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8の扉 デヴァイ
色を吹き込む
しおりを挟むただ、消費する為だけでなく。
大切に、慈しんで使う「もの」。
そんな「もの」を、創りたいんだ。
「なんでも好きな物を、作っていいよ。」
フリジアがそう言って、沢山のワクワクが並んだ机を指した。
「ホントですか?」
て、言うか。
誰かにあげる物を作る、と言うよりは私が欲しいんですけど。
全部。
私達が「何を作ろうか」キャッキャと相談している間、フリジアは沢山の材料を用意してくれていた。
何かの箱やケース、小瓶、入れ物色々。
ハーブやスワッグもあるし、キャンドルなんかも、ある。
勿論、カードにできそうな紙も用意されているし、絵の具らしきものもしっかり準備されていた。
その他、あの「魔女BOX」の材料なのだろう、少し大きめの箱にドライフルーツ、小さな箒もある。
それらの心躍る材料を前に、私の頭は早速フル稼働していた。
カード。
カードも、いいよね?でも絵心が微妙。
魔女BOXもいいけど…時間かかりそうだな?
沢山、作った方がいいよね?
スワッグじゃ、普通過ぎるしハーブティーも試飲でお腹いっぱいになりそう…。
でも。
「私」と、言えば?
「やっぱり、「石」だよね………。」
でも、パミールとガリアには「配るのはダメ」と言われている。
「それなら今回は、売るからいいんだよね?うん?売るの??」
チラリとメルリナイトを見る。
すると、私の隣で白いカードを手に取っていた彼女がこう言った。
「勿論、売りますよ。私もそれで、生活してますからね。」
「?メルリナイトは何処かのお嬢さんじゃないの?」
シンプルだが身なりのいいメルリナイト。
私は勝手にお嬢様だと、思っていたけれど。
まあ、ちょっと変わってるけどね………。
ここに朝がいたら「自分の事は棚に上げて」と言われるに違いない。
「お嬢さん、ではない?のかな?でも自由にはさせてもらっています。だから、自分で使う分くらいは稼がないと。」
見た目に反して、意外なセリフである。
しかし、私の頭の中は既に「メルリナイトが何を作っているのか」に移っていた。
サクサクと絵の具とカード、筆記具を用意し始めたその様子は、どう見ても手慣れた感じがする。
何が始まるのかと、じっと見ていた私はウイントフークが言っていた「あの事」を思い出していた。
「面倒で恐ろしい方」の、カードの作者だと言うフリジア。
その、弟子だと言うならば。
彼女も、もしかしたらカードを創るのだろう。
どんなカードなのだろうか。
手早く絵の具を混ぜ色を作るメルリナイト。
絵の具はまじないなのかもしれない。
少し、試しで色を紙に着けるとスッと馴染んで少し光っているのだ。
キラキラしていると言うよりは、印刷に近い光り方。
きっとすぐに乾くまじないなのかもしれない。
兎に角楽しそうな作業をじっと見つめていると、フリジアに声を掛けられた。
「ヨルは、決まったのかい?」
「そう、ですね………。」
「お前さん、それを見ていたら今日は何も出来なそうだね。まあ、それでもいいが何を作るかどうかは決めたらどうだい。」
目線を外さず、そう答えた私に向かってフリジアが言った。
確かに。
これは、ずっと見れるやつだ。
声を掛けられなければ、帰る事すら忘れそうである。
うーーん。
ここ、楽し過ぎない??
しかし、考えた方がいいのも事実である。
放っておくと、きっと私は自分が何かを創るよりも二人を見る事に専念してしまうだろう。
メルリナイトから視線を外し、部屋の中を見渡すとフリジアと目が合った。
蝋燭の灯り、手元はまじないで照らされているが基本的にこの部屋は薄暗く不思議な雰囲気である。
抹茶色に見える瞳をじっと見つめながら、さっきまで自分が考えていた事を提案してみようと、思い立った。
きっとフリジアなら、的確なアドバイスをしてくれる筈だ。
「あの、私は石を使いたいんですけど………。」
あれ?
そこまで言って、「自分が石を創れること」を話さなければ話が通じない事に気が付いた。
えっ。
どうしよう。
でも、途中まで喋っちゃったしな………。
フリジアさんだったら、いいよね………?
イストリアさんの師匠だし?中立、だし??
少し考えたけれど。
やはり、話す事にした。
私が創りたいものが、「石を使っているけどそれが分からないもの」だったからだ。
「あの。内緒に、して欲しいんですけど。」
そう前置きをして、話し始める。
「お前さんの事は、元々言えない事ばかりだよ。」
ポソポソと呟いているフリジアに、「すみません」と笑う。
そうしてまた一つ、私の秘密をこの人に共有したのだ。
一応、手短に説明したつもりだ。
どこからどう、話せばいいのか分からなかった私は「歌うと出来る」というザックリとした説明をしたのだけれど、フリジアは「石ができる」という事実については少し驚いただけで、違う方向に興味が行った様だ。
「それは力が色んなものに変化するという事だろうね………。」
そう言って、考え込んでしまったのだ。
ウイントフークの様にぐるぐる回る事こそ無いが、じっと黙りこくって動かなくなったフリジア。
この手のパターンに慣れっこの私は、とりあえず材料を見てイメージを膨らませることにした。
見ているうちに、何か思い付くかもしれないからだ。
あちこちの机と、棚を物色しながら何を創ろうか考えていたのだけど。
再び私の頭の中に、ひょいと現れたあの。
同じ様な薄暗い空間、去ってゆく水色の髪、光る閃光。
やはり。
そう、簡単には割り切れない。
自分の中では、少し思い出したくらいの、つもりだった。
でも。
どうやら蝶は飛んでいたし、口からは呟きが漏れていた様だ。
いつの間にか近くに立っていた、フリジアが私の言葉を復唱したからだ。
「人は死んだら?何処へ、行くのか?」
そう、フリジアが繰り返した事で。
何故だか、この人ならば答えを持っていそうな気がして、じっと深緑の瞳を見る。
多分、私が答えを待っている事が分かったフリジアは、そのまま考えている様だ。
答えを待ちながら、「フリジアの瞳は灯りで色々に変化するな?」なんて、呑気な事を考えながら。
揺れる灯りの中を、じっと待っていた。
「お前さんは。どう、思う?」
ドライハーブを手に取っていた私に、そう問い掛けたフリジア。
私が?
「人は死んだら何処へ行くのか」?
どう、なんだろうか。
質問をされると思っていなかったので、ハーブを置き少し真剣に考える。
でも。
私の、持っている答えなんて。
「ティレニアに、行くとか………その、何でしたっけ?グレース、なんとかに行く?うん?それだと身体と中身が?」
扉を潜ってから巡ってきた事を思い、そう、答えたのだけど。
自分で言って、混乱してきた。
「ん?てか、魂?と、肉体?うん?」
「お前さんは、それは。解っているようだね。」
「それ?」
それって。
どれ、でしょうか、フリジアさん………。
少し緑を細めたフリジアは、私に向こうのテーブルを示している。
座れという事だろう。
多分、これは。
長い話になるのではないか。
でも、もしかしたらここにヒントがあるかもしれない。
この子達やフォーレストはああ言ったけれど。
できることならば。
そうして私は、自分の頭の中が期待で一杯にならない様、注意しながら。
椅子に腰掛け、フリジアがお茶の支度をするのをボーッと見て、いたのだ。
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