透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
155 / 2,079
7の扉 グロッシュラー

石たちのミッション 再び

しおりを挟む

「………ねぇ、…………ねぇ、朝。」



「ちょっと来て。」



んん?

…………月明かりかと思ったら、相変わらずの曇りね………。

それでもここの夜は意外と明るい。
雲が、白いからかしら。今日は昼間に結構寝たから大丈夫だけど、私を起こしたのは誰?


静かな白い部屋の中、私の定位置は出窓のフワフワクッション。ヨルが、薄めに作ってくれたやつ。下の敷き布も冬用で、いい感じ。
でもこの館も、寒くは無いんだけどね。
まぁ、何にせよ猫にはありがたいわ。礼拝堂だけは、ゴメンだけど。


私を呼んだのは誰だろうかと、ロココのカップを見たけどチラリとも見えないから、あの虫は寝てるに違いない。虫だか石だか知らないけど、夜は一応寝るみたい。

じゃああっちかと思ってベッドを見るけど、相変わらずあの大きな金髪に遮られて、依るは見えない。
ちょっと、邪魔なのよね………多分、依るは寝てるだろうからきっとあの石たちのうちの、誰かだろう。
さて、ちょっとお邪魔しようかしら。



「ああ、よかった、聞こえた?」
「まぁね。起こされたけど。」
「ごめんごめん。でも一応聞き役として、いてもらった方が良いと思って。」


そんな事を言っているのは自称「愛の石」の蓮。
この前、夜に依る(ダジャレじゃ無いわよ)が抜け出した時、手伝ったのが蓮だったと後で聞いた。
そういえば、前回の石会議も蓮が何だか言っていて始まったんじゃなかった………?
どうだったかな………?


「ほら、この前、シンラ様の所に行ったじゃない?」
「ああ。久しぶりだったよね。」
「そうですな。何だかやっぱり、袂を分かった感じが強かったですね。」
「?元はどうだった訳?」

「ああ、ビクスは最近来ましたもんね。いや、何というか………別々、になってきちゃったんですよね…。」

クルシファーが言うのは、多分シンと気焔の事も勿論なんだろうけど、依ると姫様が今迄は混在していたのが、あの二人が別々の目的を持つ事によって、明確に別れる事を指しているんだと思う。

えーと。
でも、二人で一人を取り合うよりもいいんじゃないの?

単純に私はそう思うのだけど、石たちにとっては何だか複雑みたい。
よく分かんないけど、姫様派と依る派って事??

「私はね………勿論、依るの事応援してるわよ?だから、この前も協力したし。でも、「想い」を預かってるから、これでいいのかどうかの不安というか、早く返したい様な、でも返してもし、もし依るがシンを好きになったら…………。」


それはめっちゃヤバい気がする。
あの金の石、蒸発して消えるんじゃないだろうか。

「わたくしは姫様が決めた事なら、万事うまく行くと思いますけどね。」

そう、自信ありげに言うのは宙だ。
でも、宙に言われると何だか大丈夫な気がしてくるから、不思議。

「私も依るが想いを貫いて欲しいわ………この先、どうなるかは分からないけど、どっちかがダメでどっちかだけ幸せじゃなくて、二人とも幸せになって欲しいもの。」

うん。まぁ、それが一番いいよね。流石癒しの石。でも私から見ると、藍は充分、依る寄りだけどね。

「僕はやっぱり姫様の体を探すという目的は優先されるべきだと思います。その為に、ここへ来てるし僕たちもいる。」
「ふん。優等生ね。」

あら。同じ事思ってるわ………。
まぁこの中で言うと結構若そうだもんね…クルシファーは。まぁ、真面目な役も必要よ。特に、持ち主がポンコツだからね。

「え?結局、依るが姫様なんじゃないの?何?私だけ事態を把握出来てなくない??」

ビクスは一人でキョロキョロしてるけど(あ、そんな感じがするだけね)この問題は、私からしてもちょっと、複雑。

そもそも、今迄に人形の「に」の字も出て来てない。いや、「に」くらいはどっかにあったかも知れないけど(ビリニスの人形とか)、石や服、靴迄はまだ良かった。
でもシンラ様みたいな、人形なんて全く見てないし聞いてないし、噂も聞かないしね。
ここには猫がいないから、情報網がないのもキツいわぁ。

もしかしたら、悪の巣窟、デヴァイにあるのかも?でもあんなのあったら、それこそきっと「神」として崇められてそうだけどね………でもあの絵なんだもんね………。もっと可愛いものに祈りたいわ。私は。
いや、まぁそれはいいとして。



「でもさ、結局あなた達は依るにくっ付いてる訳だからその都度自分達がいいと思う方に行くしか無いんじゃない?」

「あ、でも「想い」を返すのは待ったげて。余りにも可哀想。あの子の決意は、簡単な事じゃないのはあなた達が一番良く、解るでしょう?」



静かになった天蓋の下で、金色の石が聞いているのが分かる。
多分、みんな気が付いてる。
少し別の道を歩み出した仲間を見守っているこの子達。
そりゃ、どっちになんて決められないわよね?


暫く誰も、喋らなかった。

依るの規則的な寝息だけが聞こえる、白いベッドのフカフカした布団。
くるりと丸まっていたら、危うく寝そうだったわ。

その時、ふと私の脳裏にフローレスの言葉が過った。
確か、気焔も以前同じ様な事で悩んでなかったっけ?

「二兎を追うもの、二兎を得よ。」

そんな様な意味の事、言ってたわよね…………?


「何それ。」
「あら、いいじゃない!そうでなくちゃ。腕が鳴るわ!」
「まぁ、それが一番でしょうな。」
「そうね………とりあえず、時間が必要。」
「そうそう、みんなで幸せになればいいのよ。」


石たちが口々に自分の意見を言い出して、煩くないんだけど、何だか煩い。


その時、今日は喋らないだろうな、と思っていた気焔がポツリとみんなに言った。

「そうだ。「どちらも」幸せになれる様、協力してくれ。」


その言葉を聞いて、誰も何も言わなかったけれど会議はお開きになってそしてきっと、石たちの意見は纏まった。多分、そうに違いない。

姫様派だったクルシファーが少し、光っていたから。

きっとみんなを纏める光を発したのだろう。


流石まとめの石。

それにしても、この子達の懐の深さには恐れ入ったわ。
神との約束と、うちの依るの事を同列に考えてくれるなんて。
ある意味、シンラ様が直接扉の中に来れなくて、良かったのかも知れないわね………。




普段はお邪魔かと思って出窓で寝ているけれど、この日ばかりはこの輪の中に参加したくて、そのまま白い布団に潜り込んだ。


嫌がらせを兼ねて、二人の間にね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

処理中です...