レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第一話「魔王」

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 かつて大陸を支配していた魔王、ヴォルフガング・イェーガーの息子としてこの世に生を受けた俺は、生まれつき運が無かった。どうして魔王の息子として生まれてしまったのだろうか。魔王の息子として生まれた俺は、人間の友達を作る事も出来ず、朽ち果てた魔王城で父と二人で暮らしている。

 次期魔王となるために、早朝から剣術の稽古をする。父と木剣を交え、剣術の稽古を受けた後、筋肉を増やすために体を鍛える。夕方には稽古を終え、二人で葡萄酒を飲みながら父の武勇伝を聞く。

 父が大陸を支配した時の話を何度も何度も聞かされるのだ。苦痛で仕方がない。強力な魔法を操り、召喚獣を従えて大陸を支配したが、大陸の支配から一週間後、父は勇者に追い詰められて大陸から姿を消した。勇者に敵わないと悟った父は、小さな魔王城を建て、人間から略奪したお金で細々と暮らしている。

「ラインハルト! お前は今日、十七歳の誕生日を迎えたな。俺がハース大陸を支配したのも十七歳の時だった。お前が次期魔王として、俺の代わりに大陸を支配するのだ!」
「はい。お父様! 必ずやハース大陸を支配してみせます!」
「良い返事だ。息子よ、魔王の加護を授けよう。イェーガー家に伝わる魔王の加護を使い、いつの日か必ずハース大陸を支配するのだぞ!」
「お任せ下さい! お父様……」

 父が俺の頭に手を置くと、父の手から暖かい魔力が流れ始めた。イェーガー家に伝わる魔王の加護を受ける日がついに来たのだ。俺はこの日をずっと心待ちにしていた。魔王の加護は討伐した魔物を魔石化する力を持つ。初代魔王が地獄の様な訓練を積んで習得した力だ。

「ラインハルト……さらばだ!」

 父は柔和な笑みを浮かべると、強い光を辺りに放ち、姿を消した。先代の魔王、ヴォルフガング・イェーガー。強い男だった。俺は今日、新魔王となった。

「大陸を支配するとか面倒だから、人間の町で静かに暮らそう」

 魔王の息子として生まれたから、大陸を支配しなければならないという決まりは無い。どうして人間と争い、人間に憎まれて生きなければならないのだ。イェーガー家は魔王の家系だが、俺は魔王として生きるつもりはない。俺は冒険者になるんだ。

「さて、出発の支度をしようかな」

 父の遺品でもある、『魔王の魔装』を身に付ける。魔装は黒い金属から出来ており、顔以外の全身を覆うタイプの鎧だ。まるで生き物の様にサイズが変わり、俺の体にフィットする。着心地は最高だ。

 それから父が愛用していた、『魔剣・ヴォルフガング』を持つ。形状はロングソードだが、羽根の様に軽く、手に馴染む。最後に、父が残してくれた指環を嵌める。『イェーガーの指環』だ。指環に意識を集中させると、自分自身のステータスを表示出来る代物だ。

 ついに魔王城を出る時が来た。俺は生まれてからずっとこの城の中で生きてきた。俺は今日、ついに自由を手に入れたのだ。俺は魔王の加護を使い、冒険者として成り上がり、裕福な生活を送るのだ。

 朽ち果てた木造の魔王城を出ると、深い森が広がっていた。魔王城はハース大陸の南部に位置しており、二十日ほど北に進むと、大陸で最も栄えているアイゼンシュタイン王国が在ると父から聞いた事がある。まずは王国に行き、冒険者としての登録をしよう。

 やっと自由に生きられるんだ。俺は生まれてから十七年間、父以外の人間と会話をした事も無い。母は出産とともに命を落とし、それから俺は父と二人で生きてきた。俺はこれから自由を満喫し、魔物討伐を生業とする冒険者になる。

 早速魔王の加護を使ってみよう。魔剣を抜いて薄暗い森の中を進む。三十分程歩くと、俺は一体の魔物を見つけた。ガーゴイルだ。魔物の中でも、魔獣クラスに位置する低級な魔物。力は弱いが知能は高く、弱い炎を吐いて戦う。父から教わった魔物の知識がこんな時に役に立つとは思わなかったな……。

 体の小さなガーゴイルは、何やら料理をしているのか、青く光る気味の悪い肉を鍋で煮込んでいる。これは良い奇襲のチャンスだ。魔剣を両手で握り締め、気配を消してガーゴイルの背後に忍び寄る。幼い頃から魔王である父と剣を交えてきたんだ、魔物と戦うのは初めてだが、俺が負ける事はないだろう。

 魔剣を振り上げてガーゴイルに切り掛かると、ガーゴイルは瞬時にナイフを抜き、俺の剣を受けた。まさか俺の剣を受け止めるとは……。ガーゴイルは大急ぎで飛び上がると、空に炎を吹いて仲間を呼んだ。

 上空には瞬く間にガーゴイルが集まり、ガーゴイルの群れが一斉に襲い掛かってきた。魔剣で垂直斬りを放ち、ガーゴイルの体を真っ二つに切る。ガーゴイルは死の瞬間、弱い光を放つと、地面には小さな魔石が落ちた。これが魔王の加護である魔石化だ。

 魔石の中には小さなガーゴイルが閉じ込められている。『召喚石』に違いないだろう。俺は瞬時に召喚石を握り締め、魔力を込めた。魔石は弱い光を辺りに放つと、大理石の様な肌のガーゴイルが生まれた。

 ガーゴイルは地面に落ちているナイフを拾い上げ、直ぐに戦いに加勢してくれた。やはり魔王の加護は偉大だ。魔王の加護によって、討伐した魔物を魔石化する事が出来る。魔石の種類は三種類。魔物の魔法を秘める『魔法石』、魔物を召喚するための『召喚石』、ステータスを上昇させる『強化石』。

 次々とガーゴイルを狩ると、地面には無数の魔石が落ちた。ステータスを上昇させる強化石を拾い、魔石を握り締めると、魔石は弱い光を放って消滅し、光が俺の体に流れた。強化石の効果により、自分自身の身体能力が強化されたのだろう。体には力がみなぎっている。

 ガーゴイルの群れは俺達には敵わないと悟ったのか、敵は一斉に逃げ出した。二十体程のガーゴイルを倒す事が出来た。初戦闘にしては上出来だろう。日頃から父と剣の稽古をしていたからか、敵を前にしても緊張する事も無く、余裕を持ってガーゴイルを狩る事が出来た。父は一週間しか大陸を支配出来なかったが、それでも一時的に大陸を支配出来る程の強さの持ち主だった。父が教えてくれた剣技を活かし、俺は冒険者になる。

 大理石の様なガーゴイルは、青く輝く目で俺を見上げている。初めて友達が出来たみたいだ。体は小さいが知能は高いのか、俺の魔装を興味深そうに触っている。頭部からは二本の白い角が生えており、手足はまるで人間の様だ。形の整った翼が背中から生えており、短い尻尾が可愛らしい。

「俺はラインハルト・イェーガーだ。よろしくな」
「よろしく……」

 まさか、言葉が理解出来るとは思わなかったな……。会話が理解出来る仲間が居れば冒険の旅も楽しくなるだろう。俺はガーゴイルと固い握手を交わすと、戦利品を回収した。強化石が十五個、召喚石が二個、魔法石が二個だ。魔石化する確率は強化石が最も高く、召喚石と魔法石は魔石化の確率が低いみたいだ。

 魔法石の中では、小さな炎が楽しげに揺れている。火属性魔法の中でも最も基本的な魔法、『ファイア』の魔法が宿っているみたいだ。俺は父から剣術を教わってきたが、魔法に関しては一切教わった事が無い。父が魔法を学ぶ必要はないと言ったからだ。魔王の加護を受け、魔法石を大量に入手出来れば、魔法は簡単に習得出来ると言っていた。

 魔法石を使用するには、左手に魔法石を持ち、右手から魔法を使用すれば良いのだとか。俺は早速左手に魔法石を持つと、魔法石から心地良い魔力が流れてきた。これが火属性の魔力だろうか。右手を突き出して魔法を唱える。

『ファイア!』

 瞬間、右手からは小さな炎が出現した。威力は実用レベルでは無いが、一応魔法は成功した。魔法を使うってこんなに楽しいんだな。それから俺は何度も小さな炎を作り、ファイアの魔法の感覚を体に覚えさせた。

 魔法石は実際の魔法よりも効果が低いが、一時的に魔法を使用出来る様になる魔石である。魔術師は魔法石を用いて魔法を学ぶと父から聞いた事があるが、魔法の練習とはこれ程までに面白いのか。一時間ほどファイアの魔法石を使って魔法を練習すると、俺は魔法石を使わずにファイアを使える様になった。今日から毎日魔法を練習する事にしよう。魔法石を集め、様々な魔法を習得し、冒険者として豊かな生活を送れるように努力しよう。

「ラインハルト。兎を狩ってきたよ!」
「助かるよ、ガーゴイル。早速昼食にしようか」

 ガーゴイルは俺が魔法の練習をしている間に兎を仕留めて来てくれたのだ。頼りになるガーゴイルだな。俺はガーゴイルから兎を受け取り、血を抜いて解体した後、ファイアの魔法で肉を焼いた。味付けも無い料理だが、腹を満たせればそれで良い。

 静かな森でガーゴイルと共に食事を食べる。これが冒険者として生活なんだ。こうして俺とガーゴイルの生活が始まった……。


『LV.25 魔王 ラインハルト・イェーガー』
 力…250 魔力…120 敏捷…190 耐久…220
 装備:魔王の魔装 魔剣・ヴォルフガング
 装飾品:イェーガーの指環
 魔法:魔物召喚 ファイア
 加護:魔王の加護(討伐した魔物を魔石に変える)
 召喚獣:ガーゴイル

『LV.6 ガーゴイル』
 力…40 魔力…50 敏捷…60 耐久…40
 装備:ナイフ
 装飾品:なし
 魔法:ファイア
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