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8の扉 デヴァイ 再
守りの設置 2
しおりを挟む臙脂色の密な絨毯、豪奢な硝子の青い 灯り。
濃茶の重厚な腰壁、地紋が美しい 紺色の壁紙。
シャナリ シャリリと 鈴が鳴る
ピンと張った 空気の中 涼やかに響く、それだけが。
私達の 道中を「確か」に 知らせている。
光達が護る中
静かな緊張と共に ゆっくりと黒の廊下を進み
目的の場所に、出た。
始めから、濃茶の廊下へ出れば 良かったのかも知れないけど。
何故だか 私の頭は「黒から 濃茶へ」
「切り替え」「抜ける」「空間」「次元」
くるくると廻るカケラ達に そう 導かれていて。
何故 ここだけ 「色」が 違うのか
何故 他の廊下と違い 木の温もりがあるのか
何故
どうして
人は ここで祈りを。
ずっとずっと いつからかは わからないけど
捧げて いたのか。
長老達は いつから 「力の行方」が あそこだと
知っていたのか
「祈り」は 何処へ
「想い」は
「願い」は あった?
ずっと ずっと
みんなは 「なにに」祈って。
廊下を進みながら思う 沢山のこと
くるくると廻り続ける 様々な色の カケラ
しかし私の「なか」では。
"しっかりと光る 「確かな いろ」"
やはり「想い」は ある。
まだ ここに、上に。
だって 「あの時」。
私は ここから 「外」へ 跳んで
やっぱり 「光」は 残って いて
みんなの「想い」は 「光ってて」。
ずっとずっと 「残滓」が 残り
それがまた きっと「縁」を 繋いで。
「私を 空へ 導いた」
「知って」欲しいから
「見て」欲しいから
「憶えていて」「繋いで」欲しい から。
その「光」が あった ことを。
今は そう 思う。
ここに 上があること
雲間と 空は 同じこと
そして 「せかい」は やはり 「繋がっていて」
「みんな」「同じ」「ひとつ」で。
ただ「別々」だと 「思って」いて
そう「思っているうち」は そうでしかなくて
きっと「無限」へ 「可能性の場」へ 出たならば。
それはすぐに 「開く」んだ。
だって 「空」は「上」は 「雲間」「天」は。
いつだって 見上げれば私達の 頭上に。
あるの だから。
重くはないが、ぐっとくる胸
大きく息を吸って、立ち止まった私に。
背中から、暖かい温もりが伝わって くる。
そうだ。
くるりと振り向いて、その金の瞳に応え
スッと手を差し出す。
瞳の色で返事をした彼は、そのままその手を取って。
美しく精巧な 大きな木が守っている、その扉を開けた。
あの時 見た彫刻は 実があったかな?
そんな事を思いながら、手を引かれ大きな礼拝堂の深い絨毯を進んで いく。
「誰もいない」と 思っていたけど やはり無人のここ
変わらず薄暗く 重厚で静かな空間は、離れた蝋燭の灯りだけが、息をしている様で。
その揺らぎに目を留めると、空間全体が私に向かって解け
重かった木々が呼吸をし始めたのが 解った。
ああ 成る程。
そういうこと なんだ。
この「場」に 呼吸を「合わせる」こと
「同調」「調和」すること
「同じリズムで 刻む」こと。
意識していなかったが、そうなったのだろう。
深く古い、木々の呼吸が自分のリズムと重なって
聴こえた始めた。
ここの木材達は、きっと腕の良い職人が魂を込めて彫ったのだろう。
前から そうだと思ってたけど。
しかし、新しくなった私はそれがより、「はっきりと」わかる様になって。
だから ここが 「正解」。
小脇に抱いた、姫様を見ながらそう 思った。
「 ねえ? て、言うか…………。」
私の手を引きスタスタと祭壇前まで歩いたこの人は、手を離してからも腕組みのまま
何かを待っている様で、動きはしない。
そもそも。
私 シンラを 迎えに。
行くつもり だったんだけど ???
直接ここへ来た、理由について尋ねてはいない。
しかしきっと、「分かって」ここへ来ているであろう金の髪を 眺めながら。
私も暫く、この静かな空気を味わっていた。
サラサラ、気持ちいい。
なんか 自分を 撫でてる みたい。
静かな温もりを吸いながら、自然に動く手はいつの間にか 姫様の髪を撫でていた。
寂しい ような 嬉しい ような。
しかしきっと「慶び」である筈の このこと。
ずっと手にあった訳でもないのに、ここへ置いていくとなるとなんだか複雑な様な微妙な気分だ。
しかし私がそんな事を思いながらのんびりと髪を撫でていると、少しだけ近くの「いろ」が変化した事に気付く。
そう あの 金色の微妙な変化
それを察知して振り向こうとした瞬間、その反対側に「あるもの」に、気が付いた。
「 あ。」
そこに音も無く「いた」のはシンだ。
顔を上げその、赤い瞳と目が合い反射的に振り返って。
金の瞳も確認する。
うん
大丈夫。 いや 心配してた 訳じゃないけど
この二人って?
結局? どう? なってるのかな
金色の気配から、向き直った方がいい意図を感じ
視線をシンに戻す。
「準備が、調ったのだな?」
振り向きざま、そう 問い掛けられて。
「はい。」
意外としっかり、そう答えられた自分に感心する。
なんだか おかしな感じだけれど
きっと私は。
そう 自分が瞬時に 答えられた ことで。
また 自分が「一歩進んだ」「上がった」のが
解ったんだ。
しっかりと強く、しかし少し柔らかく私を見つめる赤も 少しは変化しただろうか。
「無」ではない、その色を見ながら少し安心して
これからどう、するのかとシンの抱えているシンラをじっと見る。
しかしなんだか。
「シンが シンラを抱える」様子が、面白くて
でもきっと「私も似た様なもの」だと 解って。
私は一人、ニヤニヤと笑って いた。
うーん、でも シンは 今 黒いから
私は白 姫様は 銀
じゃあ まあ 近い けど 「色違い」?
みたいな ええ うん
いやいや、とりあえず?
さて。
「置く」「居てもらう」「護り」
「私達の 代わり」いや?
「新しい 御守り」だな?
ここで物事を決めるのは「私」だ。
それが解っている私は、そのままくるくるとカケラを舞わせながら
祭壇の上を眺め、あの「場所」が「空いていた理由」に気付く。
「ああ そう か 成る程」?
うん? でも。 そうなのか。
ほうほう なんだ、やっぱり。
うまく できてるんだな。
あの、初めに感じた「空いてる」感覚、そこに相応しい「神」の感触、収まり具合を脳内で確認して一人頷く。
そう きっと あの「白の場」、各家にある「祈りの場」にあった、凹み
あれだって「同じ」だ。
きっと。
あそこはやはり、「神」が座す場所でそれは「今は 姫様とシンラ」だけれど
「なんでも」、良くて。
「光」であれば
「神」で あれば
自分が そう思えるならば。
「それが 護りに なる」
きっと、そうなんだ。
瞬間 私の「思う」通りに白い光が走り
あの「白き祈りの場」と 「ここ」が 繋がったのが わかる。
私が 繋げていた 「ひかり」
それはあの、「上」から見た いつかの図形
その形の、まま。
全体に光が通り抜け 「真ん中」のここと 改めて「今」。
繋がったのが、解ったのだ。
自分の中に満ちる「納得」、「解った」こと
「やっぱり そうだ」という 想い。
そのままゆっくりと顔を上げ、赤い瞳を確認すると
金が混じり始めた その瞳は。
ゆっくりと頷いて、私と一緒に歩を進め
静かに段を上りその正面にある祭壇に。
シンが シンラを置いて
私が 姫様を 置いた。
「うん、オーケー。」
正直、「何か起こるかな」なんて 思っていたけれど
特段煌びやかな変化はなく、しかし私の「真ん中」に「暖かい なにか」が入ったのは、解る。
「ふむ?」
大きな、重厚な造りのアンティーク
その「祭壇」「神の座」「あるべき場所」にすんなりと嵌った二人は、やはり「初めからそこにあった」様に馴染んで いた。
やっぱり いいな
そうか そうなんだ
「あるべき場所」に 「ある」と いうことは
こういうこと か。
右から見たり 左から舐め回したり
しゃがんでみたり 離れて みたり。
胸に手を当てながら、二人をくまなく確認、する。
「確認」というか 「据える」というか
「設置する」というか
私の「なか」での その行為は。
所謂よくあるパターンで「よく できたもの こと」をようく、見て。
馴染ませる とか 浸透させる とか
そんな様な、ことで。
それを行う事により、より「使える」もの
きっとはっきりと「記された」、その「楔」へ向かって 瞬時に「跳べる」ような もの
自分の「なか」への「刻印」が調ってきたところで。
なんだか 胸が 「熱く」?
いや 上 が 「暑く」?
「ん??」
なんだか頭が、熱い様な気がして手を当てながら
顔も上げる。
えっ
「 あれ? えっ? ああ、成る程?? ?」
そこに 見えるは 「白き 光」
そう、それはあの真っ黒だった「天窓」だ。
真っ黒 なのか 真っ暗 だったのか。
それは 分からないけど。
しかし今は、薄く発光する様な「白」で。
それはきっと「光」のいろ
しかし白過ぎて「陽の光」なのかはまだ分からない。
でも。
なんにせよ 「光」は降りた
場は 「成った」んだ。
それが、わかって。
ただただ、その美しく儚い、「白」を。
じっと 眺めて、いた。
少しずつ 「揺らぐ」様な様子を見せ始めたその白に
安心して視線を戻す。
多分 あれは もう大丈夫
あのまま「成長」して ちゃんと 「ひかり」になる筈だ。
そう思って振り向いた私の背後には、金色が転ばぬ様に構えながら待っていたし
シンは。
私達の様子をただ静かに 見ている。
その 姿を見て自然と口を突いて出る ことば
「ありがとう。」
この「ありがとう」には。
沢山の、意味が詰まっても、いる。
ここまで 見守ってくれて 「ありがとう」
これからも ここに きっといてくれる
まだ ここが 安定するまで
私が 納得 するまでは きっと 代わりに
いてくれる 「ありがとう」
シンラを 連れてきてくれて「ありがとう」
私にいつも 勇気をくれて「ありがとう」
なんだか、まだまだ ある気がするけれど。
その、口には出さない内容をきっと解っている彼は
少しだけ瞳を緩めてこう 言った。
「そうだ、安心して。貪欲に進み「最高最善の道」をゆけ。しかし執着はするな。それに囚われた瞬間、お前の道は色鮮やかに変わりまたドラマに巻き込まれることとなろう。どこまでも澄んで美しい、自分だけの道を旅するのだ。ここからがまた、始まり、何度でも生まれ変わり進むこと。日々脱皮し羽化する様に、飛ぶこと。もう、知っているだろうがな。」
「 うん。 ありがとう。」
その、赤金の瞳を受け
チラリと過ぎる
「シン」 「一人で」「姫様?キラル??」
しかし、その「心配」の澱を瞬時にナガが シュルリと出て捕まえ黎が燃した。
その ある意味「自動」の動きを 見て。
「そうよ」「心配じゃ ない」「私のすること」
「やること」「進む道」「みんな」「私」「全部のひかり」
繰り返さない、よう
囚われない、ように。
もう一度、しっかりと自分の「位置」を「自覚」して。
「進む」んだ。
そう 「天」を 見て。
「振り返ることはない。」
「うん。」
その声に、天窓から戻った視線
しかしその場にあるは黒ばかりで、既にシンはいない。
「ありがとう。」
その、暖かくも見える「黒」を目に映しながら。
胸の 真ん中から湧き出てくる言葉を紡ぎ
「私の色」を探す。
見渡す静寂の中
なんとも言えない優しい色を浮かべている、その金の瞳にまた、感動して。
自然に湧いてくる、星屑を溢しながら。
もう一度、しっかりとこの光景を心に留め
礼拝堂を 後にしたのである。
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