734 / 2,079
8の扉 デヴァイ
流れに 乗る
しおりを挟む「私の 流れに乗る」
「うーーーん。これって。だから、結局?この、複雑な問題も色々な色の事柄も。流れに乗って進めば、見えてくるって事だよね………?」
湯煙の中、ポツリと呟く。
あれから「流れ」「流れ」と呟きつつも、流れで夕食を食べ、そのまま部屋へ戻り、夜の緑が美しいお風呂へ。
そう、ボーッとしつつも流れで一日の終わりへ辿り着いた私は相変わらず唸って、いた。
「ハッ!もしかして??…………あの禁書室の扉が言ってた「白いローブ」って、あのお爺さんのことじゃない???」
「…………そう、だよね…………多分。成る程………。」
緩りと柔らかなお湯を掬いながら、見上げる緑の屋根。
今日も私を見守っている枝達は、無言だけれど同意をしてくれているのは、なんとなく分かる。
「…………なーんか。とりあえず。…………うーん。」
薄明かりの中に浮かぶ、美しい深緑と時折揺れる葉の動き、そこへ絡まって遊ぶマスカットグリーンの湯気。
相性が良い色の揺らぎを見つめながら、大きく息を吐く。
この、心地良く気持ちも良い空間で、ただただリラックスしていると。
なんだか、問題なんて何も無さそうな、気持ちになって、くる、けれど…………???
濃紺の額縁に納まるラピスの夜景を目に映し、ただ星の煌めきだけを感じていた。
多分、今私の頭の中は、空っぽで。
夜の森の奥から聴こえる、微かな葉音と静かな気配。
夜の、森が息づく気配だ。
その「音でも無い音」が感じれる程沈黙していると、とてつもなく心地良くて。
なにしろとりあえず。
その沈黙を思う存分、味わうべく、ただ湯の中に溶け込んで、いた。
「ピャッ!………っあー、びっくりした、もう…………。」
頭上の葉から落ちた滴が丁度おでこに当たり、ウトウトしかけた身体が飛び上がった。
「………あっ、ぶな~、ん?起こしてくれたの?」
普段、水滴が落ちてくる事は無い。
きっとそのまま眠りそうだった私を気遣ったのだろう、「ありがとう」と言いつつ身体を起こす。
「えっ、と…?何してた?ん?考え事、してたんだっけな………。」
「大いなる 流れ」
「ああ、「流れ」ね、流れ。でもさ、うーーん?「流れ」って言うか、これ。前も、思った?な??」
ポワポワと思い浮かぶは、あの島の図書室、「リン」と鳴る秘密の空間。
あの時は。
何の、話をしてたんだっけ?
確か?
私は、「私の地図」が。
「ある」と、思ったんだっけ…………??
ややうろ覚えの記憶を手繰り寄せながら、あの時の色がぐるりと私を包み、深い茶の本棚に囲まれた気分になる。
あの、時も。
私は「私の地図」を、はっきりと認識した筈だ。
これまで何かに導かれる様に、辿ってきた道、それは確かに。
一直線ではないけれど、そのどの道も「必要だから」通って来たのが、あそこまで来て、解って。
「見えた」、気がしたんだ。
「自分の地図」「自分の道」が。
そしてそれは「大いなる 流れ」若しくは「チカラ」が、働いていたと言えるのかもしれない。
「結局、おんなじ、って。事だよね………「地図」も「道」も、「流れ」も。言い方が違うだけで。でも、だから「合ってる」って事で、いいんだよね………??」
「まあ、「合ってる」も「間違ってる」も、ないんでしょうけどね。」
ん?
「あ、朝。…………だよね。」
すっかり独り言のつもりだったけれど、ある意味いつもの光景に話はそのまま続いて行く。
まだ「見張り」が解けていないのかと思ったが、話し相手がいる方がこのぐるぐるも捗るかもしれない。
そう思いとりあえず一つ頷くと、大きく頭の中を占めている疑問をつらつらと漏らし始めた。
「て、言うかさ。「流れ」に乗るでも、「私の地図」を辿るでも良いんだけどさ?………結局、次の扉へは、行く訳で。」
「それで…………。その、あのさ………。」
「やっぱり、ねぇ………うん。」
「ピシャリ」と再び、滴が落ちる。
もしかしたら、木の葉も。
私の口調が、もどかしかったのかも、知れない。
「なによ。」
そのものズバリ、朝に問い掛けられて。
ある程度、私の頭の中を読めるであろう朝の声は口調はキツイが優しくは、ある。
その声にジワリとしながら、自分の中の一抹の不安を。
ポツリと洩らしていく。
「…………やっぱり。あのさ、あそこに。」
「行かなきゃ、いけない………いや、行きたいんだけど。なんだろ、決心がつかない、と言うか?でもな………。」
「あんたが「行きたい」って言えば。銀の家は、反対しないでしょ。」
「解ってるでしょうに」という、口調の朝は立ち上がりバスタブの周りを回り始める。
「まあ、前に言ってた「勇気」ってやつ、じゃない?」
「………勇気?」
「そう。子供達やここの人達に「勇気」が必要な様に、依るにも必要だって事よ。次へ進む為の、「勇気」がね。私はある意味、正解だと思うけどね。長の処へ行ってから、次の扉へ行った方が。いいと、思う。」
「…………。」
そう、具体的には何も、言っていないけれど。
やはり朝には、バレていた様だ。
私が躊躇している、その内容。
「次の扉へ行く前に 本命に会う」
その、事に。
「あんた達の「なか」が、何がどう、なってるのか私は分からないけど。悪い様には、ならないでしょう?それは、解るわよね?」
「…………うん。」
「多分、行けば。「なにか」が、見えるわよ。なにしろこのまま行く訳にもいかないんでしょ?それなら一つでも、「ハッピーエンド」で勇気を貰っていけば。いいんじゃ、ない??」
「…………ハッピーエンド、になるかなぁ…。」
つい、不安がポロリと口から洩れる。
白い石肌をツルツルと撫でながら、灰色の軌跡を追う。
期待する「答え」を貰うために、その青の瞳を見た。
「大丈夫よ。それにあんた、「ハッピーエンド以外」の再会、する気あるの?」
「…………確かに、無いわ。」
「なら、そんな心配しないでいつもみたいに。能天気に、スキップして行けばいいのよ。」
「うっ。かしこまりました。」
届いた答えに安心して出た、大きな溜息。
再びくるりと丸くなった灰色のフワフワは、バスマットの上だ。
そろそろ上がろうかと思っていたが、それを見て少し肩を温めようと思い留まり、再び湯に埋もれる。
そう、私には。
デヴァイでの大仕事「長に会う」という一大事が、待っているのだ。
この頃の色々で、すっかり何処かへ隠れていたこの「本題」。
しかし「次の扉」という具体的なカタチが見えて来た所で、どうしても外せないこの本題が浮き上がって来た。
それに。
あの時、黒の廊下を走って感じた、あの光………。
結局、あの人は。
どんな、カタチで?
生き、て…………?
「………駄目だ、いかん。」
ブルブルと頭を振り、ゆっくりと立ち上がる。
この議題の所為か、長湯の所為か。
頭が働かなくなってきた感覚と、確実に湯あたりする事が予測される、自分のこと。
とりあえず、朝に誰か呼ばれる前に。
上がった方がいいのは、確か………。
「ちょっと、失礼。」
「なに、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。多分。」
「潰さないでよ??」
そうして。
フラフラとマットへ足を付け、小言を言われながらも。
「その件は、また明日」と自分に言い聞かせ、ノタノタと着替えを始めたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる