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8の扉 デヴァイ
密かな 祈り
しおりを挟む「ところでお前さん。この頃、なにかしてないかい?」
「えっ?なにか??」
仕切り直そうと腰を据えた側から、話が逸れる。
しかし話が彼方此方に散らかるのも、いつもの事である。
そのフリジアの質問に首を傾げながら、心当たりを探していた。
「メルリナイトが、ここへ来る時に。この頃「窓の外が揺れている」と、言うんだよ。いまいちあの子の話じゃ、要領を得ないがなにやら廊下の窓が。モヤモヤして、いるんだと。」
「あ。」
「えっ、やはりお前さんか?」
それって?
あの、私が勝手にやっている「祈り」なのか「想像」なのか。
私の頭の中で、星屑を撒いて歩く、あれの事じゃ、ないだろうか。
「あの………。」
フリジアの黄緑の瞳を見つめながら、その事を話す。
幾分、蝋燭が近くに増え明るくなったテーブル周り。
お茶の支度やオヤツの準備で使った蝋燭がそのまま近くに残されているからだ。
反対に暗くなった部屋の隅に視線を飛ばしつつも、深く頷いているフリジアに視線を戻した。
「成る程ね。その効果が、出始めているという事か。それに、祈りの場所を繋いでいるのだろう?それも大きいかも知れないね?」
「だと、いいんですけど。」
ある意味、「お試し」でもあった、その「祈り」のこと。
日々、少しずつ祈って、想像して、それが「創造」に、なれば。
素敵だと、思った。
「想い」に、「チカラがある」と。
自分でもしっかりと、信じて進んで行けると。
自分の為でも、あった。
動機としては半分、不純。
お試し半分、純粋半分。
でも。
そのまんまで いいって。
何度もぐるぐるして、思ったし、みんなもそう言ってくれるから。
「実際、私も。そうなるって、思って祈ってますけど。そうなる、って。「絶対的な自信」が、………ない、訳じゃないけど…あると断言できるのか。でも効果が出て来てるのは単純に嬉しくもある…。うーーん?」
揺れる灯り、その揺らぎが映る美しい瞳は、細められ暫く閉じた。
再び開いた、その時には。
また、優しい「なにか」を、含んだ。
いつものフリジアの瞳、だったけど。
「その、姿勢。誰に知られる事なくとも、「やろうとする」事、「実行する」事。その中身が純粋である事。それがまた、良い結果を生むんだろうね。お前さん、何か。変わったかい?いい事でも、あったか?」
そうか。
その言葉を聞いた途端、ふと閃きが降りて来た。
そう、微笑みながらそう言ってくれるこの人から伝わる「なにか」は。
優しさ、温かみ、口を開けば出てくるのは私の為を思った、言葉。
優しい言葉ばかりじゃ、ない。
でも。
初めに言われた「ありのままで あれ」という、事から始まって。
厳しい事もあるこの人は、いつだって私の事を全力で考えて動いてくれるのだ。
何故、どうしてなのかは分からないけど。
何の関係もない、「ただのヨル」である、私に。
いつも、勇気付けてくれて、アドバイスもくれて。
「えっ、それって。………「愛」じゃ、ないだろうか。」
「何言ってるんだい。この子は、突然。」
目を丸くして、苦笑しながらオヤツの皿をグイと押す、皺の多い手。
とりあえずはその愛をまた受け取ることにして、「何かあった」のかを口を動かしながら考える事にした。
「あっ、でも多分。」
あれじゃ、ないだろうか。
でも。
ちゃんとできてるのか、分かんないけど。
「あの、この間。ラピスへ帰った時、友達と話したりして。とりあえず「私のやりたいこと」って、「ただ在って 祈ること」で。それに、進む「覚悟」を決めると言うか………自分でちゃんと決められてるのか、いざとなったらまたぐるぐるするんじゃないか、とか。色々考えるんですけど………それですかね??」
「成る程、成る程。「覚悟」ね。それは、それは………。」
「ん?」
深く頷く白髪を見ていたら、何故だか突然、ピョンと膝に極彩色が乗ってきた。
今までずっと、大人しくしてたから。
すっかり、いるのを忘れていたくらいだ。
「どうしたの?」
無言でフリジアを見つめる狐、対してその紫の瞳に揺らぐ事なく、見つめ合っている二人。
しかし私から千里の表情は、見えない。
でも、狐だから。
朝ほど、顔が読めるかは分からないけど。
「そういう、運命かね………。」
「さあ。どう、かな。」
えっ。
なに??
なんでこの二人が、通じ合ってるの???
しかし、この私の疑問などお見通しの筈の狐は、そのまま膝から飛び降り再び部屋の隅へ落ち着いた様だ。
暗い、部屋の奥の方で。
紫の瞳だけが、光っているのが見える。
えっ。
なに?
なんか、怖いんですけど………???
「なぁに、心配する事はない。私達は、もう。同じ過ちは、繰り返さないと、誓ったんだ。」
光る紫に、そう一言だけ言って向き直ったフリジア。
「さて。じゃあ、そのおまじないの案とやらを聞こうかね?」
「あっ、はい。」
そうしてやっと。
私の「星に願いを」案のお披露目が、始まったのである。
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