透明の「扉」を開けて

美黎

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8の扉 デヴァイ

暗い なかみ

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「喜ばしいこと」

「……………うん?おは、よう………?」

いつものセリフ、フワフワの、感触。

「ふふっ、くすぐったい………」

頬に感じるフワフワ、しかし足元は温かいままである。
きっとフォーレストが起こしに来たのだろうと、ゆっくりと目を開けた。


「…………う、ん?」

あれ?

目の、前にはいつもの金髪、閉じられた瞼を彩る長い睫毛は羨ましい限りである。

え?
そのまま?

いや、嬉しいけど??
帰らなくていいのかな………?


どうやら足元が温かいと思っていたのもこの金色の所為で、フワフワは感じない。
千里は金色がいるから何処かへ行っているのだろう。

流石に私も。
二人と一緒にベッドに入っていると、なんだか気まずい気がするので、良かったという事だろうか…?


ま、それならそれで?
いいか………。
て言うか今日、なんか予定あったっけ………?


ぬくぬくと落ち着くこの空間から、出るのはなかなか至難の技である。
すっかり眠りこけていたのだろう、起こしにきてくれたフォーレストに合図をしてみるも、特に用事は無い様子。

それなら。

私の様子を確認して、再び部屋の隅に座り込んだ白いフワフワを確認すると、いそいそと自分も金色の懐へ潜り込む。
そうして。

再び、「自分の中の足りない なにか」を考え始めたのだ。



心地の良い金色を遮断しようと試みつつ、頭の中へ焦点を移す。

この色に包まれたなら、どうしたって。
思考は、ふわりふわりと彷徨いがちになる。
とっても、気持ちはいいのだけれど。

このまま 揺蕩うことも できるのだけど。


違うんだよ

もっと。


もっと何か。

深く 暗くはないが混沌と した

 自分の   奥の   奥


      ずっと 奥 に。



       潜る必要が  ある



そう 思ったんだ。






しかし、ぐるぐる、ぐるぐると考えているうちに。
なんだか、気持ち悪くなってきてしまった。

「うぅ…………。」

自分の深く、混沌と沢山の色が渦巻く、ずっと奥に。

「なにか」が、有るのはわかる。

分かるん、だけど。

「それ」を「どんなものなのか」探ってみようと試みると、どうしても濁った、気持ちの悪い「いろ」が流れ込んできて。

「めっちゃ…………吐きそう………。」

多分、自分の「なか」だから大丈夫だとは、思う。

思う、けど。
気持ち悪い事に、変わりはない。


「うぅ……………っ。」

「大丈夫、か?」

すると珍しく何処からか金色の声が響いてくる。


あれ?
珍しいな………でも。

うっ。
確かに、気持ち悪いんだけど。

「………っ。」

「吾輩………いや、でも、可能か………」

彼が、私のこのモヤモヤを取り除こうと探っているのは、分かる。

でも。

うん?
気焔でも、取り除けないから?
「向こう」?

もしかして、シンのこと??

まあ、シンなら可能なのかもね………。


でも、待って?

この、モヤモヤは?


 「私の なかみ」だよね?

………うーん。それなら。


「ちょっと。待って?大丈夫、だから………」

返事は無い。
疑ってるのかも。

私の「大丈夫」が、大丈夫だった、ことは。
確かにあまり、無いかも知れないから。


でも?

そんな?

簡単に、を取り除ける方法があるのだとしたら??

 やる?

 やるかな?

 
いいや。


やらない、よね?



「置いていけないもの」は。


「私が預かる」って。
言った。

いいの、置いて行って、身軽になれるならば。
そんな人も、いると思うしそれはそれで、いい。

それは「みんな」の。
自由、だから。

でも。

「私」は?

どう、する?


見えないけれど「そこ」にある、深い谷を見る。

なんにも無い様に見えて、確実に存在する、その大きな靄。

感覚で、分かる。

「あれ」は。

「開けてはいけない 箱」で。

「危険なもの」だ。

きっと、私にとって。


なるのかは、分からない。

あの時は。
エルバの所に走って、それで。
なんとか?なった??けど。


大丈夫?
できる?

持てる?背負える??

いいや。

でも。

  「持ってた」んだ、ずっと。

 気が付かなかった だけ で。

 見えなかった だけで。


でも、気付いたんだ。

見ない、フリ?

できる?できるの??


いや、無理だよね………。

こればっかりは、性格と言うか。
性質と、言うか。


  「臭いものには蓋をしろ」


だって

「私」だよ?

「私」「臭いもの」なの??

違うよね?
うん、違う違う………。

 
 「大事なもの」だよ。

 「あれ」も。

 「私の なかみ」だ。


 正真正銘、紛れも、なく。


なら、開けるしか、ない。

どうやって開けるのか、どうすれば開くのかは。

分からないけど。



「でも多分、「気付いた」って事は………遠からず開くと、いう事か………。」

チラリと浮かぶ、紫の瞳。

大きな溜息を吐いて、その場に胡座をかいた。
ついでに、腕組みも、して。


「仕方無い。………いや、仕方なく無いけど、やるんだ。だってきっと。必要なこと、だから。」

自分に言い聞かせる様に、声を張る。

気分が晴れる訳ではないが、仕方が無い。
だって。
多分。

きっとを掬い上げないと。


「私のなかみ」は、欠けたままだろうから。



「えっと?…………それなら?なにか、チカラが、要るな??」

チラリと浮かぶ、金色。

「いや待って。も、いいけどちょっと違うんだよな?」

金色は勿論、欲しい。
でも。

なにか。

「他の色」も。

あると、もっといい。


 「美しいもの」

「なにかが込もった もの」

 「チカラを 貰える」「なにか」


沢山の「私のなかみ」、その其々に「いろ」を差す様なそんな素敵な「色」はないだろうか。

「みんな」を、満たす。
なんか、最近いいもの見た様な気がするんだけど………?



「あっ!!!」

「?」

徐々に戻っていたのだろう、私を抱える腕がビクッと動いたのが分かる。

安心させる様にそのまま、金の瞳を見上げて。

おかしなものを見る目をしている彼に、こう言った。

「「絵」だよ!それで、並べる………可能かな…なんなら偽物でも描いてもらって、それをすり替えて………三枚、並べれば。良くない??」

「は?」

コーネルピンが、言っていたのだ。
この間。

アリススプリングスの、屋敷で。

「貴女の絵を、修復しましたよ?」と。


多分、それって。
セフィラか、ディディエライトか。

だと、思うんだよね………。

でも多分。
アリススプリングスの家にあったならば、セフィラの方が可能性としては高いだろう。

でも長がいるのも、あそこなんだよね………それを考えると??

まあ、どちらでも。

でもきっと、あのコーネルピンの話し方からしてその絵も相当な物だった。
だから、きっと。

「多分、みんな並べれば?めっちゃ、良くない?家族勢揃い………いや、なんか違うな??」

「よく、解らぬが。とりあえず話して、みろ?」

「………。」

この、人は。
石は?

どこまで、どう。

解って、いるのだろうか。
いや、知って………?


いいや、分かってるんだ、知ってるって事も。
でも。

……………ああ、これ。
アレだわ………。


やだ。

無理。


「どう、した?大丈夫か?」

いきなり顔を隠し始めた私に、少し焦った様子の金色。

しかし、私がその胸に潜り込んでいる、理由とは。


「他の二人の絵を見て、綺麗だと思ったら嫌だな」

と、いう。

小さな、ヤキモチなのである。
それに気が付いたら、居た堪れない気持ちになって潜り込むしかなかったのだ。



「………うぅ。」

「早う、話せ。」

そうして。

ポツリ、ポツリと「その理由」を白状するまで、たっぷりと時間をかけて。

少しずつ、空いた隙間に金色を注ぎ込まれた私は 、再びの「ピッカピカ」にされるまで解放されなかったのである。

うむ。


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