ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新七幕 魔王の瞳に映る世界(5)

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(本来ならエンディングが始まっている頃合いだ。始まらないということは、ループを壊すことができたのか?)

 何らかの事情で部下が退却しない限り、俺は……きっとここで死ぬ。相手の数が多過ぎる。
 今までは結婚エンディングが始まって、戦いが中断されたから助かっていたのだ。
 十日目の先へ進めば、俺への死のカウントダウンが始まる。

 それでいいんだ。俺は五百年近く生きてきた。もう充分だ。
 ようやく自由を手に入れたエリアスに未来をあげたかった。だから死を覚悟して時間のループを壊す道を選んだ。余計なことをしたと、アイツは怒るだろうがな。

 そしてもう一人……ロックウィーナ。彼女と心を通わせてしまったのは大失敗だった。エリアスの為に未来を切り開く、ただその為だけに動いていたというのに。死も恐れてはいなかったというのに。
 あの小娘のせいで、俺の中に少しばかり未練と生への執着が生まれてしまった。

「はあぁっ!」

 ソルの魔法剣が結界をかすめた。パリンと音がして、俺の肌は凍てつく冷気を体感した。ああ、結界が破られたか。
 地上に降りたソルは、次の攻撃で決めに来るだろう。俺も手の平に魔力を集中させて、大魔法を放つ準備に入った。

 すまないな、ソル。おまえを道連れにさせてもらう。おまえを生かしておくと人類にとって脅威になりそうだから。
 悪かった。俺を信じて付いてきてくれたのに。俺はおまえの望む王にはなれなかったよ。

 手の平が熱い。ソルと刺し違えて死ぬと決めた俺は、眼下の世界を改めて見渡した。
 美しいな。何てことはない何処にでもある草原だが輝いて見える。

 ………………………………ん?

 草原の端っこに砂煙が立っていた。数は少ないがファイヤーボールも飛んで見える。そして慌てふためく魔物達の悲鳴が上がった。

 ドドドドドドドドド!!!!

 大剣を構えた俺のよく知る男が草原を大股で駆け抜けていた。その左右にはサポート役として、金髪のチャラい男と覆面で顔を隠した変態が並走していた。

 「何だ!?」

 突如現れた野蛮人達は一切の情け無しに、ソルが連れてきた軍団員達を血祭りに上げながらこちらへ近付いてくる。
 制止しようとAクラスの魔物の集団が動いたので、俺はソル用に準備していた魔法弾をそちらに放った。

ぜ散れ!!」

 全ての属性を混ぜ合わせた特殊魔法弾である。大地に接触したソレは、閃光を走らせた後に広範囲の魔物を巻き込んで爆発した。

 グゴアァァァァァン!!!!!!

 我ながら凄い威力だ。地形と生態系をちょっぴり変えてしまったかもしれない。

「危ねぇ!」

 余波が少しチャラ男に届きそうになったが、まぁ大丈夫だろう。ギルドマスターならドンマイドンマイと言っているところかな?

「貴様は……エリアス・モルガナン!」

 ソルが剣を奴らに向けて構え直した。
 大剣を持った野蛮人は、我らが勇者エリアスだった。プラス愉快な仲間達。
 おいおい。何故アイツらがここに居る? どうしてここが判ったんだ? 戦う場所を俺は伝えていないぞ?

 重い剣と鎧を装着しながら、草原の端からソルの近くまで到達したエリアスに息の乱れは無い。また体力をつけたのか、化け物め。
 ソルは憎々しげにエリアスを凝視した。

「よくも私の前に立てたものだ……!」

 ソルは監視でエリアスの顔を知っていたが、エリアスにとってソルは初対面の相手だった。

「すまない、誰だったか?」
「魔王アルクナイトの側近ソルだ!!」

 元、な。

「おまえがっ、おまえが私の王を惑わせた! 王の心をよくも盗んだな!!」

 うん、まぁそうなんだが……ソル、言い方ってものがあるだろう? ほら、チャラ男がえぇ~って顔をしているぞ? 空に居ても俺は魔眼でみんなの表情が良く見えていた。

「そうか。貴様がこの軍団のリーダーか。ならば斬るまでだ」

 戦いにおいて単純明快なエリアスは大剣をかざした。彼の基準は敵か味方か、ただそれだけだ。

「なめるなぁっ!!」

 ソルは冷気をまとった剣をエリアスへ振った。

「ふんっ!」

 エリアスはソルの剣を自身の大剣で受け止めた。腕力と武器の強度に自信が有る者しかやってはいけない技だ。そして……、

 バキンッ。

 ソルの剣が粉々に砕けた。ソルは目の前で起こった現象に愕然とした。

「馬鹿な! 私の剣には魔法を付与しているのに!」

 あー……そういえばエリアスの剣には魔王対策で、魔法を無力化する印が彫られているんだった。運が悪かったなソル、剣士としての純粋な勝負ではエリアスに軍配が上がるぞ。

 タタタタタタと、第一陣よりも軽やかな足音を響かせて第二陣が到着した。白魔術師キースと彼の防御障壁に護られた、小娘と恋愛体質のガキ魔術師だ。

「アルクナイトは!? 彼は何処? 生きてるんでしょ!?」

 真っ先に俺の安否を確認する小娘。正直言ってちょっと嬉しかった。

「小娘風情が! 我が王の名を軽々しく口にするなど許され……」
「うるさい! さっさとここに魔王を出しなさいよ!!」

 小娘を威嚇いかくしようとしたソルがやり返された。
 俺は苦笑して空からゆっくり地上へ降りた。心配してくれた奴らに無事な姿を見せてやらんとな。
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