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第二章「魔石編」
第四十六話「騎士の挑戦」
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ファルケンハイン王国方面に進むにつれ、まだ見ぬレッドドラゴンとの戦いに心が高まる。ローゼマリー第二王女よりも六週間遅くダンジョンの攻略に挑む俺達が、果たして先発のパーティーに追い付けるのかも分からない。いや、追いつくだけでは駄目なのだ。圧倒的な速度で追い抜き、そのままの勢いでレッドドラゴンを討伐し、聖剣を手に入れなければならない。
クリステルの話によると、ローゼマリー第二王女が指揮を執るパーティーは、レベル80の勇者とレベル75の大魔術師が加入しているらしい。勇者、ルーカス・ゲーレンはファルケンハインで最も魔物の討伐数の多い冒険者で、ファルケンハイン王国から魔物討伐の功績認められ、五年前に勇者の称号を得たのだとか。
それからレベル75の大魔術師、ベリエス・ブローベルは、ファルケンハインで最も高レベルの魔術師としても有名で、攻撃魔法に精通しており、ファルケンハイン最大の魔術師ギルドのマスターを務める人物なのだとか。
クリステルが優先的に確保したかった勇者と大魔術師が妹のローゼマリー第二王女のパーティーに加入し、クリステルは王国内で二人よりも有能な冒険者を見つける事が出来ず、隣国のアイゼンシュタインに目を付けたらしい。
勇者と大魔術師、その他大勢の高レベルの冒険者から構成される、いばわファルケンハイン王国最強のパーティーに、俺達数名で立ち向かわなければならないのだ。だが、レベル的には俺の方が遥かに彼等を上回っている。勇者よりもレベルが30も高いのだから、個人での戦闘において引けを取る事はないだろう……。
レッドドラゴン討伐の機会を与えてくれるクリステルのためにも、何が何でもクリステルを勝たせてみせる。彼女は俺の力を信じて、六週間の貴重な時間を捨てて俺の元に来てくれたのだ。ローゼマリー第二王女のパーティーの方が人数も多く、戦闘力も遥かに高いだろうが、この戦いは決して負けられない……。
アイゼンシュタインを出発して三週間が経過した時、フローラはついにサンダーボルトを習得した。まだ自分の技術としては定着していない様だが、大地を揺るがす程の爆発的な雷を操れる様になったのだ。やはり幻魔獣の固有魔法だから、サンダーボルトの破壊力は圧倒的だ。巨大な雷撃を天から落とし、全てを打ち砕く強力な魔法は、まるで師匠のメテオに近い強さを感じる。
フローラがサンダーボルトを習得した日の昼頃、俺達はついにファルケンハイン王国に到着した。森の中で新年を迎え、一月五日の今日、俺とフローラは大使としてファルケンハイン王国に入国したのだ。
背の高い石の城壁に囲まれた都市は、アイゼンシュタインほどの活気は無いく、背の低い木造の住宅や店が立ち並ぶ大通りを馬車で町を進むと、市民達がクリステルに手を振った。クリステルの帰還を喜ぶ市民も多い様だが、国民の中にはローゼマリー第二王女を支持する者が多いのか、どうも歓迎されている様子はない。
既にクリステルが他国の冒険者にダンジョン攻略の依頼した事が国中に知れ渡っているのだろう。俺やフローラを怪訝な表情で見つめる者も多い。自国の冒険者にダンジョン攻略を依頼せずに、他国にまで赴き、実力も分からない冒険者を連れて戻ってきたのだ。市民は俺達を歓迎する気になれないのだろう。
これは俺の予想だが、ローゼマリー第二王女のダンジョン攻略が順調だから、国民は今更クリステル第一王女を応援する必要も無いと考えているのではないだろうか。歓迎の雰囲気はないが、それでも巨体のフェンリルを見て歓喜の声を上げる人も多い。
こういう時は幻魔獣のヴォルフが非常に目立つ。国民は既に王位継承争いをローゼマリー第二王女が勝利する確信しているのだろうが、俺とフローラが来たからにはこの状況を変えてみせる。
それから俺達はファルケンハイン城に入城し、国王陛下と謁見をして、ダンジョン攻略の開始を伝えた。白髪の六十代程の国王は、俺とフローラの入国を歓迎してくれたが、今から第二王女のパーティーを追い抜かす事は不可能だと言った。
俺は彼の心無い言葉に苛立ちを感じながらも、『私がクリステルに勝利をもたらします』と宣言した。すると、陛下は柔和な笑みを浮かべて俺の肩に手を置き、謁見室を出た。
「クリステル。ますますやる気が出てきたよ。何が何でも、俺がクリステルを次期国王にしてみせる。すぐにでもダンジョンの攻略に挑もう!」
「本当に頼もしいわ。ラインハルト、フローラ。今日からダンジョンの攻略を始めましょう!」
「ええ。私も早くレッドストーンを手に入れたいからね」
俺達三人は城を出ると、古代のダンジョンの入り口がある中央区に入った。中央区にはローゼマリー第二王女を応援する旗がいくつも掲げられている。既に国民はローゼマリー第二王女の勝利を確信しているのだろう。
中央区はアイゼンシュタインの冒険者区の様な雰囲気で、数多くの冒険者ギルドや魔術師ギルドが建ち並んでいる。背の高い木造の建物が多く、冒険者向けの武具を扱う店や、ポーションの店等が点在している。
しばらく中央区を進むと、俺達はついにダンジョンの入口に到着した。地下に続く石造りの階段の前では、二人の兵士が立番をしている。全身を頑丈な鎧に身を包んだ兵士がクリステルに気がつくと、兵士達は慌てて跪いた。
「クリステル姫殿下! お戻りをお待ちしておりました!」
「それは嬉しいわ。何だか町はローゼマリーの勝利を確信したような雰囲気だけど。今の状況は?」
「はっ! ローゼマリー様が率いるパーティーは、昨日の段階で十二階層までの攻略を終えています。レッドドラゴンの生息が確認されている二十階層の到達も間もなくかと思います」
「そう。それで、あなた達もローゼマリーが聖剣を手にすると思っているの?」
「それは……私達はクリステル様のお戻りを心待ちにしておりました! アイゼンシュタイン最強の冒険者様と共に勝利を掴んで下さい!」
大金を積んで勇者と大魔術師をパーティーに引き入れ、高レベルの冒険者集団を従えてダンジョンに挑むローゼマリー第二王女よりも、少数精鋭のクリステルを応援したい者も居るだろう。
「クリステル、食料を補充したらすぐにダンジョンに潜ろう。俺達の目的は聖剣を入手する事でもあるが、レッドドラゴンの討伐でもあるんだ。ローゼマリー王女よりも先に二十階層まで降りなければならない」
「そうね。早速準備を始めましょう!」
それから俺達は兵士から保存食を扱う店を教えて貰い、大量の保存食を買い込んだ。ダンジョン攻略の際には、荷物は全て俺が持つ事になっている。地下でどれだけの時間を過ごすのかも分からないのだ、食料は多ければ多い方が良い。大きめの鞄を購入して、乾燥肉や日持ちする堅焼きパン、パスタやチーズ、乾燥野菜、調味料や調理器具。それから大量のマナポーションを持つと、鞄の重量は四十キロを軽く超えた。
毎朝師匠を背負って『レッサーデーモンとの楽しい遠足』を行っていた俺には、四十キロの鞄はとても軽く感じる。しかし、二人の姫を守りながら、ローゼマリー第二王女を追い越すために、ハイペースで魔物を狩り続けなければならないのだ。今回は体力的にかなり厳しい挑戦になりそうだな。
身長が三メートルを超えるタウロスや、巨体のヴォルフは、基本的に広い空間でしか活躍出来ない。二人には召喚石の中で眠って貰い、ダンジョン内の開けた場所に出た時のみ、召喚する事に決めた。
実質三人でダンジョンを攻略するという事だ。その内の一人は盲目のフローラである。食料が詰まった鞄を背負いながら、目の見えないフローラを誘導し、クリステルを守りながらダンジョンに挑む。高レベル冒険者や勇者、大魔術師を追い抜かすためには、体力が尽きる前になるべく深い層まで進みたいところだ。
武器と防具の点検をし、持ち物の最終確認をすると、俺達はついにダンジョン攻略のために、薄暗い階段を降り始めた……。
クリステルの話によると、ローゼマリー第二王女が指揮を執るパーティーは、レベル80の勇者とレベル75の大魔術師が加入しているらしい。勇者、ルーカス・ゲーレンはファルケンハインで最も魔物の討伐数の多い冒険者で、ファルケンハイン王国から魔物討伐の功績認められ、五年前に勇者の称号を得たのだとか。
それからレベル75の大魔術師、ベリエス・ブローベルは、ファルケンハインで最も高レベルの魔術師としても有名で、攻撃魔法に精通しており、ファルケンハイン最大の魔術師ギルドのマスターを務める人物なのだとか。
クリステルが優先的に確保したかった勇者と大魔術師が妹のローゼマリー第二王女のパーティーに加入し、クリステルは王国内で二人よりも有能な冒険者を見つける事が出来ず、隣国のアイゼンシュタインに目を付けたらしい。
勇者と大魔術師、その他大勢の高レベルの冒険者から構成される、いばわファルケンハイン王国最強のパーティーに、俺達数名で立ち向かわなければならないのだ。だが、レベル的には俺の方が遥かに彼等を上回っている。勇者よりもレベルが30も高いのだから、個人での戦闘において引けを取る事はないだろう……。
レッドドラゴン討伐の機会を与えてくれるクリステルのためにも、何が何でもクリステルを勝たせてみせる。彼女は俺の力を信じて、六週間の貴重な時間を捨てて俺の元に来てくれたのだ。ローゼマリー第二王女のパーティーの方が人数も多く、戦闘力も遥かに高いだろうが、この戦いは決して負けられない……。
アイゼンシュタインを出発して三週間が経過した時、フローラはついにサンダーボルトを習得した。まだ自分の技術としては定着していない様だが、大地を揺るがす程の爆発的な雷を操れる様になったのだ。やはり幻魔獣の固有魔法だから、サンダーボルトの破壊力は圧倒的だ。巨大な雷撃を天から落とし、全てを打ち砕く強力な魔法は、まるで師匠のメテオに近い強さを感じる。
フローラがサンダーボルトを習得した日の昼頃、俺達はついにファルケンハイン王国に到着した。森の中で新年を迎え、一月五日の今日、俺とフローラは大使としてファルケンハイン王国に入国したのだ。
背の高い石の城壁に囲まれた都市は、アイゼンシュタインほどの活気は無いく、背の低い木造の住宅や店が立ち並ぶ大通りを馬車で町を進むと、市民達がクリステルに手を振った。クリステルの帰還を喜ぶ市民も多い様だが、国民の中にはローゼマリー第二王女を支持する者が多いのか、どうも歓迎されている様子はない。
既にクリステルが他国の冒険者にダンジョン攻略の依頼した事が国中に知れ渡っているのだろう。俺やフローラを怪訝な表情で見つめる者も多い。自国の冒険者にダンジョン攻略を依頼せずに、他国にまで赴き、実力も分からない冒険者を連れて戻ってきたのだ。市民は俺達を歓迎する気になれないのだろう。
これは俺の予想だが、ローゼマリー第二王女のダンジョン攻略が順調だから、国民は今更クリステル第一王女を応援する必要も無いと考えているのではないだろうか。歓迎の雰囲気はないが、それでも巨体のフェンリルを見て歓喜の声を上げる人も多い。
こういう時は幻魔獣のヴォルフが非常に目立つ。国民は既に王位継承争いをローゼマリー第二王女が勝利する確信しているのだろうが、俺とフローラが来たからにはこの状況を変えてみせる。
それから俺達はファルケンハイン城に入城し、国王陛下と謁見をして、ダンジョン攻略の開始を伝えた。白髪の六十代程の国王は、俺とフローラの入国を歓迎してくれたが、今から第二王女のパーティーを追い抜かす事は不可能だと言った。
俺は彼の心無い言葉に苛立ちを感じながらも、『私がクリステルに勝利をもたらします』と宣言した。すると、陛下は柔和な笑みを浮かべて俺の肩に手を置き、謁見室を出た。
「クリステル。ますますやる気が出てきたよ。何が何でも、俺がクリステルを次期国王にしてみせる。すぐにでもダンジョンの攻略に挑もう!」
「本当に頼もしいわ。ラインハルト、フローラ。今日からダンジョンの攻略を始めましょう!」
「ええ。私も早くレッドストーンを手に入れたいからね」
俺達三人は城を出ると、古代のダンジョンの入り口がある中央区に入った。中央区にはローゼマリー第二王女を応援する旗がいくつも掲げられている。既に国民はローゼマリー第二王女の勝利を確信しているのだろう。
中央区はアイゼンシュタインの冒険者区の様な雰囲気で、数多くの冒険者ギルドや魔術師ギルドが建ち並んでいる。背の高い木造の建物が多く、冒険者向けの武具を扱う店や、ポーションの店等が点在している。
しばらく中央区を進むと、俺達はついにダンジョンの入口に到着した。地下に続く石造りの階段の前では、二人の兵士が立番をしている。全身を頑丈な鎧に身を包んだ兵士がクリステルに気がつくと、兵士達は慌てて跪いた。
「クリステル姫殿下! お戻りをお待ちしておりました!」
「それは嬉しいわ。何だか町はローゼマリーの勝利を確信したような雰囲気だけど。今の状況は?」
「はっ! ローゼマリー様が率いるパーティーは、昨日の段階で十二階層までの攻略を終えています。レッドドラゴンの生息が確認されている二十階層の到達も間もなくかと思います」
「そう。それで、あなた達もローゼマリーが聖剣を手にすると思っているの?」
「それは……私達はクリステル様のお戻りを心待ちにしておりました! アイゼンシュタイン最強の冒険者様と共に勝利を掴んで下さい!」
大金を積んで勇者と大魔術師をパーティーに引き入れ、高レベルの冒険者集団を従えてダンジョンに挑むローゼマリー第二王女よりも、少数精鋭のクリステルを応援したい者も居るだろう。
「クリステル、食料を補充したらすぐにダンジョンに潜ろう。俺達の目的は聖剣を入手する事でもあるが、レッドドラゴンの討伐でもあるんだ。ローゼマリー王女よりも先に二十階層まで降りなければならない」
「そうね。早速準備を始めましょう!」
それから俺達は兵士から保存食を扱う店を教えて貰い、大量の保存食を買い込んだ。ダンジョン攻略の際には、荷物は全て俺が持つ事になっている。地下でどれだけの時間を過ごすのかも分からないのだ、食料は多ければ多い方が良い。大きめの鞄を購入して、乾燥肉や日持ちする堅焼きパン、パスタやチーズ、乾燥野菜、調味料や調理器具。それから大量のマナポーションを持つと、鞄の重量は四十キロを軽く超えた。
毎朝師匠を背負って『レッサーデーモンとの楽しい遠足』を行っていた俺には、四十キロの鞄はとても軽く感じる。しかし、二人の姫を守りながら、ローゼマリー第二王女を追い越すために、ハイペースで魔物を狩り続けなければならないのだ。今回は体力的にかなり厳しい挑戦になりそうだな。
身長が三メートルを超えるタウロスや、巨体のヴォルフは、基本的に広い空間でしか活躍出来ない。二人には召喚石の中で眠って貰い、ダンジョン内の開けた場所に出た時のみ、召喚する事に決めた。
実質三人でダンジョンを攻略するという事だ。その内の一人は盲目のフローラである。食料が詰まった鞄を背負いながら、目の見えないフローラを誘導し、クリステルを守りながらダンジョンに挑む。高レベル冒険者や勇者、大魔術師を追い抜かすためには、体力が尽きる前になるべく深い層まで進みたいところだ。
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