透明の「扉」を開けて

美黎

文字の大きさ
1,863 / 2,079
22の扉 生成の場

未だかつてない物語 再

しおりを挟む

翌る日の朝、食堂への道を テクテクと歩いて いると。

 なんだか「いい空気」が流れているのがわかって
 「なんだろう?」と思いながら 廊下を進んでゆく。


 「それ空気」は
 別の言葉で言えば きっと「予感」で
確かに食堂の扉が見えてくると同時に。

そこから「静かなワクワクの雰囲気」が流れ出しているのがわかって、なんだか私もワクワクしてきた。

 そしてまた 何故だか「そうした方がいい」と思って閃いて

 扉の前に立ち止まって「その気配」を味わって いたんだ。




    ふぅ む 。


どうやら、中に居るのは
 イストリア 本部長 極彩色と玉虫色という
まあ「いつものメンバー」であるがしかし
 最近にしては珍しく、なんだか盛り上がっている。

 そう、ここのところ世界は
「絶賛崩壊中」だからして
朝食時の話題も難しい色の日が多いのだけど
 なにやら今日は「みんなが嬉しそう」なのだ。


    ふむ ?


 そして その「雰囲気」は
確かに「盛り上がっている」とも言えるが
 「成功」とか「祝賀」とか
そんな感じではなくて「静かな喜び」や「納得」の気配が 強い。

 だから それが なんでなんだろうと 思って。

 「立ち聞き」すべく、扉の前に陣取ったので ある。





「……………ほう、そういう結果になった、と。」

「そうだね。きっと、纏ったら見せてくれるのじゃないか?」

「………成る程な。確かにそれならば。………と、言うか、なのか。」

「そうだろうな。」
「何がだ?」


 "なんとなくの予感" だったけれど

  「その声」を聞いて
 自分が「立ち聞きしようと思った理由」が
  「私の話をしている」と
   と 気付いて。


同時に明晰君へ「なんで?」を送りつつも 耳はきちんと「みんなのおと」を取り込み始めている。

だから とりあえずはそのままピタリと 
 目を 閉じて。

 耳だけ開いて、静かに 話を 聞いていた。


「………そうだなぁ。あれは、いつ頃だった?もう大分前の様な気がするが。」

「そうだな。」

「そんな話をしたこと自体、すっかり忘れてたが。まああいつならやるとわかっていたから失念していたんだろう。」
「まぁな。」
「そうなのかい?」

「ああ、ウイントフークは以前からそう言っていたんだ。どう、やるのかは分からないが、ヨルはやるだろうって。」
「フフ」
「なんだ。」

「いいや、君もやはりあの子のファンだからね。信じずにはいられないだろうよ。」

「ファン。確かになんだかんだ、ハーシェルの事は言えないからな。」
「………俺はお父さんではない。」

「フフフ。まあ、それは良いよ。なにしろ新たな門出を見守る事くらいしか、私達にはできないからね。」

「ああ。」

「しかし、ヨルが何処かへ行ってしまうのじゃなくて良かった。…?いいのか?まあ、俺はとしてはここにいてくれた方がいいんだが。」
「………どうなんだ、そこの所?」

「あいつにとって「場所」は、関係ないからな。」

「成る程?そうか。」

「「あれ」はひたすらに「自分のゴール」へ進んでいるだけに過ぎず。あれこれ人間どもの些事を考える事はあれど、「どうやってやるか」、それは考えてもないだろうよ。」

「………成る程。たまに悩んでそうな時はあるけれど。確かに「悩んでいる」のとは、少し違うものね?」

「………どうなってるんだろうな、あいつの頭の中は。」
「俺もそれは思う。」

「フッ。どうもこうも。単純明快、至ってシンプルで、あの娘は複雑な事など考えてはいないさ。」
「そうだな。」
「そうかもな。」

「ただ、「それが当たり前だから」。「自分の理想」…いや、理想とは違うな。「すべき事」でも、ない。既存の言葉が当て嵌まらないから難儀だが、「自分が納得できるまでやる」んだよ、あれは。長い事色々やってきたからな。今度こそは、そう せねば、納得いかない…進めない?成功できない、………ああ、「完成しない」んだろうよ。」

「…………成る程。確かにそれなら解る。」
「まあ、お前もここ一番の時は脇目も振らずにやってるからな。成る程、そういうことか。」

「あの子のいい所は「脇目を振りながらやってる」所だけどね。」

「違いない。」

「………しかしなぁ。………そうか、でも俺は。どうやって気焔を人にするのか、とか、そんな方向で進んでいるのかと思っていたが。やはり「そんなタマ」では、なかったってことか。」

「ああ。」
「そうだね。あの子は自分の事だけ考える様な子じゃないよ。」

「なんでも拾ってくるからな。」
「フフ」



「………しかし。「物語が現実に」、か。」

「全てが仲良く?暮らすなんて。俺には想像が付かなかったけれど、本当に世界は繋がり始めているからな。あの時は分からなかったが、最近は「そういうことなのか」って、確かに感じる事があるよ。大分森も変わってきているし。」

「生態系が変わるとか、扉が繋がるとかは、ある意味そんなに大きな事では、ない。あれの特異な所は「人の意識を変える」所だ。」

「あ~、なにか。「当てられる」、よな。」

「以前は彼女の「情熱に押されている」のだと、思っていたけど。最近、姿も見せないし、静かなのに「ジワリとくる」、よね。」
「分かる。俺は前より感じる。ここでも飛びやすくなったもんな。」

「そうか。成る程?」

「あ、お前また勝手に他の区画でいきなり調査始めるなよ?おい」

「フフ、悪いね、いつも。ちゃんと言っておくから。」
「もう聞いちゃいない。」


「しかし、とりあえずはなにしろ。最良の結果になった、という事か。」

「まあ、あの子にとってはこれからなのだろうけどね。」
「まぁな。」

「ふぅん?しかしどうして「最良」?何がだ?」

「………それは「繋がり」を見れば解るだろう?「まじない力」、「能天気な性格」、「石を創り出せる事」と「青の本」、「金の家」と「守り神人形神との符合」。あれのしてきた事を全て繋げれば、「そうなるのが順当」だ。………あれは今、全てのピースが嵌って、「そうやる」と決めた筈だ。………どこまで本人が考えてるかは、分からなんけどな。」

「成る程。然るべき所へ収まってるってことか。」
「そういう事だな。」


「そして、それを。から、。」

「そう、例えそれが物語として描かれたものだとしても、皆が「物語だと思っていたとしても」。何処かでそれを「本当だ」と信じる力が、生まれるだろうな。」

「…………成る程。」

「その、微妙な。曖昧な。しかし「世界を動かす 力」は、人間ひとの奥に仄かに灯る、炎だ。それがあれの目的なのだろうし、そういう風に灯るのが、一番、いい。」

「ああ。」
「そうだな。」

「もう、強制される時代は終わった。」

「確かにあの子は最近、造船所でも直接はそう前に出ない。………成る程、そういう事か。へぇ、凄いな。」

「あれがそうしているのは無意識レベルだろうが、意図的には「そう」だろう。」

「成る程ね。」

「ま、これからが楽しみだ。」


  あれ  コレ

   千里は私に気付いてるな?


その「まとめのセリフ」で そう気付いて。

 だけど
なんだか 今更しれっと入って行くのは気が引けて、くるりと踵を返してトコトコとホールへ 向かって歩いてゆく。

 
  そして 「みんなせかいの 言っていたこと」

 その「いろ」がくるくる廻るのを観て
  ニヤリとすると。


「   なるほど   なるほど。」

 ゆっくりと 大きな扉を開け

  肩の力を 抜いたので ある。







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

笑う令嬢は毒の杯を傾ける

無色
恋愛
 その笑顔は、甘い毒の味がした。  父親に虐げられ、義妹によって婚約者を奪われた令嬢は復讐のために毒を喰む。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...