レッドストーン - 魔王から頂いた加護が最強過ぎるので、冒険者になって無双してもいいだろうか -

花京院 光

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第一章「王国編」

第三話「旅支度」

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 テーブルには豪華な肉料理が並んでおり、葡萄酒を飲みながら料理を頂く。アーベルさんとアマンダさんの馴れ初めの話や、村の話などをしていると、アイゼンシュタイン王国の話題に変わった。

「ラインハルトはアイゼンシュタイン王国で冒険者になるんだったね?」
「はい! ハース大陸で最も冒険者が多いと聞いた事があるので」
「そうか。アイゼンシュタイン王国は今、王位継承のために三人の王女様が奮闘しているんだよ」
「王位継承ですか?」
「ああ。国王陛下が次期国王を指名するらしい。王妃様が亡くなってから一年が経った先月の事。国王陛下は三人の王女様に試練を与えたんだ」
「試練とはどの様な内容なのですか?」
「国民に最も貢献出来た者を次期国王にするという内容らしい。三人の王女様は城を出て、冒険者になっているという噂も聞いた事がある」
「王女様も大変なんですね。それにしても、王族として生まれて冒険者になるなんて、大胆な王女様も居るんですね」
「うむ。まぁ詳しい事は分からないが、指名制は面白い試みだと思うよ。真の実力というか、最も国民を愛せる王女を次期国王に指名する。国王陛下らしい発想だと思う」

 民に貢献するために生きる王女達と、魔王として民を支配するために教育を受けてきた俺とでは、生き方が正反対だな。王位継承か。俺には何の関係もない話だ。それから俺達はご馳走を頂くと、ダリウスとロビンを連れて風呂に入る事にした。冒険の旅に出て魔物と共に風呂に入る事になるとは……。人生は何が起こるか分からないから面白い。

 生まれてから今日までの十七年間で、これほど興奮した一日は無かった。父から加護を頂き、魔王の装備を身に着けて魔王城を出た。道中でダリウスとロビンを召喚し、アーベルさん達とも出会えた。今日は最高の一日だ。

 湯に浸かりながら今後の計画を練ろう。アイゼンシュタイン王国まではあと十九日も歩けば着くだろう。時間ならあるんだ、ゆっくりと移動しながら魔石を集め、仲間を増やしながら旅をしよう。

 俺達は暫く語り合いながら湯に浸かり、俺はダリウスとロビンの体を洗って浴室を出た。何だか幼い弟が出来たみたいで幸せだ。

「ラインハルト。今日は泊まっていってくれ。布団を敷いておいたよ」
「良いんですか?」
「ああ。勿論良いとも! 俺とカミラの命の恩人なのだからな……これくらいの礼はさせてくれ」
「ありがとうございます! それではお言葉に甘えて、今日は泊まらせて頂きますね」
「ああ。それじゃおやすみ。ラインハルト」
「おやすみなさい。アーベルさん」

 俺はロビンとダリウスを連れて寝室に入った。寝室には小さな魔石が浮いており、魔石の中では弱い炎が室内を照らしていた。こういう魔石の使い方もあるんだな。部屋には三人分の布団が敷かれているが、ロビンとダリウスは俺と一緒に寝ると言って聞かなかった。

「ラインハルト! 布団って気持ちいいね!」
「ダリウス、はしゃがないで早めに寝るんだよ」
「ラインハルト。明日もここに居たらだめかな?」
「これ以上お世話になる訳にはいかないよ。ロビン、俺達は冒険者になるんだ。自分達で生活費を稼いで生きる。これが冒険者としての基本だと思うんだ」
「そうだよね。そろそろ寝ようか」
「ああ。二人共おやすみ」

 俺は小さなロビンとダリウスを抱きしめながら眠りに就いた……。

 早朝に目が覚めると、ダリウスは既に起きていたのか、窓を開けて村を見つめていた。美しい村だ。小さな木造の家が点在しており、村人達は農業を営んでいるからか、早朝から仕事をしている。誰かが自分と同じ土地に居るという事に驚きを感じている。当たり前の事なのだろうが、俺は父と二人で暮らしてきたから、父以外の人間を見ているだけでも新鮮だ。この感動を大切にしながら生きてゆこう……。

「おはよう、ダリウス」
「おはよう。ラインハルト」
「今日はアイゼンシュタインを目指して出発しようか」
「うん! 旅が楽しみだよ」
「ああ。俺も同じだよ。人生で初めての旅だからね。一人だったら心細かったけど、ダリウスとロビンが居てくれるから心強いよ」
「僕はラインハルトの召喚獣だからね。僕がラインハルトを守るんだ!」
「これからも頼りにしているよ。ダリウス」

 俺はダリウスのすべすべした頭を撫でると、ダリウスは嬉しそうに目を瞑った。暫く外を眺めていると、ロビンが目を擦りながら起き上がった。

「二人共、もう起きていたの?」
「ああ、おはよう。ロビン」
「おはよう、ラインハルト、ダリウス」
「僕達は今日からアイゼンシュタインを目指して旅に出るんだよ! 早く支度をしようよ! ロビン!」

 ダリウスは嬉しそうにロビンの手を握った。それから俺達は部屋の掃除をし、布団を綺麗に畳んでから部屋を後にした。居間に入ると、アーベルさんが紅茶を飲んでいた。

「おはよう。ラインハルト。よく眠れたかな?」
「はい! お陰様で、ゆっくり眠れました」
「それは良かった。ラインハルト、ここを自分の家だと思って、好きなだけ居ていいからね」
「ありがとうございます、アーベルさん。ですが、俺達は今日から王国を目指して旅に出るんです」
「そうだよな。何だか新しい息子が出来た様で嬉しかったんだが……それじゃ、ラインハルト。俺に旅の支度を手伝わせてくれないか? 実は俺も昔、冒険者をしていたんだ」
「本当ですか?」
「うむ。魔物と戦うのが苦手だったし、力も弱かったから、一年で引退したんだけどな。引退してから今日まで、村で農作物の栽培をしている。戦うよりも自然の中で暮らす方が俺には向いているみたいなんだ」

 アーベルさんの提案により、不必要なアイテムを売り払い、旅の資金を作ってから装備を整える事にした。俺は魔装と魔剣があれば十分だが、ロビンとダリウスには新たな装備が必要だ。

「召喚獣には防具を装備させれば、野生の魔物と勘違いされずに済むだろう。まずはアイテムを売りに行こうか」
「はい! よろしくお願いします」

 俺達はアーベルさんに連れられて村の市場に向かう事にした。今は朝の八時頃だろうか、市場では採れたての野菜や果物が売られており、冒険者向けの武具を扱う店もあった。アーベルさんの従兄弟が経営している武具屋に入ると、室内には様々な種類の武具が並んでいた。魔王城にも父が大陸を支配した際に、人間から奪った武器や防具があったが、この店の方が遥かに品揃えが豊富だ。

 農村なのに武具が売られているのは、農民達も日常的に魔物と戦うからなのだとか。村の若い者達が村の周囲に巣食う魔物を討伐する決まりになっているらしい。

「エレン。久しぶりだな。景気はどうだ?」
「アーベルか。ぼちぼちだな。この村にも冒険者が滞在してくれたら、もっと武器や防具が売れるんだが……」
「冒険者はこんな田舎の村には来ないよ。だが、今日は冒険者を目指す三人の英雄を連れて来た。彼等は昨日、俺とカミラを魔物の襲撃から救ってくれたんだ」
「ゴブリンとガーゴイルを従える冒険者志望の少年か。アーベルを助けてくれてありがとう! 俺はエレン・フランツだ」
「どうも。ラインハルトです」

 念のため、イェーガーという姓は名乗らないでおこう。歴代の魔王達がイェーガーの姓を名乗り、大陸を支配してきたのだからな。

「魔石と武器の買い取りをお願いしたのですが」
「うむ。品物を見せてご覧」

 俺はファイアの魔法石を二つ、ガーゴイルの召喚石を二つ取り出してカウンターに置いた。それからゴブリンが使用していたダガーと、ガーゴイルのナイフを置く。空の魔石は特に価値も無さそうだから、売らずに取っておく事にした。それから、昨日入手した強化石は、後で全て使用するつもりだ。

「ガーゴイルの召喚石は百ゴールド。ファイアの魔法石は二千ゴールドで買い取ろう。召喚石は希少価値のある魔物以外は基本的に殆ど価値が無いんだ。しかし、このファイアの魔法石は良い物だな。強い魔法能力を持つ魔物が死の際に魔法石を落とす事があるが、ドロップ率は極めて低い」

 魔王の加護を持たない者が魔物を倒した際にも、魔物が魔石を落とす事がある。しかし、魔石を落とす確率は非常に低い。魔法石や召喚石は希少価値があると、以前父から教わった事がある。魔王の加護があれば、魔物を魔石化する事が出来る。予想以上に効率良くお金を稼げるかもしれないな。

 ダガーとナイフは殆ど価値が無い物だったらしく、全部で百ゴールドで買い取って貰った。一日の狩りで、四千三百ゴールドものお金を稼ぐ事が出来た。お金を使って買い物をした事がないから、お金の価値が分からないが、これだけあれば旅支度をするのに十分なのだとか。

「エレン。ダリウスとロビンのための装備はあるかな?」
「ガーゴイルとゴブリン専用の装備ではないが、体の小さい召喚獣のための装備ならあるぞ。ちょっと待っていてくれ」

 暫くすると、エレンさんがロビンとダリウスのための装備を持ってきてくれた。ダリウスの装備は革製のメイル。背中に穴を開けて翼を通し、革のガントレットとグリーヴを身に付けた。ロビンの装備は低身長の召喚獣のために作られた金属製の全身装備だった。二人とも防具を身に付けて喜んでいる。

 それからエレンさんは、ダリウスには槍を、ロビンには斧と盾を用意してくれた。空中を飛べるガーゴイルのダリウスは、上空から槍で攻撃し、生まれつき力が強いロビンは斧と盾で戦う事になった。

 代金は合計で三千ゴールドだった。体が小さな召喚獣のための武具は、なかなか売れる事がないからといって、大幅に値下げをしてくれたのだ。俺達はエレンさんにお礼を言うと、旅のための食料を買うために市場に戻る事にした……。
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