達もそれが解っているから物量作戦に出たのだろう。このまま戦い続ければいずれ結界が破られてしまう。ソル達はその時を待っているのだ。
 くそ、またファイヤーボールが飛んできた。

「大地の杭よ、俺を邪魔する奴らを貫け!」

 火球を避けながら、俺は地上の魔術師部隊へ魔法を放った。盛り上がった大地に魔術師達が跳ね飛ばされていくのが見えた。

「はぁっ!」

 そのタイミングでソルのジャンプ攻撃だ。勤勉すぎるだろおまえ。今度は逃げられず、真正面からソルの魔法剣を結界で受けてしまった。
 ……まだ破られていないな? だが時間の問題だろう。
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