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8の扉 デヴァイ
意図
しおりを挟む「しかしお前さん。あれは、人間の仕業だと。思える、かい?」
「………いいえ。」
静かな瞳が、私の言葉の続きを待っているのが、分かる。
私が考えを纏めようとカップを手に取りお茶を飲んだ時、顔を上げた茶緑の瞳がそう尋ねたのだ。
「人間の仕業ではないだろう?」と、問い掛けてくるその瞳に。
どういう意図があるのかは、分からなかったけど。
しかし、短く返事をした私の言葉の続きを待つ様に、じっと腕組みをしてこちらを見ているフリジア。
「じゃあ誰の仕業なのか」
それを考えろと、いう事なのか。
そう受け取って、自分の考えを纏める前に改めて考える事にした。
きっと、フリジアの言う事には何かしらヒントがある筈だからだ。
「ん?」
でも?
パッと顔を上げて、茶緑を確認した。
「人間では、ない、って。………えっ。うん?」
目の前には真っ直ぐに私を見据える瞳、しかし頭の中にはあの時の光景がフワリと浮かんで来る。
あの。
何か、黒いものにでも薙ぎ倒された様な。
醜悪な風が吹いて、朽ちてしまった様な、異様な畑の光景。
ちょっと、待って?
確かに「あれ」は、人間の仕業ではないと思ったけど。
じゃあ、何?
毒?
悪魔?
死神、とか?
まじない………の可能性も、捨てきれない。
本部長が反応していなかったから、分からないけど。
それか。
「無に帰した」
パッと浮かんで来る、あの言葉。
本当にそうなのかは、分からないけど。
もし、神が扉から現れて何かの手段で大地を、破壊するとしたら。
「まあ、無い、とも言い切れない………いやしかし………。」
まだ。
早くない??
いや、でもこの世界が既に歪んできているのは確かなのだ。
待て待て。
とりあえずまだ神の出番は早いよ、私的には。
もっと、なんかこう、「どうにもならなくなった時」じゃ、ないの??
だよね?
じゃあそれは無しにして………。
でも。
改めて初めの感覚を思い出す様に、景色を頭に映す。
そう、初めにパッと思い浮かんだ私の「こたえ」は「神」か「神に近いもの」だった。
あの畑を見た時に、感じたもの。
それは規模から程度からして、「軽いもの」とはとても思えなかったからだ。
「怒り」なのか、それとも。
「嘲り」なのか。
「誰か」が怒って、ああしたのか、でもそれなら怒る理由がある筈だ。
でも、大地に畑があって怒る事なんて、そうないと思う。
都合が悪い人なら、いるかも知れないけれど。
それか、私達の事を揶揄っているのか。
やっと出来始めた、畑を壊して。
争いを起こしたいのか、それとも?
失望?させたい?
なんだ、ろうか。
「嫌がらせ………にしても、また畑は作ればいいんだし?あ、でも土を調べないとどの位、悪くなってるのかにも、よるのか…。」
「確かに。「失望」させたいのかも知れないけどね。しかし、多分。あの子達、それに私も心配しているのは。きっと「この事」だと思うんだけどね…。」
私に答える様に、しかし独り言にも聞こえるフリジアの返事はよく分からない内容である。
「あの子達」はきっと、ウイントフークとイストリアの事だろう。
しかし、「この事」とは。
なんだ、ろうか。
揺れる灯りの中、チラリと瞳が黄緑に光る。
その視線は、明らかに「私」を意図していて。
えっ?
畑? 私? 私の 所為 ???
「いや、そうじゃなくてね。」
混乱している私をクスリと笑うと、お茶のお代わりを淹れ始めたフリジア。
とりあえずはその返事に安堵して、新しいお茶の葉をじっと見つめて、いた。
「いや、きっとね。あの子達もそれを心配しているのだろう。」
フワリと湯気が上がるポットの口、注がれる紅いお茶を見ながらその答えを聞く。
フリジアの口調から私の心配をしている事が聞き取れて、お茶と共に「なかみ」もふんわりと温かくなってきた。
変えてくれた白いカップを手に取り、頷きながら続きを聞く。
「畑がそこまで、なってしまったならば。土を戻すにはかなり力が必要になる筈だ。あれは祭祀の後に、豊かになっただろう?枯れたならば、「また祈るだろう」というのは容易に推測できる。だから…。」
皆まで言わずに、私の事をじっと見る瞳。
確かに。
私達は「祈ろう」と、なったのだ。
あの、大地を見て。
だってあんなの。
祈らずには、いられない。
それを?
期待してた人が、「ああした」って、こと??
「………それは 」
「ああ、わざとかどうかは。判らないよ?「そうも思える」って、事だ。しかし、その可能性が高いだろうよ。目的は分からぬが…いやしかしそこまで………。」
私の言葉を否定する様にそう言ったフリジアも、やはり疑念は拭い去れないらしい。
単純に、考えれば。
「力を受けれなかった人達」が、画策したと思うのが自然だろう。
でも。
「あれ」を?
人間が?
しかし、そんな力があるのならば、もう一度光を受け取ろうなんて思わないだろう。
「えっ。………余計に、分からない。」
しかし、頭を抱える私の横でフリジアは冷静に戻った様だった。
「とりあえず、それを考えるのはお前さんの仕事じゃないよ。で?その、ガラスを持って来たんだろう?」
「あ、はい。すっかり忘れてました。」
すっかりこんがらがった頭の中身をポイと、投げてその提案に飛び付いた。
そう、この問題は私向きじゃ、ないし。
そもそもここに来た理由は。
「素敵なおまじないを流行らせるって、事ですよフリジアさん。」
「なんだい、それは。」
クスクスと笑うフリジアにホッとして、お代わりを頂く。
今度のお茶は紅茶だろう、少し優しい甘味があって疲れた頭にピッタリである。
そうしてテーブルに私の石、ガラス、ヴェールを並べると、やっと具体的なおまじない話を始めたのだった。
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