王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒

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聖女時代

新な候補者に振り回される毎日

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 平民のソミールが聖女候補として、共に学ぶようになり数日。
 候補者同士の関係にも変化が現れる。
 常日頃から下位貴族や平民に対し、厳しいエリベルタ。
 王子の婚約者兼聖女候補として、個人的な対面を邪魔されたラヴィニア。
 二人はソミールに対し距離を置き、拒否を宣言している。

「あっ、コルネリウスさん。私に会いに来てくれたの? 嬉しい。お茶の準備をするね!」

「いや、今日はソミール嬢に会いに来たんじゃないんだ」

「……あっ、もしかしてラヴィちゃん? なら、私が呼んで来るね」

「違うんだ」

「では、司祭様?」

「いや、今日はファビオラ・アンギレーリ嬢に会いに来たんだ」

「……ファビちゃんに?」

「……ソミール嬢は、他の聖女候補たちをそのように呼んでいるのか?」

「ファビちゃんのこと? 他の候補者の皆は違うみたいだけど、私は聖女候補同士仲良くできたらって思って呼んでるの」

「そうなんだな」

「ファビちゃんを呼びに行きたいけど、これから祈りの時間なの」

「あぁ。その後、約束している」

「そうなんだね。なら、また三人でお茶会をしましょう」

「いや、アンギレーリ嬢と二人で話したいと思っている」

「……二人だけ? もしかして、私……コルネリウスさんに嫌われちゃったのかな?」

「いや、そういうわけじゃない。私は王族として聖女候補たちと個別に時間を設けている」

「個別に?」

「ああ」

「そっか。なら、私もコルネリウスさんと二人だけでお茶会が出来るんだね」

「……そうだな。すでに日程は決まっているので、全員との対面が終わってからとなる」

「そうなんだね。今日は、ファビちゃんの番なんだ?」

「ああ」

「祈りが終わるのは、いつも違うの。コルネリウスさんは、何時頃まで時間があるの?」

「今日は二時間後には戻らなければならない」

「そうなんだね。なら一生懸命祈らないと。それじゃ、コルネリウスさんまた今度」

「ああ、また」

 ソミールが祈りの場に到着すると、すでに全員が整列していた。

「はぁ、間に合った」

 遅刻しているソミールは全員に謝罪しないどころか、間に合っていると発言。
 その言葉にエリベルタとラヴィニアは拳を握り、ソミールを睨みつける。

「……ソミール様、遅刻ですよ」

 聖女候補代表としてデルフィーナが、ソミールを窘める。

「フィーナさん、ごめんなさい。コルネリウスさんが祈る前の私に会いに来てくれて、『ご挨拶したい』って言われちゃたの。祈りがあると分かっていながら、お断りしなかった私が悪いんです。コルネリウスさんを許してあげてください」

「……事情があろうと、遅刻しないようにしてください。遅刻した際は、皆さんに謝罪するように」

「はぁい。皆さん、コルネリウスさんを悪く思わないでね。私が確り彼に伝えておくから」

「ソミール様が気を付けることです」

「私は祈りがあると話したんだけど、コルネリウスさんに引き止められちゃって……」

 遅刻を気をつけるよう諭すデルフィーナに対し、ソミールはすべては引き止めたコルネリウスが悪いと責任転嫁し一向に謝罪しなかった。
 その二人の会話に、聖女候補たちは苛立ちを増す。

「……デルフィーナ様、ソミール様も今後は遅刻は控えるでしょう。私たちは心を静め、祈りましょう」

 これ以上言っても、ソミールには伝わらないと感じ仲裁に入る。

「……そうですね。では、皆さん。本日も神に祈りを捧げましょう」

 候補者はいつものように祈りを捧げる。

「レンス、ありがとう」

 隣に着くソミールが、小声で私に感謝を述べる。
 なぜソミールが私に感謝を述べたのか引っかかってしまい、祈りに集中できなかった。
 冷静に祈らねばと思うのに、ソミールの言葉の意味を考えてしまう。
 
「……はっ」

 まさか、ソミールは私がデルフィーナからソミールを守ったと思っているの?
 それはない。
 私はソミールに何を言っても伝わらず苛立ちがますだけ、それなら祈りの時間に移りましょうと思っただけ。
 むしろ、私が助けたかったのはデルフィーナの方。
 ソミールの勝手な思い込みに気づくと、隣のソミールを睨みつけていた。 
 これではいけないと思い、深呼吸をして聖女に向き合う。
 集中するのに少し時間は掛かったが、いつものように誠心誠意の祈りを捧げた。

「……本日の祈りを終えます」

 祈りを終え、祈りの場を出ると司祭が扉の前で待機していた。
 扉の前に司祭がいることに以前は驚いたが、今は驚かない。

「何かありましたか?」

「……いえ、特には。いつも通り、聖女様に祈りを捧げました」

「……そうですか。今日はいつもより時間が掛かっていたので、何かあったのではないかと確認に参りました」

「いつもより……ですか?」

 聖女候補の全員が時間の確認を求める。
 
「本日の祈りは、二時間ほどかかっております」

「「「「「「「二時間?」」」」」」」

 認めたくないが、ソミールが祈るようになり時間は大幅に短縮していた。
 今日の祈りの二時間は、ソミールが聖女候補として祈る前より長くなっていた。
 聖女候補全員がソミールを確認すると、なぜか彼女は笑っている。
 
「二時間……司祭様、あの……コルネリウス王子は……」

 コルネリウスが本日教会を訪れたのは、聖女候補兼婚約者候補としてファヴィオラと個人的に対面予定だった。

「コルネリウス様は、王宮に戻られました。『お茶会は日を改めて、五日後にはどうか?』と言付かっています」

「……そうですか、承知いたしました」

 この時ソミールは嬉しそうに微笑んでいたが、その意味に気づく者はいなかった。
 祈り終えた時のソミールは、真面目に祈っていた。
 誰も、彼女が祈りを怠っていたとは思っていない。
 そんな時もあるのだろうくらいにしか感がなかった。
 実際ソミールは、真剣に祈っていた。
 祈りの内容は……

『女神様、聞いてください。私はファヴィちゃんと仲良くしたいのに、お茶会に誘ってくれませんでした。意地悪されたなんて思いたくありません。私はただ、皆と仲良くお茶会をしたかっただけなんです。もし、私抜きでコルネリウスさんとファヴィちゃんがお茶会していたら、私は嫌われているのかな? そんなの嫌だよ。私はファヴィちゃんが大好きなのに。私がファヴィちゃんに意地悪されているって、コルネリウスさんが知ったら心配しちゃうよね? コルネリウスさんに心配掛けたくないので、今日のお茶会は中止にしてください』

 真剣に祈り続けていた。

「コルネリウスさんが来るのは、五日後かぁ……」

 ソミールの呟きは、誰にも聞こえていなかった。
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