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聖女時代
一人になりたい
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「お嬢様、お手紙が届いております」
「……まさか、その相手って……」
「はい。ベネデッタ・パラッチィ子爵令嬢です」
「はぁ……」
最近、つい先日卒業した聖女候補から頻繁にお茶会の招待状が届き困惑している。
一ヶ月ほど前。
「もうすぐ卒業で、皆さんとの時間も残りわずかだと思うと悲しいです。卒業後なのですが私の婚約が内定しましたので、ぜひ私主催のパーティーに参加していただきたく招待状を持参いたしました」
卒業を控えたベネデッタ・パラッチィ。
子爵令嬢で、聖女候補という立場を利用し婚約活動に心血を注いでいるような令嬢。
婚約話や令息についての情報収集が優れている令嬢。
そんな彼女の婚約が決定した。
「ありがとうございます」
「もちろん来ていただけますよね?」
「はい、参加させていただきますね」
半ば強制的にも思えたが、断ることもないと軽く思ってしまい安易に返事をしてしまう。
「嬉しいです。あっ! 婚約祝いのプレゼントですが今人気のデザイナー、モリー・スウェンリー様のドレスをお願いしますね」
冗談なのかと彼女を確認すれば、どうも本気の様子。
婚約祝いに、親戚でも家族でもない人にドレスを強請られるとは思わなかった。
「……は……い……」
婚約について情熱を注いでいる令嬢という印象で、このように厚かましい人間とは思いもよらなかった。
私以外の聖女候補にも、宝石一式や靴、まだ結婚もしていないのに新居に合うチェストやベッド強請り周囲を困惑させていた。
そして、パーティー当日。
卒業していった聖女候補に対面すると、本日の主役の話になる。
「私には、『馬車が欲しい』と強請られましたわ」
「私は、『新婚になった暁には、避暑地の別荘を半月ほど貸してほしい』と……」
「私にも、『領地観光をしたいので、その時は屋敷に滞在させていただけませんか』と願われましたの」
「厚かましいにもほどがありますわ」
「彼女のが、あのような人だとは知りませんでした」
彼女は本性を隠していたのかもしれない。
卒業と同時に本性が現れた。
社交界では、彼女の見栄について耳にしていた。
確かに教会で学んでいる間は私たち聖女候補は爵位関係なく対応していたが、卒業したのだから考えも卒業してほしい。
卒業後にも『聖女候補』という立場を利用し、高位貴族の先輩方に非常識な物を強請るとは思わなかった。
「それで、皆さんどうされたんですか?」
恐る恐るどのように対応したのか聞いた。
全員がうんざりした表情を向けるので察っする。
「……今回は、新婚ということで目を瞑りましたわ」
「私も。了承するまで何日も居座る勢いでしたの。夕食も招待していないのに、召し上がって行ったわ」
「……その場限りでどうにか誤魔化そうと思っていたのですが、この分だとそれも面倒になりそうですね」
贈り物で終わった人間は終わりだが、宿泊を許可してしまった人はこの非常識がまたあるのかとうんざりしている。
「教会の方にも『結婚は大聖堂で行いたいから聖女候補であったので善意で大司祭様に祝っていただけないか』と話しているのを聞いてしまいましたわ」
聖女候補だけでなく、大司祭にお願いしたと聞き驚愕する。
「皆さん来てくださったんですね、嬉しいです」
張本人が挨拶に現れ、表情を作り切れなかった。
「「「「「「「……ええ……婚約、おめでとう」」」」」」」
「紹介しますわ、婚約者のオリバー・クロフォード様です」
「オリバー・クロフォードです。聖女候補様方にお会いできて光栄です。本日の内定パーティー、ぜひ楽しんでいってください」
あなたが婚約した相手は、かなりの非常識な令嬢ですよ……と、皆が彼に同情してしまった。
「「「「「「「……ありがとうございます」」」」」」」
「招待客にも皆さんをご紹介させてください」
「「「「「「「いえっ、私たちは……」」」」」」」
非常識な令嬢の友人だと思われたくなく断ろうとしたのだが、ベネデッタの行動は素早かった。
「皆さぁん、私の親友たちをご紹介しますね。私が聖女候補で共に学んだ……」
私たち彼女の虚栄心を満たすのに利用された。
親友と紹介された私たちのほとんどが『高位貴族』、下位貴族だったとしても全員が『聖女候補』だ。
社交界で自身が『聖女候補』と自慢していた彼女にとっては、私たちは承認欲求を満たすのにうってつけだったよう。
今回で彼女とは距離を取ろう、縁を切ろうと考えてしまった。
「はぁ……」
聖女候補の私たちは、見世物扱い。
ようやく人込みから離れ一人になる。
こんなことなら、パーティーに参加しなければ良かったと心の底から思ってしまう。
「……まさか、その相手って……」
「はい。ベネデッタ・パラッチィ子爵令嬢です」
「はぁ……」
最近、つい先日卒業した聖女候補から頻繁にお茶会の招待状が届き困惑している。
一ヶ月ほど前。
「もうすぐ卒業で、皆さんとの時間も残りわずかだと思うと悲しいです。卒業後なのですが私の婚約が内定しましたので、ぜひ私主催のパーティーに参加していただきたく招待状を持参いたしました」
卒業を控えたベネデッタ・パラッチィ。
子爵令嬢で、聖女候補という立場を利用し婚約活動に心血を注いでいるような令嬢。
婚約話や令息についての情報収集が優れている令嬢。
そんな彼女の婚約が決定した。
「ありがとうございます」
「もちろん来ていただけますよね?」
「はい、参加させていただきますね」
半ば強制的にも思えたが、断ることもないと軽く思ってしまい安易に返事をしてしまう。
「嬉しいです。あっ! 婚約祝いのプレゼントですが今人気のデザイナー、モリー・スウェンリー様のドレスをお願いしますね」
冗談なのかと彼女を確認すれば、どうも本気の様子。
婚約祝いに、親戚でも家族でもない人にドレスを強請られるとは思わなかった。
「……は……い……」
婚約について情熱を注いでいる令嬢という印象で、このように厚かましい人間とは思いもよらなかった。
私以外の聖女候補にも、宝石一式や靴、まだ結婚もしていないのに新居に合うチェストやベッド強請り周囲を困惑させていた。
そして、パーティー当日。
卒業していった聖女候補に対面すると、本日の主役の話になる。
「私には、『馬車が欲しい』と強請られましたわ」
「私は、『新婚になった暁には、避暑地の別荘を半月ほど貸してほしい』と……」
「私にも、『領地観光をしたいので、その時は屋敷に滞在させていただけませんか』と願われましたの」
「厚かましいにもほどがありますわ」
「彼女のが、あのような人だとは知りませんでした」
彼女は本性を隠していたのかもしれない。
卒業と同時に本性が現れた。
社交界では、彼女の見栄について耳にしていた。
確かに教会で学んでいる間は私たち聖女候補は爵位関係なく対応していたが、卒業したのだから考えも卒業してほしい。
卒業後にも『聖女候補』という立場を利用し、高位貴族の先輩方に非常識な物を強請るとは思わなかった。
「それで、皆さんどうされたんですか?」
恐る恐るどのように対応したのか聞いた。
全員がうんざりした表情を向けるので察っする。
「……今回は、新婚ということで目を瞑りましたわ」
「私も。了承するまで何日も居座る勢いでしたの。夕食も招待していないのに、召し上がって行ったわ」
「……その場限りでどうにか誤魔化そうと思っていたのですが、この分だとそれも面倒になりそうですね」
贈り物で終わった人間は終わりだが、宿泊を許可してしまった人はこの非常識がまたあるのかとうんざりしている。
「教会の方にも『結婚は大聖堂で行いたいから聖女候補であったので善意で大司祭様に祝っていただけないか』と話しているのを聞いてしまいましたわ」
聖女候補だけでなく、大司祭にお願いしたと聞き驚愕する。
「皆さん来てくださったんですね、嬉しいです」
張本人が挨拶に現れ、表情を作り切れなかった。
「「「「「「「……ええ……婚約、おめでとう」」」」」」」
「紹介しますわ、婚約者のオリバー・クロフォード様です」
「オリバー・クロフォードです。聖女候補様方にお会いできて光栄です。本日の内定パーティー、ぜひ楽しんでいってください」
あなたが婚約した相手は、かなりの非常識な令嬢ですよ……と、皆が彼に同情してしまった。
「「「「「「「……ありがとうございます」」」」」」」
「招待客にも皆さんをご紹介させてください」
「「「「「「「いえっ、私たちは……」」」」」」」
非常識な令嬢の友人だと思われたくなく断ろうとしたのだが、ベネデッタの行動は素早かった。
「皆さぁん、私の親友たちをご紹介しますね。私が聖女候補で共に学んだ……」
私たち彼女の虚栄心を満たすのに利用された。
親友と紹介された私たちのほとんどが『高位貴族』、下位貴族だったとしても全員が『聖女候補』だ。
社交界で自身が『聖女候補』と自慢していた彼女にとっては、私たちは承認欲求を満たすのにうってつけだったよう。
今回で彼女とは距離を取ろう、縁を切ろうと考えてしまった。
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聖女候補の私たちは、見世物扱い。
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