ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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幕間  ループ破壊のその後は……?(2)

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「エリアスさんと魔王様は?」
「人手不足なんだろう? もうしばらくギルドの仕事に協力しよう」
「感謝しろ庶民」

 賑やかなこの二人とはまだ共同生活が送れそうだ。素直に嬉しい。アルクナイトは自室を思いっきり改造してしまっているしね、長く居てもらわなくちゃ困る。

「え、いいなー! 俺達も残りたい!!」

 ついマキアが大声を出してしまったところで、再び壁がドン! と叩かれた。

「若いのと言うからには、小娘の後輩だろう? 先輩の部屋を壁ドンするとはいい度胸だな」
「ここしばらく、俺達はギルドの通常任務から外れていましたからね。穴を埋めてくれた連中は大変だったはずです。ヘトヘトに疲れて眠っていたところを起こされて、もう勘弁してくれって心境でしょう」

 エリアスとの一週間のミッション。アンダー・ドラゴンのアジト捜索。そして今日は有給休暇。出動班を束ねる主任のルパートがほぼ居なかった状態だ。ベテランのセスが残っていたとはいえ、出動班はそりゃ大変だったよね。感謝しないと。

「今夜はもうお開きだな」
「明日、明日こそ達成パーティをしましょうね!」
「流石に即日レクセンに帰ってこいとは言われないだろうから、明日の夕飯時に軽く飲みましょう」

 ヒソヒソと打ち合わせをしてから、マキアとエンがまず私の部屋から出ていった。

「さ、残った皆さん。折り畳みイスを僕の部屋まで運んで下さい」
「ここに置いとけばいいじゃん。どうせまた、みんなしてウィーの部屋へ来たがるだろうから」
「だな」
「小娘の部屋が皆の基地になるのか」

 させねーよ。

「いけません。今夜が特別だったんです。皆さん、今後は夜に彼女の部屋に来てはいけませんよ? 男の出入りが激しいなんて噂が立ったら、ロックウィーナの醜聞になってしまうのですよ?」

 私の代わりにキッパリ言ってくれたキースへ感謝した。男連中は不満のようだったが、キースの魅了が怖いエリアスとルパートは渋々イスを手に持った。

「は、付き合ってる男女なら文句はあるまい!」

 対して下乳とおへそを出した魔王は強気だった。

「ええ、交際中の男女なら僕に口を出す権利は有りません」
「なら今すぐ引け白。俺と小娘は熱愛中だ」
「いつから!?」

 驚いた私へアルクナイトが距離を詰めた。

「人類の敵である魔王を愛し、世界から祝福を受けられなくても、俺の傍に居ると誓ったのはおまえだろう?」
「それってあなたとの結婚エンディング? 今とは違う時間軸だから! その私は私であっても私じゃないから!!」
「おまえはおまえだ。俺を愛した記憶も感情も、おまえの中に確かに存在するんだ。すぐに思い出させてやる」

 後退した私は壁とアルクナイトに挟まれた。彼は私が逃げられないように両手を壁に付いた。さっきとは違う意味の壁ドンだ。
 ひゃああ。上半身ほぼ裸の男性が至近距離に居るよぉぉ。

「アル、やめろ」
「魔王様、ウィーを放して」

 エリアスとルパートが伸ばした腕は、アルクナイトが常時発生させるバリアに弾かれた。
 アルクナイトは私から視線を外さない。その真剣な眼差しに私は既視感を抱く。以前にもこうやって見つめられたことが有ったんだと。

「いけません」

 キースの手がアルクナイトの顔の前までそっと伸び、手の平で彼の視線を遮った。

「……白。何故おまえは弾かれない?」

 邪魔をされたアルクナイトだったが、その口調は静かだった。

「自動防御障壁は、術者の身の危険を察知して発動します。あなたに対して敵意を持たない者に対しては無効です。今の怯えるだけのロックウィーナのように」

 そうか。エリアスとルパートは、アルクナイトの行いに怒ったか嫉妬したから弾かれたんだ。

「白、おまえは腹が立たないのか? 小娘に迫っている俺に対して」
「あなたへの怒りより、怖がっているロックウィーナを護りたいという気持ちが強いです」
「ふ」

 アルクナイトは壁に付けていた手を放した。解放された私は反射的にキースの背中へ隠れた。

「小娘にとって、白は絶対的な安全地帯か」

 そうかもしれない。

「白、おまえはずっと小娘の期待を裏切らずにいられるかな?」
「……どういう意味でしょう?」

 眉をひそめたキースにそれ以上は語らず、アルクナイトは挑発的な笑顔を向けてから私の部屋を出ていった。
 小脇に折り畳みイスを抱えて。そこは律儀な魔王様だった。 
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