透明の「扉」を開けて

美黎

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23の扉 新世紀

ティータイム

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 少し 騒めきのある「黄の茶室」には
  既に数組の「お茶会」が開かれていて。

 連れ立ってやって来たパミール、ガリア、私の三人は
その部屋の入り口に立ちながら ぐるりと席の物色をしている、ところだ。


「あ、ヨルこの辺りならいいんじゃない?」

「そうね。目立たず、奥過ぎない。」

「   ん、いや 私隠れてるわけじゃないから大丈夫だよ。」

「…まあ、一応ここにしましょ。なんだか、ねぇ。貴女、やっぱり目立つもの。」


 いつもならば、「私の区画」か 二人のどちらかの家

その選択で気兼ねなくお喋りをするのだが、今日は私のリクエストでここ、黄の区画のお茶会部屋へ 案内してもらっている。

 そして「何故 今日ここか」と言えば
 単純に「場所を変えたい」というのと、
 「最近の世界はどんなかな」って ふと浮かんできたからだ。

勿論、わざわざ首を突っ込んで行くことはないけれど
 が自分の位置を把握しておくのは いつだって「有効な手段」である。

 かくして、「なんか 面白そう」というセンサーが働いた私は
 パミールに前もってお願いしておいたんだ。


  まあ なにか「謎の心配」はされているけれど
  別に「今の私」は「溶け込んでいる私」だし
  色も落ち着いた感じに仕上げて来たから、
 きっと他から見ても「なんてことない景色の一部」になる。

 そう思えば、不思議なもので
きっと「以前の私」は「自分がこの世界で特殊な存在だと」から、無意識に目立つし、「侵食されそうなこと」が起こっていたのだ。

 でも 今は「ぜんぶのなかの一部」だから。

 とても上手く全体に溶け込んで、周囲にそれと悟られることはないだろう。


「   成る程な。」

「さ、支度は出来た。ほら、見て見て。今回のお菓子はここのにしたの。」

「うわぁ、予約したの?」

「ううん、ここは彼の従姉妹がやってるのよね。だから融通してもらっちゃった。」
「いいわね。」
「お土産もあるから。持っていって?」

「ありがとう。私のはコレ。手作りだけど。」

「   ふむ。 最近はお嬢さん達が自分で作るのも流行ってる様だね?」

「ふふ、私達はもうお嬢さんって歳でもないわよ。………ヨルは変わらないわね…相変わらず。」

「  うん?」


  パミールの「話題のお菓子」
  ガリアが「お菓子作りをしていること」。

 そして「お嬢さんって歳でもない」というガリアは今、立派にエローラと共同して服のデザインをしているし
パミールは大分前に婚約者と結婚して、既に「奥さん」である。


「  まあ? 確かに、「少女」じゃ、ないんだろうけど。 お嬢さんでは あるな。」

 チラリと「パミールがお母さんではないか」を確認してみたが
それはまだ無いことが視て取れる。


「で、なんでそんなに艶々なの?化粧水変えてないわよね?あ、エローラから聞いたけど、そのラピスにある紺色の店がいいのかしら。今度私も行ってみたいんだけど。」

「  うん、いいよ。一緒に行く? 大丈夫なの?」

「………多分。お肌の為なら母も頷く…と思う。」

  そうやって 目を輝かせるガリアの家は
 「服飾」を許すだけの寛容さはあるが「ラピスへ直接出向く」まではどうだろうか。


「   決まったら教えてね。 私はいつでもいいから。」

「うん。頑張る。」
「   ふふ」

 しかしこうやって「ひとつひとつの話題事柄」から、「今のデヴァイの傾向」を知れるのだから やはりこうしたお茶会は貴重である。


  ガリアの 両親がどういう決断をしてくるか
  パミールの近況
  この部屋の騒めきの空気。

 そんな「ところ」からもあらゆる濃度の「情報」は染み込んできて、の中で自然と掻き混ぜられ 「時が来れば」、チーンと出てくるのだ。

 だから 
 ゆっくりと優しく淹れられているお茶の柔らかさを観ながら。

 何故か最近話題になりがちの「私のお肌の話」へ
 内容は滑ってゆく。


「でも、確かにヨルが「変わらない理由」はわかる気がするのよね。彼の所為でしょ、多分。」

「  えっ  そっち?」

「ふふ、確かに私もそれは思うわ。………この間の儀式の時もそうだったけど。彼、なにか神秘的だもの。いつの間にかあの位置にいるけれど、誰も違和感を抱いてないしね。私達はヨルとの事、知ってるから「ああそうなんだ」って思ったけど。」

「一緒にいる人で、なんだろう、生活が変わるから?なんて言うんだろう、肌質とか、雰囲気も勿論だけど。食べる物なのかなぁ。…あ、でも私もグロッシュラーの野菜はよく摂る様にしてるの、最近。」

「わかる。これまで入って来てたのは、少し鮮度が落ちるのよね。味は濃いんだけど。距離の関係なのかしら?」

「どうだろうね。」


 二人が言っているのは「これまで通りのラピスの野菜」と
 「新しい畑で作られているグロッシュラーの野菜」の違いだ。

 ラピスの野菜も 今は「以前よりは濃い」けれど
 きっと「間に幾つもの行程を挟む」所為で 鮮度が落ちるのだろう。

勿論、えっちらおっちら輸送しているわけではないけれど
 所謂「利権」が絡んでいてストレートに入ってこないのだ。

 ここら辺は「まだ古い体制」が残っているから仕方がない。

だけど 
 それもまた 徐々に解消されて
 フレッシュな「ラピス野菜」が出回ると いいのだけど。


「なにしろ食べ物の質を気遣うなんて。これまでなかったもの、私にも効果は出てるわ。確かにお嬢さんと言っても差し支えないかも。母も自分が娘の時より、私の方が艶があるから羨ましいって言ってたわ。」

「ああ、それはうちもあるわ。ここのところ、急激に変わってきてるでしょう?レナの店みたいな事、始めてる子もいるし。でも、やっぱりこうして自分の意思で、自分に手を掛けられるっていいわよね。」

「   うんうん」

「あ、でもヨル。太らない秘訣とか、あったらそれは教えて欲しいかも。」

「えっ、そんなのあるの?」

「  秘訣  」

「そう、私もだけど、最近美味しいものが多いじゃない?確かに、前より幸せも感じるし、全体的にはここも上がって来てるのは分かるんだけど。………その弊害と言っていいか、ウエストも増えてきてるのよ。」

「わかる。みんなが色々美味しいものを作り出したからね。美味しいものが増えるのは嬉しいけど、サイズが増えるのは勘弁。」

「   ふふふ」

「いや、笑い事じゃないのよ。かなり、これは真剣な話なんだから。」

「  いや、うん、わかってる。 えっ、でも私の思う方法なんて「太ると思ってるから太る」とか 「自分を客観視する」? くらいしかないけど 」

「…………それって。「太らない」、と思ってれば太らないって事?」

「  まあ  そうとも言うけど。 でも、「思ってるだけ」じゃ、太ると思うけど。」

「えっ?…………詳しく。」

「   う~ん 、 あのね  」


 この話題が 出て 少しすると
 「一番近い席のグループの耳」が ダンボになり始めたのが わかって。


   うん やはり

    この話題は 万国共通


 そう思った私は とりあえず「クリアな声」で話すべく、
  一旦呼吸を整えてから
 きちんと 根源に立って。

 「さて どの切り口がいいか」と場を読みながら
 世界この場を 眺めていたのである。






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