透明の「扉」を開けて

美黎

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7の扉 グロッシュラー

お茶会 2

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「それで?どうなの?」

「珍しいわよね、青の家でしょう?何がどうなって、そうなったの?」

「確かに私もそれは気になります………。」


三人に囲まれて、結構ピンチな私。

ヤバいヤバいと思ってるもんだから、余計に顔が赤くなるのが止められなくて、きっと今は真っ赤に違いない。

やだ………まさか、やっぱりみんな、知ってるんだ………。どーしよ…。

「ちょ、ちょっと待って………。」

二人はとってもニコニコしながら私を見ていて、トリルは至って普通。
私の顔が治るまで、トリルが二人のターゲットになっている。

「で?好きな人はいないって事よね?」
「…はい。それって、本より楽しいですか?」
「ねぇ、これって………。」
「そうね。流石青の家。デヴァイの中でここまでに育てるには温室が必要よ。」
「まぁ無いけどね。」

何だか二人の掛け合いがコントのように聞こえてきて、クスクス笑い出す私。

でも、お陰で大分落ち着いてきた。

ちょっと、深呼吸してまだカップに残っているお茶を飲む。
そうして顔を上げたのだけど、やっぱり全員が私を見ていた。

うん。
はい。
ここまできたら、喋りますよ。
いや?ちゃんと喋れるかな………?

少し一人でぐるぐるして、少しずつ、様子を見る。

「あ、の、気焔の事だよね?」

私の出だしがまずかったのかもしれない。

「キャー!」「やだ!仲良さそうね?」
「わぁ~!」
「カッコいいよね?あの人。」

二人の盛り上がり方がハンパなくて、ちょっとビックリ、した。

また少し顔が熱いけど、とにかくこの山を抜けなければ私は楽にはならないのだ。
意を決して続きを言う。

「うん、ん?そう、私が、好きで…………頼んだの。婚約者にしてって………。」

ぐぅぅぅ………何の辱めなんだ!これは?

アブアブしながら話して、ちょっと一休みする。

そう、私が銀である限り立場がどうしても上になる。通常家同士ではこの婚約は成立しない筈なのだ。
だから、「私がどうしても彼が良いと言った」という事になってしまう。

いや、まぁ、そう、なんだけど。
うん?そうなのか?まあそんな様なものか………。


二人がキャアキャア盛り上がっているのを横目に、トリルが鋭いところを突いてきた。

「でも、あんな人、いたら家で噂になってそうですけどね。私もここ来てからです、彼を見たのは。」

ヤバい。
大丈夫かな、これ………。



気焔がどの程度のまじないをかけたのか、青の家の結束がどの程度なのか、私には分からない。
とりあえず下手な事は言わず、躱しておくしかないのは判るんだけど………。
なんて言おう?

「うーん。私は昔からそう、言われてて、会いに来てくれたりしてそのまま好きになったから………別の場所に、いたのかもね?」

何となく絶妙な答えを捻り出して、ホッとする。
納得してくれたかは分からないけれど、気焔個人に興味が無ければこんな感じの返事で大丈夫だと、思ったのだ。
追求する理由が、トリルには無い。

それに多分、あまりこっち方面興味なさそうだしね…。


そして帰ってきた二人がまた口々に感想を言い始めたのを、楽しく聞いていた。

「でも青でも良いかもね。アレなら。」
「そうね。嫌味な感じもないし、ここに来てるって事は力もそこそこ強い筈。で、まだ結構若いし年の頃もちょうど良いんじゃない?ヨルはいくつなの?」

「うん?私は…………多分15の筈。」
「「「えっ。」」」

え?なんで?

珍しく三人がハモった。

いや、二人は解るにしても、トリルは?何で?どっちだと思ったの???

私の視線と、顔に気が付いたトリルはまた、質問が口から出る前に教えてくれる。

「私、16だから………。」
「えっ!」

え?なんで?なんでみんな、驚いてないの??

パミールとガリアは既にゆっくりお茶を飲んでいて、私だけがトリルの年齢に驚いていた。
「ヨルは大人っぽいよね」なんて二人で言っている。

マジマジと、また見てしまった紺色の髪、明るい茶色の瞳。
落ち着いて見えるけれど、どちらかと言えば童顔なトリルは同い年か、ともすれば年下かも………と思っていた。

「年下だと思ってました?」

そのものずばり、聞かれて「なんかごめん。」と素直に謝る私。

「いえ、そのままでいいんです、大体その位に見られますから。」

しれっとそう言うトリルはやっぱり不思議な雰囲気で、育った環境がとても気になってきた。

いつかデヴァイに行ったら、青の家に遊びに行ってもいいだろうか。


そう、いつか、デヴァイに行ったら。

結局ここで石を見つけたら、次に行かなくてはならない。色々問題はあるけれど、私にたっぷり時間がある訳じゃないのは、確かなのだ。



そう、お茶も楽しむけどちゃんと話を進めないとね?
ん?でも何の話だったんだっけ………?
手紙を渡されて………いや、でも元はと言えば。

「そうだ。お化粧だ。」

私の声に、みんながハッとする。

パミールも私の事を見ていて、ガリアはなんだか目がキラキラしている。トリルは完全に「忘れてた」という顔をしていて何故だかこの時、私達の意見は一致した。

お化粧をしている筈の、ガリアも。

「「「「で?どうしたらいい?」」」」


そこから私達のお化粧への話がやっと、始まった。






「だからいつも、ブリュージュにやってもらってるのよ。」
「私なんかは毎日見様見真似で、やってるだけだし、道具も少ないから、ちょっとここに色を入れてるだけ。」


そんな二人の話を一通り聞いた感じだと、やはり誰かに聞いた方がいいようだ。

そもそも二人は、春の祭祀迄はお化粧をブリュージュにやってもらっていたと言う。

雪の祭祀も聞いた時から楽しみだけど、春にも祭りがあると聞いてちょっとウキウキしてしまう。
まぁでも、ラピスの祭りの様な美味しいものが食べられるお祭りじゃないんだろうけど。

その、春の祭祀ではブリュージュが二人にお化粧をしてくれたので、二人とも冬の祭祀もそうだと、当然思っていた。
しかし、先日礼拝の帰りに「今年は女子が多いから、自分達で出来ないかしら?」と言われていたようなのだ。

困った二人はもしかしたら私が知っているかもしれないと一縷の望みを抱いたらしいが、結果私も知らなかった。
トリルには何も言ってなかったけど………うん。


「パミールの部屋に来たのは、道具と化粧品だけは揃ってるから、もし、ヨルが知ってたらなぁと思って。私の部屋だと狭いし、道具も充分じゃないし。」

そう呟いて悩み出すガリア。
腕組みをして真剣に考えているが、隣のパミールは何だかのんびりしている。二人のギャップが面白い。

「パミールはどうして道具だけ持ってるの?」
「ニュルンベルクがくれるのよね………。女には化粧品でもあげとけば喜ぶと思ってるから、あの人。」

辛辣。

私はパミールの物言いを聞いて、ニュルンベルクが誰なのか物凄く気になってきた。

こんな話し方するって事はきっと黄ローブの人だよね?でもなぁ………ネイアの黄ローブ………。

あっ。

「もしかして、運営の人?」
「そう。よく分かったわね。」
「うん、この前ちょっと覗いたんだよね………。」

「運営を覗くなんて珍しいわね、やっぱり。」

パミールもそんな事を言っているがやはり、女子が運営を採る事は無いのだろうか。
授業の様子を思い出しながら、「そういえばちょっとチャラかったもんな…」と私のニュルンベルクの評価が決まった所で、トリルが言った。

「じゃあ結局、誰かに頼むことにはなるんでしょうけど、どうしましょうか。」

ついつい話があちこちに行く私達にはトリルはいいストッパーに違いない。

そこからあれこれ考え始めたのだけれど、みんな心当たりは無いらしく、そもそも女の子はここにいる四人で全員なのだという残念な事実を知ってしまった。
だからこの二人はこんなに仲が良いのか…………と納得しつつも、良いアイディアが無いかとぐるぐるする。

でも…………ネイアには頼めなくて、セイアも他に聞ける人がいない………これって、選択肢は一つじゃない?

頭の中に浮かんできたのは、あの、フワフワの青い髪。

「レシフェに頼むしかないかぁ…………。」

ついつい、ポソっと呟いた。

「え?」
「あ、あの人!たまに見る人だよね、最近。」
「確かに………何処の人なのかと思ってたけど知ってるの?」

え?
て言うか、逆にみんなが何でレシフェを知ってるのかが疑問なんですけど??


しかしみんなの話を総合すると、こうだ。

パミールは新しい化粧道具を貰ったり、今迄無かったものが入ってきている事に気が付いた。
ニュルンベルクに訊くと、「いい奴が入った」とだけ言っていたらしい。
ガリアは廊下でたまに見る、珍しい男が気になっていたらしい。確かに、今の見た目は結構怪しいもんね…………。
驚いた事にトリルが知っている理由は、本だった。
グロッシュラーでは基本的にここか、デヴァイで書かれた本しか扱っていないが何処か他所の本が増えたらしい。それが気になって図書室をウロウロしていた時、怪しい灰色の髪の男を見かけた様なのだ。
うん、確かに怪しいからね。

どうやら私が気が付いていなかっただけで、レシフェは神殿にちょこちょこ出入りしていたのだ。
しかも、時期的にグロッシュラーに寄ってからラピスに来たに違いない。
みんなの目撃証言が、そのくらいなのだ。


あいつ……………用意周到だわ………本部長かな…………??

何しろそれなら話は早い。

私は早速、レシフェが色々な物を取引して卸す役割をしている事を伝えて、「もしかしたらお化粧してくれる人も紹介してくれるかもしれない」と言っておく。
勿論、「かもしれない」とは言ったが多分レシフェに頼めば私の意図は伝わる筈だ。

ううっ、ワクワクしてきたっ!

何だか悪巧みしている気分になったが、別に悪い事をしている訳じゃない。

「じゃあ私がブリュージュにそう伝えておくわ。多分了承してくれると思う。」

パミールがそう言ってくれて、返事待ちでレシフェにお願いする事になった。


さあ、雪の祭祀も楽しみだけどこれは準備段階から楽しそうだぞ?


そう思ってワクワクが止まらなくなった私は、自分を落ち着かせようとまた、紅茶のおかわりを口に含んだ。
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