レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第二話「魔王の加護」

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 ガーゴイルとの戦闘で手に入れた強化石を使い、ステータスを上昇させる事にした。ガーゴイルが落とした強化石は敏捷性を上昇させる効果があるらしい。十五個の強化石を全て使用してからステータスを確認する。

『LV.25 魔王 ラインハルト・イェーガー』
 力…250 魔力…120 敏捷…205 耐久…220

 敏捷が十五も上昇している。魔物を狩って強化石を集めれば更に強くなれるという訳だろう。今気がついたが、ステータス欄には『魔王』と表示されている。冒険者ギルドでは登録時にステータスを計測すると父から聞いた事があるが、自分の職業が魔王だと判明すれば、ギルドで登録は出来ないのではないだろうか。

 ギルドで登録出来ないだけならまだしも、町中で俺自身が魔王だとバレるのは危険すぎる。父は四十年前に一度大陸を支配している訳だから、魔王を憎む者も居るだろう。自分自身が冒険者登録をせずに、冒険者としてクエストを受ける手段を模索した方が良いだろうか。

「ラインハルト。僕に名前を付けてよ」
「名前か……すっかり忘れていたよ。それじゃ、ダリウスという名前はどうだろうか? 初代魔王の名前だよ」
「初代魔王? ダリウス……気に入った! 僕は今日からダリウスだ」
「ああ。よろしく、ダリウス」

 ダリウスは俺の肩の上に飛び乗ると、嬉しそうに俺の頭を抱いた。人生で初めての友人が出来た。まさか魔物と友達になるとは思わなかったが、今日は幸せな日だ。

 空になった強化石や魔法石を鞄に仕舞い、兎の肉をたっぷりと食べてから旅を再開する。空の魔石も使い道があるらしく、左手に魔石を持ち、右手を召喚獣に触れると、召喚獣を魔石の中に戻す事が出来るのだとか。父から何度も魔石に関する説明を受けたからか、魔石の使用に関して戸惑う事もない。これも魔王になるための教育を受けてきたお陰だ。

「ダリウス。魔物を狩りながらアイゼンシュタイン王国を目指そうか」
「王国に行ったらどうするの?」
「王国で冒険者として生きるつもりだよ。仲間を見つけて、冒険者登録をして貰おうか。もしくは、既に冒険者として活動している人を手伝い、報酬を頂くのも良いかもしれないね」
「僕は冒険者になるんだね! ラインハルトと一緒に!」
「ああ、そうだよ。俺達は冒険者として生きていくんだ」

 ダリウスは嬉しそうに飛び上がると、暫く上空を旋回してから俺の頭の上に着地した。体重は十キロ程だろうか? 流石に頭に乗られると重いな。俺はダリウスの小さな体を持ち上げて肩に乗せると、ダリウスは楽しそうに俺の頭を抱いた。

 魔物がこんなに可愛い生き物だとは思わなかった。召喚獣を集めてパーティーを作るのも良いかもしれない。父の説明によると、強化石は魔王本人と魔王の召喚獣、従魔に対して効果があるのだとか。強化石を集めて魔物を強化するのも良さそうだ。魔物を増やせば狩りも効率化し、稼げるアイテムや魔石の数も増えるだろう。

 春の涼しい森をダリウスと共に進む。やはり旅に出て正解だった。俺は大陸の支配などをせずに、人間と共存する未来を歩むつもりだ。十七年間、狭い魔王城の中で幽閉されながら生きてきた。やっと自由に生きられるんだ。ついに俺の新たな人生が始まる。

「ラインハルト、この先から敵の動きを感じるよ」
「本当か! ダリウス?」
「うん。ちょっと偵察に行ってくるよ」
「くれぐれも一人で敵と交戦しない様に」
「分かってるって」

 ダリウスは楽しそうに微笑むと、翼を開いて飛び上がった。ガーゴイルは人間よりも敵の気配に敏感なのだろう。全く頼りになる仲間だ。魔剣を構え、森に身を潜めて待つと、ダリウスが戻ってきた。

「この先で人間の親子がゴブリンに襲われていたよ。ゴブリンの数は七体。父親は娘を守りながら戦っていたけど、腕に怪我をしていた。人間が負けるのは時間の問題だと思う……」
「なんだって? 現場に案内してくれ!」
「わかった」

 ダリウスを追いかけながら深い森を走る。魔装の性能だろうか、移動速度が大幅に上昇している。それに、ガーゴイルの強化石で敏捷性が上がったからだろうか、体が非常に軽い。この調子で敏捷性を上げ続ければ、更に高速で移動出来る様になるだろう。

 暫く森を進むと、革の鎧に身を包んだ男性がゴブリンと戦っていた。右腕からは血を流し、左手でショートソードを構えている。敵はゴブリンが六体。幼い娘は涙を浮かべ、父親の背後に隠れている。人間を襲う魔物は許さない……。

「今助けます!」

 魔剣を構えてゴブリンの群れに飛び込んだ。背の低い緑色の皮膚をした魔物。何度も書物で姿を見た事がある。地属性の魔法を使い、集団で人間を襲う悪質な魔物。

 ゴブリンの群れが一斉に襲い掛かってきた。しかし、敵の動きがあまりにも遅い。毎日魔王から剣の指導を受けてきた俺の敵ではない。ゴブリンのダガーを魔剣で受け止めると、左手をゴブリンに向けて魔法を詠唱する。

『ファイア!』

 左手から大きな炎を作り上げ、ゴブリンに対して飛ばす。炎がゴブリンの体を燃やすと、魔剣を強く握り締めて水平斬りを放った。魔剣がゴブリンの命を奪うと、ゴブリンは弱い光を放ち、小さな魔石として生まれ変わった。やはり魔王の加護は偉大だ。これは召喚石だろうか、魔石の中でゴブリンが静かに眠っている。仲間を増やす良い機会かもしれないな。

 ダリウスが地面に落ちた召喚石を拾うと、俺の肩の上に飛び乗り、ゴブリンに向かって炎を吐いた。これで時間が稼げた。ダリウスから召喚石を受け取り、急いで魔法を唱える。

『ゴブリン・召喚!』

 魔法を唱えた瞬間、魔石は辺りに弱い光を放つと、光の中からゴブリンが現れた。ゴブリンは状況を瞬時に把握し、男性を守る様に立ちはだかると、地属性の魔力を放出して土の壁を作り上げた。アースウォールの魔法だろうか。

 ゴブリンが親子を守っている間に、俺とダリウスで敵を仕留める。次々と襲い掛かってくるゴブリンを魔剣でなぎ払い、ファイアの魔法で敵を焼く。戦いは直ぐに決着が付いた。地面には五つの魔石が転がっている。どうやら強化石の様だ。

 俺はダリウスに戦利品の回収を頼み、男性の怪我を確認する事にした。男性は四十代程だろうか、腕には浅い切り傷が出来ている。止血をしておけば直ぐに治るだろう。十歳程の金髪の娘は、目に涙を浮かべて父を見つめている。初めて見る女性だ。俺は生まれてから十七年間、父以外の人間を見た事が無かった。まさか初めて出会った他人を救う事になるとは……。日頃から鍛えておいて良かった。

「助けてくれてありがとう……君が居なかったら俺達は今頃殺されていただろう」
「間に合って良かったですよ」
「俺の名前はアーベル。この子はカミラ」
「俺はラインハルト。それから、この子はガーゴイルのダリウスです」
「ガーゴイルとゴブリンを操る者……冒険者かい? 若いのに随分戦い慣れているんだね」
「はい。冒険者を目指しているので」
「ラインハルト……本当にありがとう。そうだ、何かお礼をさせてくれ! 俺の家で夕食を食べて行かないか?」
「そうですね、それではお言葉に甘えさせて頂きます!」

 アーベルさんは馬車でこの森に来ていたのか、俺達はアーベルさんの馬車に乗ると、ゆっくりとアーベルさんの家を目指して進み始めた。馬車に乗るのも人生で初めてだ。どうやらアーベルさんはこの近くに住んでいるらしく、二時間ほど馬車で移動すると、俺達はアイグナーという農村に到着した。

 村は木の柵で囲まれており、大きな見張り台が村を守るように建っている。アーベルさんが村に戻ると、彼の妻だろうか、四十代程の美しい女性が駆け寄ってきた。アーベルさんは妻と抱擁を交わすと、何度も妻の頬に接吻をした。これが愛情表現なのか。父と二人で暮らしていた俺には、接吻や抱擁などとは無縁だった。

「アマンダ。彼は俺の命の恩人のラインハルトだ」
「どうも。ラインハルトです」

 アマンダさんは柔和な笑みを浮かべると、無言で俺を抱きしめた。他人と抱擁をした事がない俺は、こういう時にどうして良いか分からない。相手の体を抱きしめるべきなのだろうか? 思い切ってアマンダさんを抱きしめると、彼女は柔和な笑みを浮かべ、俺の頭を撫でてくれた。何とも言えない幸せを感じる……。アーベルさんとカミラを救って良かった。やはり俺は魔王になるべき人間ではない。他人を守るために自分の力を使って生きよう。

「ラインハルト。本当にありがとう。あなたは私の夫と娘を救ってくれた……」
「俺の力が役に立ったなら光栄です。アマンダさん」
「本当にいい子ね。さぁ家に入って。すぐに夕食の支度をするわね」

 俺はゴブリンとダリウスを連れてアーベルさんの家に入った。魔王城以外の家に入るのも初めてだ。家は小さいが、とても雰囲気が良く、見た事も無い家具や本で溢れていた。魔王城は殺風景で、父が集めた本や武器以外には飾りも無かった。

 ゴブリンもダリウスも嬉しそうに室内を見渡している。俺もいつか自分の家を持ちたいな。冒険者になってお金を稼ぎ、召喚獣達と共に暮らせる家を建てようか。魔王城の様な禍々しい感じの家ではなく、こういう小さな家で良い。

 カミラが目を輝かせて俺を見つめている。幼い女の子を見るのも初めてだ。何だか緊張して相手の目を見る事も出来ない。

「ラインハルトは本当に強いだね! お父さんを助けてくれてありがとう!」
「俺はもっと強くなりたいんだよ。力があれば他人を守れるからね」
「今でも十分強いと思うよ! ゴブリンの群れを簡単に倒しちゃうんだから」

 カミラは微笑みながら俺を抱きしめてくれた。俺はカミラの小さな頭を撫でると、彼女はダリウスとゴブリンにも丁寧にお礼を言った。ゴブリンはダリウスと同じくらい知能が高いのか、恥ずかしそうに俺の背後に隠れた。

「そうだ、カミラ。ゴブリンに名前を付けてくれるかな?」
「私が付けてもいいの?」
「ああ。勿論だよ」
「それじゃあ……ロビン! 古い時代の賢者様の名前だよ」
「ロビンか。いい名前だね。ゴブリン、君は今日からロビンだよ」
「ロビン……」
「ああ。宜しく頼むよ」
「よろしく……ラインハルト、ダリウス」

 俺は小さなロビンを抱き上げると、彼は無邪気に微笑んだ。素敵な仲間が増えて今日は最高の一日だ。しかし、ゴブリンの様に人間と敵対する種族の魔物を召喚したのは間違いだったかな? これから俺達は冒険者として、人間と共に生きていくんだ。ロビンが害のない召喚獣だと分かる様な格好をさせなければ、他の町に入った時に人間から襲われてしまうだろう。

「ラインハルト。料理が出来たわよ」
「はい、アマンダさん。今行きます!」

 まずは食事にしよう。考えなければならない事は多いが、今は新たな出会いに感謝し、豪華な食事を堪能しよう。俺はダリウスを膝の上に乗せ、ロビンを隣の席に座らせた。葡萄酒が入ったゴブレットを持つと、アーベルさんが乾杯の音頭を取り、楽しい夕食が始まった……。
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