透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

魂の込もる もの

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「いつだって「想い」の込もるは、私達を助けるしそこに在るだけで。空間の、浄化にも、なるんだ。」

「そうです。清々しくなりますよね。なにしろ見てるだけで楽しいし?嬉しいし?ヨルが作ったならば、余計にが反映されて。美しく、輝くでしょうね?」

そう言って始まった、二人の話。

フリジアが私を誘ったその訳は、二人が作っているものを一緒に作らないか、という聞くだけでウキウキする様な話だった。

前回私をここへ招いた際に見た、虹。
それを見てからずっと「あれはいい」と思っていたらしい。


「私達は、少しでも、少しずつでも。この世界が保てる様に「もの」を作ってきた。色々な手を使い、この世界に馴染み溶け込む様に、自然にそこに在る様に。これまで、やってきたんだよ。この頃はこの子も勝手にやって来て弟子だと手伝っているが。ずっと一人で、やって来た。イストリアが離れてからはね。」

そうか。
確かに、イストリアはここで沢山の事を学んだのだろう。
見知ったハーブやスワッグの組み合わせ、私が呼ぶ「魔女箱」も中身は似たものが置いてある。

キョロキョロと魔女部屋を観察していると、再び話は始まった。


「この前、うちの礼拝堂へ行ったよ。お前さんが歌ったんだってね?」

フリジアの秘密の魔女部屋は、白の区画にある。
あの、鐘の礼拝堂の事だ。

そう言ってじっと私を見る、茶緑の瞳。
ゆっくりと頷くと、再び話が始まった。

「あそこは。殆どが「込もらないもの」だった。中には古く、「いいもの」もあったがやはり少ないんだ。だから祈りも届き辛かった。でもね、お前さんが歌い、鐘が出来てその「色」が通った時。きっと、いのちが吹き込まれたのだろうね。みんなきちんと、一体となって辺りを浄化し祈りを。届けていたよ。」

「そうですか…。」

鐘が響いて、いい影響があるとは聞いていたけれど。

それは、嬉しい事実だ。

私はその後の様子はザックリ聞いているけれど、流石に「込もるもの」と「そうでないもの」の事までは。
聞いている訳が、ない。

そもそも、に気付いている人がいると思ってなかった事もある。
言葉にできない、微妙な、「なにか」。

なにより、この複雑な、見えない、想いを。
分かり合える人がいる事が、嬉しい。

この世界では、もう。
誰も気に留めない事になってしまったと、思っていたから。



なら、いい。そうと判れば、お前さんの「もの」を作って、欲しい者が手にすれば。それはきっと、その場の浄化にも、守りにもなる。そうして私達は、「小さなまじない」を拡げてゆくのさ。」

「そうですそうです。ヨルのものが、みんなの家にあればきっと、それが光りますよ。それに、もしかしたら………。」

コソコソとフリジアに耳打ちするメルリナイト。


気になるんですけど………。

しかし、教えてくれる様子は無く頷くだけのフリジアは、私の事をじっと見つめたままだ。

しかし私はそれについての質問はせずに、自分の意見だけを言った。

きっと、時間ときが来れば。
自ずと知れるか、教えてくれるだろうと思ったからだ。


「やりたいです、是非。」

「やった!」
「ありがとうね。」

「いえ、お礼なんて………」

「いいや。」

そう、キッパリと言い優しい色の瞳を向けるとフリジアは部屋の奥へ入って行った。
何か準備をするのだろう。

沢山の引き出しから、なにやら楽しそうなものをトレーに並べ始めたのが見える。

「ヨル、ヨル。ヨルは何が作りたいですか?きっといいものが出来ます。」

キラキラと屈託なく笑うメルリナイト。
その顔を見ていると、私の方が浄化されそうである。

でも。

確かに。

そうなんだ。


ずっと前から好きな、アンティークや手の込んだ職人の仕事。
その、さまも好きだし勿論、仕上がった「もの」だって好きだ。

その原因が今、改めて判った様な気がする。

力を込めれば込めるほど。

想いを込めれば、込めるほどに。


「それ」は「もの」ではなくて、「魂」を持つ。


そしてそれに込められた想いが真摯であるほど。

純粋にその「在る場所」を浄化する、という在り方になるに違いない。


「それ」が在るだけで、場の格が上がる家具。
「それ」が在るだけで、その場が華やぐ絵。

「それ」を身に付けるだけで気持ちが華やぐ、アクセサリーや服。

「そこ」に居るだけで、浄化されていく様な場所。

その気持ち良さとは、それに携わる「もの」と「ひと」の在り方により成り立つものなのだ。
そしてそれの、積み重ねで。

如何様にも、変化していくものなのだろう。



なんだ………。

古いものが好きなのも、神社や教会が好きなのも。
場所によっては、あまり気持ちが良くない所もあること。

それもこれも、きっと作り手と担い手の在り方が関係してるからなんだ………。


ボーッと自分の考えに嵌まり込んでいる私の肩を、ポンと叩いて。
フリジアはこう言った。

「さ、やるかね。」

「うん?」

そうして突然。

この秘密の場所で私達の「小さな浄化計画」は、始まったのだ。
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